[内閣名] 第13代第2次桂(明41.7.14〜44.8.30)
[国会回次](帝国)第27回(通常会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1911/1/21
[貴族院演説年月日] 1911/1/21
[全文]
諸君、本大臣は茲に政府所見の概要を陳述するの機會を得ましたるを光榮と存じます、諸君、締盟列國との交誼は益々親善を加へ、特に日英同盟の基礎は、年を追ふて益々鞏固なるを致し、又昨年露國と更に協商を重ねまして、從來の協約の基礎を一層確實にするを得た次第でござます、其他各國との協約等に付きましても、孰れも漸次其效果を収めまして、爲に東洋の平和を増進し、帝國の安全を保障するに於て、何等遺憾なきを得まするのは、實に國家の幸福と言はなければならぬのでございます、諸君、列國との條約改正に關する交渉も、漸次其歩を進めて居ります、本大臣等は諸君と共に速に其目的を達し、其期に到りまして、圓滿なる實施を見んことを切望して已まぬ次第でございます、韓國に對しましては、帝國は常に其最善を盡しましたが、從來の政策遂行の結果は、未だ以て完全に帝國の所期に副ひませぬ、又同國開發の目的を達する所以でもございませぬから、昨年八月になりまして、終に同國を永遠に帝國に併合せらるヽことヽ相成りましたのでございます、爾後朝鮮の情勢は、平靜でありまして、庶民其堵に安んじ居りますれども、尚今後一層其施設經營を完うし、同地方の發達同化を圖りまして、以て十分に併合の效果を收めたいと存じて居ります、諸君、本大臣は就職以來財政經濟の整理を計畫致し、諸君の御贊同を得て其方針を實行致しましたが、幸に致しまして今日に至り、稍々其效果を實現致しまして、内外に對する帝國財政の信用鞏固となり、經濟界も亦漸次穏健なる發達を見るに至りましたのは、實に國家の幸であると存じます、政府は尚從來の方針に依りまして、益々財政經濟の調和を圖り、國力の發展を確實なからしめんことを希望して居るのでございます、國防の充實を期しまするのは、東洋の平和と帝國の安全とを維持するに於きまして、已むを得ないことヽ存ずるのでございます、故に政府は財政の許す範圍に於て、之が補充の計畫を立てました、又交通、殖産教育等國運の發展に必要なる事業に付きましては、それそれ既定の計畫を遂行致し、又新に計畫を定め、治水事業に付きましても相當なる企畫を致しまして、何れも來年度豫算案に其費額を計上を致しました、尚其他各種計畫等に付きましては、更に各大臣又は本大臣より、相當の時機に於きまして、其内容の詳細を陳述致します、本大臣は諸君が時勢の須要に鑑み、政府の意のある所を諒とせられまして、提出致しましたる各案に對して、協贊を與へられんことを切望して止まぬのでございます