[内閣名] 第13代第2次桂(明41.7.14〜44.8.30)
[国会回次](帝国)第26回(通常会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1910/1/22
[貴族院演説年月日] 1910/1/22
[全文]
諸君、昨年此席に於きまして諸君と相見えましてより茲に一年、本日再び諸君に向ひ施政の方針に付きまして、政府の所見を陳述致しまするのは、本大臣の光榮とするところでございます、帝國と締盟各國との交際は愈々深厚でございまして、就中英國との同盟は益々鞏固を加へましたのは、本大臣の諸君と共に深く欣ぶところでございます、前年來日清兩帝國の間に懸案となってありました滿洲に關しまする問題に付きましては、帝國政府は善鄰の交誼を重んじまして、互讓の誠意を以て之が解決に努めましたるところ、清國も亦帝國の誠意のある所を諒と致しまして、遂に昨年九月日清協約を決定致しまして、數年に渉りました問題も茲に結了を告ぐるに至ったのでございます、帝國は從來滿洲に於きまして門戸開放、機會均等の主義を尊重致しまして、諸般の經營上其履行に付きまして遺憾なきを期しましたのでございまして、其誠意は列國の齊しく認むるところなることを信じます、韓國に對しまする帝國の關係は、韓國銀行の設立、司法監獄事務の委託、軍部廢止等の實行に付きまして、益々密接を加へ、帝國の保護政策を確實にすることを得ました、現行條約の有效期間も最早來年に迫りたるを以ちまして、政府は之が改正に著手するの準備を怠りませぬ、而して之がために現行關税定率法を改正するの必要を認めまして其改正法案を當議會に提出を致しました、帝國の財政に關しましては昨年諸君の御協力を經まして成立致しましたる豫算の實行に入りましてより、僅に半歳を過ぎたのでごりますけれども、幸にして財政方針の確立は漸次内外の信用を恢復するの效果を示しました、政府は來年度に於きましても、固く既定の方針を維持しまして以て戰後の財政整理を完からしめんことを期して居ります、既定の皇室費は二十年前の制定に係るものでございまして、今日之を増加致しまするのは最も適當のことと信じます、税法につきましては其偏重偏輕を矯めまして、負擔の均衡を計るを目的として調査いたしました結果、最も急務と認めまするものに付て、其整理の案を立てまして、茲に之に關しまする諸種の法律案を提出いたしました、又物價の騰貴貨幣法の改正に促されまして、多年の問題となって居りました官吏の増俸も、亦實に已むを得ざるものと認めました、前年度剩餘金の中急要已むを得ざる經費の財源に充てましたものを除き、其殘額を國債の償還に充つるため、之を國債整理基金に臨時に繰入を致しまして、以て益々國債整理の實效を擧ぐることを期しました。其他産業の發達、教育上の施設、運輸交通機關の整理等苟も國力の發展に資するものに付ては、財源の許す範圍に於きまして、實行に力めました、右の方針に依りまして編成致しましたる豫算案は、既に議會に提出を致しました、諸君、幸に此旨を諒せられまして、速に御協贊を與へられんことは本大臣の切に希望致すところでございます