データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第29代犬養(昭6.12.13〜7.5.26)
[国会回次](帝国)第61回(臨時会)
[演説者] 犬養毅内閣総理大臣
[演説種別] 緊急國務に就ての演説
[衆議院演説年月日] 1932/3/22
[貴族院演説年月日] 1932/3/23
[全文]

 諸君、今囘の總選擧に當選せられたる諸君と相會することは、私の光榮とする所であります、政府は茲に重大の時局に臨み、特に緊急なる國務に付き協贊を願ふのであります

 曩に衆議院解散せられ、昭和七年度歳入歳出總豫算竝に同年度各特別會計豫算不成立となりし爲に、政府は憲法の條章に依り、前年度の豫算を施行することになりましたが、唯々今囘の事變に關する經費に付きましては、緊急已むを得ざるものある故に、茲に臨時議會の召集を奏請し、追加豫算案及法律案を提出致しましたのであります、尚ほ此機會に於て銀行券の金貨兌換に關する件及昭和六年度に於ける國債償還資金の繰入一部停止に關する件の緊急勅令竝に今囘の事變に關し經費支辨の爲め公債發行に關する緊急財政處分に付て、憲法の規定に基き、夫々事後承諾を求めんとするのであります

 支那事件に付きましては、帝國は東洋永遠の平和を確保し、我が權益の擁護及我が國民の生命財産の保護を完うせんことを期する外に、何等の意圖を有しませぬ、領土的企圖無きは勿論、門戸開放機會均等主義を尊重するものであることは屡々聲明した通りであります、日支兩國は目下複雑なる關係に立ち到って居りますが、支那にして反省の實を擧ぐるに於ては、解決は決して難事にあらずと思ひます、政府は一日も早く日支關係が常態に復し、善隣の誼を敦くせんことを切望して居るのであります

 一般政策の事項に關しましては、次期議會に於て諸君の協贊を願ふ心算であります、此度の提案に付きましては、現下の事情を洞察せられ、速に協贊あらんことを希望致します