[内閣名] 第17代第2次大隈（大3.4.16〜大5.10.9）
[国会回次]（帝国）第33回（臨時会）
[演説者] 大隈重信内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1914/6/23
[貴族院演説年月日] 1914/6/23
[全文]

諸君、政府は海軍軍備補充の緊急なることを認めまして、臨時議會召集のことを奏上致しましたところ、御裁可あらせられ、茲に此臨時議會を以て再び諸君と相見ゆるに至りましたのは本大臣の光榮と致す所でございます、本大臣は此議會に於きまして、政府所見の概要を敍説致しまして、諸君の御參考に供せんと存じます、諸君、帝國と列國との交際は益々親密でございます、日英同盟、日佛、日露の兩協商は其基礎愈々鞏固でございます、最近列強の注意は著しく極東に鍾まりまして、之に至大の關係を有しまする帝國の外交施設は、更に緊密なる注意と、適當なる措置を要するのは申すまでもなく、政府は同盟協商の精神に基きまして、極東永遠の平和、帝國の地位及利權の擁護を目的と致しまして、諸般の問題に對し、最善なる效果を舉げんことを努めて居ります、國防は國家興廢の係る所、固より是が弛緩を許しませぬ、而して其施設は外交及財政と調和を保たねばなりませぬ、政府は深く内外の状態形勢を察しまして、調査審究の途を説くるの必要を認め、竝に本日を以て防務會議規則を制定致しました、政府は此途に依りまして、適當なる解決の方法を講ずる積りでごさいます、財政の現状を觀まするに、戰後民力の休養未だ十分ならざるに、國運の発展に應ずる經費の調達を要するもの亦少くございませぬ、而して財政經濟の調節未だ完からず、公債の政策動もすれば不確實なるを免れませぬ、此際に於きまして國民の負擔を輕減致しまして、民力の伸長を圖り國庫の收支を健全に致しまして、市場の壓迫を除き、公債政策を整理致しまして財政の基礎を鞏固にし、貿易の均衡を制しまして徐ろに經濟財政の根本を培ひまするのは、寔に目下の急務に屬します、此の趣意に依りまして政府は更に行政及財政の整理を爲し、國民負擔の輕減を圖り、且公債政策の整理を爲すの計畫を立てまして、大正四年度以降の財政計畫と相俟って、是が實行を期する考でございます、今や民間事業經営の能力は大に發達致しまして、獨立自營の氣象甚だ鞏固でございます、政府は此の氣運に看まして、官營事業にして民營と爲すに適するものは、成るべく之を民業に移す積りでございます、以上諸般の事項に關しましては、次の通常議會に於て更に案を提し、諸君の協贊を乞ふ積もりでございます、今期議會に於きましては政府は第三十議會の決定に基きました海軍軍備補充の緊急なることを認めまして、單に此案に限り提出することヽ致しました、戰艦三隻建造の計畫は、大正二年度予算に其一部を現はしまして、既に其事業に著手致しました、然るに大正三年度豫算に於きましては、豫算不成立となりましたために、事業を一時中止するの止むを得ざるに至りました、政府は此事業を繼續實行致しますのは、國務進行上緊急なりと認めまして、必要なる追加予算を要求することヽなりました、諸君の審議を煩はし協贊を願ひます、尚提案の説明は主務大臣より陳述せらるヽことヽ存じます