データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第18代寺内(大5.10.9〜大7.9.29)
[国会回次](帝国)第39回(特別会)
[演説者] 寺内正毅内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1917/6/26
[貴族院演説年月日] 1917/6/26
[全文]

諸君、第三十九帝國議會の開會に際して、總選舉の結果新に當選の名譽を荷うて詔命に應ぜられたる諸君と相見えまして茲に政府の所見を陳ぶることを得まするのは、本大臣の光榮とする所で御坐います、内外に對する政府の施設の大綱に付きましては、今年の一月當議場に於きまして陳述致した所で御坐いますから、爰に重ねて絮説致しませぬ、政府は其後專ら是が遂行に努めて居りまして、外に對しましては常に東洋の大局の保全を顧念致し、聯合與國との關係を保續して交戰の目的を達することを期して居る次第でありまする、此間に於ける戰局の異動を申しますれば、露國の政變と米國の參戰とは、其顯著なるものでありまして、特に米國の參戰は聯合諸國と共に最も歡迎して居る所で御坐います、支那民國の政爭は猶未だ安定するに至りませぬが、我政府は善鄰密接の關係に鑑みまして、鞏固なる政府の下に長く治安が保たれ、彼我兩國の利益が増進せらるヽことを希望致しまする、而して斷えず其推移に留意して親善の隣誼を持續しつヽある次第で御坐います、本大臣は時局の甚だ重大なるを念ひまして、臨時外交調査機關の特設を奏請致しまして、練達堪能の人々を奏薦致しまして、臨時外交調査委員會を組織致し、既に會同審議の端緒に就くことを得ました譯で御坐います、前議會に提出致しましたる大正六年度總豫算は、不幸にして其成立を見るまでに運ばなかったので御坐います、それで政府は前年度豫算を施行する爲に、實行豫算を編成を致しました、而して政府既定の政策に關するもの、又は時局其他の關係上一日を緩うすることの出來ない所の各種施設の費目は、追加豫算と致して諸般法律案と共に當議會に提出することに致しました、是等は何れも皆國家緊切の要務でありまして、遷延を許すことを得ないもので御坐います、諸君、幸に政府の意圖の在る所を諒知せられまして、特に此時局に鑑みて、審議協贊を與へられむことを偏に希望致しまする次第で御坐います