データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第13代第2次桂(明41.7.14〜44.8.30)
[国会回次](帝国)第25回(通常会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1909/1/21
[貴族院演説年月日] 1909/1/21
[全文]

諸君、本大臣は曩に再び重任を辱うすることヽなりまして、今日當議場に於きまして諸君と相見え、政府所見の概要を陳述するの機會を得まするのは、誠に光榮と致すところでございます、諸君、我邦憲法實施以來其運用常に宜きを得まして、特に國家の大事あるに當りましても 天皇陛下の御盛徳に因ることは勿論でございますれども、政府議會は恆に共同して國務の進捗に膺り、國民も亦能く一致いたしまして、維新の皇謨を恢弘することに努めましたるは、實に國家の幸慶と申さねばならぬことヽ存じます、さて今日の時機は大戰役を去ること未だ甚だ遠しとは申されませぬ、從って戰役各般の施設も未だ完成を告げたりとは申すことが出來ぬと存じます、昨秋 聖詔を發せられまして、今日の時機は實に外各國との交誼を厚うし、内國運の發展を要し、國民の努力自彊を要する旨を宣明せられましたるは、誠に恐懼感激に堪へぬ次第でございます、本大臣は此時機に於きまして此重任を辱うすることヽなりましたが、不肖ながら諸君の御協贊に依りまして、黽勉勵精其責務を全うせんことを期しまする次第でございます、今や締盟列國との交際は益々親密を重ね、特に英國との同盟は愈々其確實を加へました、又佛露との協約に加ふるに過般米國政府との間に公文の交換を了するに至りて、兩國政府が執り來りましたるところの態度茲に明瞭となり、誤解の原因は一切其跡を絶つことヽ相成りまして、從って東洋の平和は益々茲に鞏固を加ふるに至りましたることと信じます、諸君、本大臣は就任以來内政の改善に關する方策を怠らずして、中央地方共に其實績を收むることに注意致しまして居ります、又財政に關しましては歳入歳出の均衡に留意致しまして、各種歳出に付きましては計畫變更及出來得る限りの整理節減を行ひますると同時に、國家の進運を扶持するに必要なる事業に付きましては其緩急を計りまして之を遂行するの計畫を定めまして、國防、教育、交通、産業等孰れも漸次適當の充實發達を期することを怠らぬ考でございます、此方針に依りまして編成致しました來年度豫算案は、已に本日議會へ提出いたしました、幸に議會の協贊を得まして財政の基礎爲に鞏固を加へ、民間の經濟亦其調和を得、國運發展に實效を收めますることは、本大臣衷心國家のために期待するところでございます、尚必要なる法律案は順次議會へ提出致します、又豫算其他諸案に付きましては、本大臣又は各大臣に於きまして相當の時機に更に詳細説明致す積りでございます、諸君、幸に此趣旨を諒せられまして、公平なる審議協贊を與へられんことを切に希望致しまする次第でございます