データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第16代第1次山本(大2.2.20〜大3.4.16)
[国会回次](帝国)第31回(通常会)
[演説者] 山本權兵衞内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1914/1/21
[貴族院演説年月日] 1914/1/21
[全文]

諸君、昨年時恰も帝國議會開會中に於て、揣らずも大命を拜し、此席に於て諸君と相見えましてより殆ど一年と相成りました、而して本日再び茲に所見を述ぶるの榮を得ましたるは、本大臣の最も光榮とするところでございます、帝國と締盟各國との交際の益々親善を加へ、英國との同盟の愈々鞏固を來たしたるは、誠に慶賀すべきところでございます、唯不幸にして加州問題の尚未だ解決に至らざるものがありまするのは、甚だ遺憾に存じまする、鄰邦支那の擾亂は久しきに彌りましたが、今や既に其政府を承認致しまして、善鄰の交誼を敦うすることを得るに至りましたるは、東洋平和の爲め本大臣の最も喜ぶところでございます、本年十一月を以て舉行せらるべき即位の禮及大嘗祭は、國家最高の大典にして、是が爲め既に大禮使を置かれ、諸般の事務今や方に進行中でございます、此光輝ある慶典に際しまして、國民齊しく其瑞祥に浴し、滿腔の至情を捧げて之を奉祝致し、忠愛の赤誠を披瀝することを得まするのは、本大臣の諸君と共に感激に堪へざる次第でございます、行政竝びに財政の整理に付きましては、前期議會に於ける聲明に基きまして、鋭意勉勵其事に從ひ、既に其成果を公表しまして、略々年來の宿案を解決致しました、今後益々整理の精神を恪守致しまして、財政經濟の基礎を鞏固にし、以て漸次時勢に適應するの計畫を立つることを懈らぬように期します、大正三年度の豫算案は即ち此趣旨に基き、産業の振興其他國力の充實に必要なる事項を酌量し、編製致しまして、本日之を本院に提出致しました、税制の整理に就きましても其一部分は既に前期議會の協贊を經まして、之が實施を見ましたるも不幸にして議了に至らざりしもの、其他調査の結果を整理を要すと認めますものは、相當の計畫を立てまして之を本議會に提出するの運びと致します、尚時運に鑑みまして必要と認めまする諸般の法律案は、順次之を提出致しまして、主務大臣より随時説明をするでございませう、諸君願はくは政府の意のあるところを諒とせられ、愼重審議の上、與へられんことを偏に希望致します