[内閣名] 第15代第3次桂(大元12.21〜大2.2.20)
[国会回次](帝国)第30回(通常会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1913/2/5
[貴族院演説年月日] 1913/2/5
[全文]
諸君、諸君に於かれまして、既に御承知の如く不肖は舊臘十七日優渥なる勅語を拜しまして、直に内閣の組織に從ひまして、二十一日を以ちまして、三たび内閣總理大臣の重任を辱うするに至りました、茲に當議場に於きまして、諸君と相見え、政府所見の概要を陳述致しまする機會を得ましたのは、本大臣の深く光榮と致すところでございます、諸君、列國との交際は益々敦厚に、英國との同盟は愈々鞏固に、日佛、日露の兩協約は益々其實效を收めまして、極東の今日の形勢に對して、能く平和の保持せられますのは、誠に慶賀すべきところでございます、諸君、今囘は怱卒の間大命を拜しまして、内閣組織に從ひましたので、諸般行政事項の細微に亙りまして計畫を致しまする暇を得ませなかった次第でございます、從って大正二年度の豫算案は、大體大正元年度の豫算に依りまして、編成を致しまして、本日既に衆議院、即ち議場に提出を致しました次第でございます、然れども、歳入出の均衡を保ち、因て以て財政經濟の基礎を鞏固ならしめますことの必要でございますのは、固より言を俟たぬところでございます、因りまして、政府は年額に於きまして、五千万乃至六千万圓の節約を目的と致しまして、經費の節減及事業の繰延を致しまして、以て行政及財政の整理を行ひまする考でございます、右整理の結果に基きまして、諸般の計畫を定めまして、豫算の編成を致しまするのは、固より大正三年度を待たなければならぬことでございますけれども、大正二年度に於きましても、豫算の執行上出來得る限り整理の實現を期する考でございます、而して國力の充實、政の更張を圖るに付きまして、必要なる諸般の施設及國民の負擔を輕減致します計畫に付きましては、政府は愼重なる調査を遂げまして、最善の力を盡します考でございます、政府は財政經濟の調和を圖りますため、公債の發行額を減少を致し、又大藏省證券の最高限度を五千万圓以下に止めますことを圖る積りでございます、且國債に付きましては、其償還計畫を確實に實行を致します考でございます、諸君、本議會に提出致しますところの豫算案竝に法律案に付きましては、更に本大臣又は各大臣等より相當の時機に於きまして、其詳細を陳述致しますが、本大臣は、諸君が内外の情形に鑑み、政府の意思の存しまするところを諒せられまして、宜しく協贊を輿へられんことを切に希望致します次第でございます