[内閣名] 第46代片山(昭和22.5.24〜23.3.10)
[国会回次] 第1回(特別会)
[演説者] 片山哲内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1947/7/1
[参議院演説年月日] 1947/7/1
[全文]
新憲法実施の最初の国会におきまして、政府を代表いたしまして、施政方針の演説をいたしまする機会を得ましたることは、私の最も光栄とするところであります。殊に私は、さきに本国会におきまして、諸君の大多数によって政府の首班に指名せられましたることは、私の生涯にとりまして、忘るることのできない感激の至りであります。
爾来ただちに組閣に従事いたしまして、挙国体制によりまする四党連立の政府を樹立したいと考えて、それに努力してまいったのでありまするが、目的通り十分の成功を収めることができなかったのでありまするけれども、ここに成立いたしましたる三党連立現内閣に対しましては、自由党の諸君も、閣外にありまして協力せらるることと存じ、深く期待し、挙国危機突破に向いたいものと考えておる次第であります。
政府は、この歴史的な第一回国会の開会に際しまして、政府の現下時局に対しまする所信と決意を披瀝いたしまして、諸君の御協力を仰ぎたいと存ずる次第であります。
第一に申し上げたい点は、憲法に対する政府の信念であります。政府は新憲法を厳に守りまして、その精神を生かすことに最も忠実であることをここに誓うものであります。特に新憲法のもっておりまする民主主義の大精神、平和主義の大理想、これを政府は一切の政治行動の大目標として掲げたいと考えておるのであります。これを大胆明快に現実化いたしたいと考えておるのであります。すなわち国民代表でありまするところの国会によって指名せられたる政府であることを自覚いたしまして、国会を尊重するはもちろんのこと、憲法の各条章に基きまして、国会及び政府の関係につきましても、何ら紛淆を来さざるよう、細心の注意を払うつもりであります。特に司法権の独立につきましては留意を払いまして、最高裁判所の構成はつきましても{前7字目ママ}、憲法の精神に基く民主主義的方法によりまする等、新憲法のもつ高遠なる大理想を、一日も早く、できるだけ多く実現いたしたいと考え努力いたしておるのであります。なおこれに基く必要なる一切の諸法規を国会に提出すべく、その準備を急ぎつつある次第であります。
第二に、政府の施政方針に関する根本観念をまず明らかにいたしたいと考えるのであります。政府は、現下諸般の情勢を考慮いたしまして、この際われらの理想でありまする民主主義を拡充発展せしめたる高度民主主義体制を確立いたしまして、新時代に副うべき政治理念をあらゆる方面に浸透せしめ、その徹底をはかることが必要を考えておるのであります{前12字目ママ}。すなわち現内閣の至高指導精神は、高度民主主義を各方面に徹底せしめることであります。
政治上における民主主義徹底の急を要することは、言うまでもないことでありますが、問題は民主主義を政治上のみにとどめることなく、これを産業経済の部面にも広く透徹させたいと考えておるのであります。産業経済の発展は、実にその機構の民主化に負うところ多大であるのであります。さらに社会生活の部門におきましても、健康にして文化的ならしめるために、これを革新する要がありますから、民主主義を日常実際生活に織りこみ、生活態様を民主化するの急務なることを感じておるのであります。政治上における民主主義は、封建的官僚機構を一擲することとなり、産業経済に浸透いたしまする民主主義は、産業の充実発展を来すこととなるのであります。社会方面に浸透いたしまする民主主義は、文化の向上を来すこととなり、国際方面に及びまする民主主義は、平和主義の浸透をなす結果を来すこととなるのであります。
思うに、人間生活を規律いたしまする政治原理としての民主主義は、十八世紀時代より進展いたしまして、歴史的幾多の変転を経て、第一次、第二次世界戦争の後において、ここに初めて世界共通の新生活原理として発見せらるるに至ったと考えるのであります。西洋文明は、ギリシヤ文明、キリスト教文明、近代科学の集積であると考えるのであります。
今私の考えておりまする高度民主主義は、その集積に基くものでありまするとともに、平和主義の根底となるものであります。この民主主義の裏づけなくしては、決して平和主義の実現を全うすることができない。世界平和の実現は不可能なるものであると考えるのであります。また人類生活を向上発展せしめ、産業を隆盛ならしめる原則も、これまた高度民主主義を基本とするものと考えておるのであります。
すなわち高度民主主義は、この意味におきまして人道主義であります。また合理主義であります。また社会民主主義であります。よって暴力によりまする政治行動、その他一切の直接行動に反対するとともに、民主主義政治体制でありまするところの議会政治を厳にとるものでありまして、政府はこの信念に基き施政方針を樹立するものであることを明かにせんとするものであります。以上、政府の信ずる政治理念の大要を明らかにいたしました次第であります。
第三に、現下の国際情勢に鑑みまして、わが国の性格をきわめて率直かつ明白に世界各国に表示いたしまして、その理解と援助を求めるとともに、国際的信用を回復することが、最も必要なることと信ずるのであります。新憲法には、主権在国民と、戦争放棄と、人権の尊重とを、明文として表しているのでありますがゆえに、わが国の性格はここに一変いたしまして、新しき日本として再出発しておりますることは、言うまでもありません。わが国の性格が、もはや武力国、好戦国ではないこと、封建的官僚機構は、制度上すでに払拭されつつあること、民主主義的議会政治が確立せられんとしておることを明かにいたしたいのであります。事実をもってこれを立証し、世界に向って、日本国民の努力と真実さを示さなければならぬと考えておる次第であります。
政府の考えておりまする、われらの建設せんといたしまする平和国家は、次の要素をもつものであると考えるのであります。第一は、国民に、憲法に基く各種の自由を保障するところの国家であります。第二は、国民に、健康にしてかつ文化的なる生活を保障するの国家でなければならないのであります。第三に、国民が、暴力と不合理、不正義を排し、道義と人類愛に基く平和に徹するとともに、正義をどこまでも護る国家であることを明らかにするもでなければならぬと思うのであります。第四には、勤労と科学と芸術と宗教を尊重するの国家であり、第五には、適正なる教育制度の確立によりまして、次代国民の民主的、平和的育成に努める国家でなければならないと考えるのであります。われら日本国民は、この意味におきまして、かかる要素をもつ平和国家としての日本を建設しつつあることを、世界に向って明白にすることが、最も必要であるということを、私は考える次第であります。
次に、第四といたしまして、わが国の経済がまことに恐るべき危機に当面している点を申し述べたいと思うのであります。敗戦によりまする憂慮すべき結果が、まさに現実の問題として、日本国民に襲い来ったのであります。すなわち食糧の欠乏であります。インフレの進行であります。産業の不振であり、失業の増大であり、やみの横行であります。政府は組閣後ただちにこの問題を取上げまして、万難を排して、この危機突破をしなければならないという決意のもとに、経済緊急対策八項目を掲げまして、その実行については、国民諸君の御協力をすでに仰ぎつつある次第であります。今私はこれを繰返して説明するの煩を避けたいと思いますが、問題の重要性に鑑みまして、ここに危機の要因を御説明いたしたいと存ずるのであります。
戦争と敗戦とによりまして、根本から破壊されてしまいましたわが国の経済を、どうして再建するかということは、きわめてむずかしい事柄でありますが、今まで、敗戦後の日本の経済の実相というものが、全国民に十分理解せられておらず、政府の従来の施策もまた徹底を欠いておったために、不幸にして今日まで立直るの端緒をつかむことができず、経済の情勢は次第に悪化してまいりまして、そのために、国民の精神や文化にも深刻な影響を与えたのであります。われ\/は、今日経済の実体から判断いたしまして、今日こそ、わが国が経済の再建をなし遂げ得る最後の機会であると考えているのであります。このことを十分に国民に理解していただきたいために、政府は近くこの国会に、わが国経済の現状を明らかにいたしましたる実相報告書を提出いたしまして、先般の経済緊急対策の基礎となった政府の見解を、国会を通じて国民に報告いたしたいと考えている次第であります。
現在の経済がどんなにむずかしくなっているかという具体的な事実につきましては、この実相報告書によって御承知願いたいのでありますが、わが国の経済が悪化しつつあるという根本的な原因はどこにあるかという点につきましては、これを次のように要約することができると私は考えるのであります。
第一に、わが国は、敗戦の結果経済資源の相当の部分を失い、また生産や輸送などの設備が、戦争を通じて破損し、老朽化し、生産資材のストックもだん\/んとなくなり、労働の生産性も、戦前に比べて甚だしく低下しているのであります。そのために、現在生産されている物の量は、戦前の三割程度に止まり、かりにこれを全部国民の消費に充てましても、その一人当りの消費量は、ぎり\/の生活を続けていくにも足りないほどでありまして、いわゆる過小生産と呼ばれる状態にあるのであります。そのために、生産された物の大部分が消費されてしまい、産業の生産力を維持していくために必要な設備の修理や取替えさえ、ほとんど満足に行うことができず、このわずかな生産の規模そのものが、むしろもっともっと小さくなりつつある状態であります。
第二は、生産のこのような低下とはまさに反対に、人口は、敗戦の結果かえって増加しておりまするし、消費に対する要求は、戦争の間抑えられていた欲望が解き放されたことも絡み合って、非常に強くなっておりますので、国民のすべてが、何んとかしてその消費生活を高めようとして、争ってわずかな生産物に殺到し、それで足りない部分は、残されている過去の蓄積に食いこんでいっておりますので、総体といたしましては、わが国の経済が生み出す生産量よりも、はるかに多くの消費がなされておるのであります。この根本的な事実は、そのまま経済の各部門に現われておるのでありまして、たとえば国民の家計も、企業の経理も、国の財政も、みな赤字でありますし、また外国との貿易を見ましても、大きな輸入超過で、直接消費する食糧すら、外国から借りておるという形になっておるのであります。
第三には、戦争のために生産物の裏づけのない莫大な購買力が放出されたことを原因として起ったインフレーションが、以上のような経済各分野の赤字の現象と結びつきまして、賃金と物価との悪循環という形をとりながら、次第にその速度を早めておることであります。そしてこのインフレーションが、ます\/まじめな企業の経営を困難にし、勤労者の生活を脅かし、生産を妨げ、投機とやみ取引を盛んにして、さらに次のインフレーションの進行を刺激いたしておるという状態であります。
以上三つの事柄は、決してそれヾ/独立のものではなく、みんな互いに複雑に絡み合って、因となり果となり、経済を破局の方向に導いておるのであります。しかもその進み方を見まするならば、もはやすでに、きわめて危険なところまできておると判断される状態であります。これが現在の経済の実相なのであります。
われ\/はこのような経済の状態を見まして、あらゆる力を揮ってこれを建直す決意を固めておるのであります。われ\/は事態を楽観するものではありませんが、しかし決していたずらに悲観しておるのではないのであります。方法さえ誤らず、また国民が一致してこれに当るならば、必ずこの悪化しつつある経済を引きもどして、再建の軌道に乗せることができるものであることを確信しておる次第であります。
最も緊急を要します食糧問題につきまして、政府は食糧緊急対策を決定いたしまして、本日これを発表し、国民諸君の御協力のもとに、その実行に邁進いたしておる次第であります。
私はここで、この七月から十月の端境に至る四ヵ月の食糧需給の見透しが、きわめて憂慮すべき状態にあることを率直に申し上げたいのであります。すなわち国内的には、昨年度米並びに甘藷の供出は、前内閣以来あらゆる手段と方法を講じ、農民諸君もまた絶大なる努力を払われ、これが確保に、当ったのでありまするが、遺憾ながら所期の一一〇%供出は未だ完了するに至りませず、六月三十日、昨日までの成績は、一〇四%弱でありまして、約百五十万石の供出未了となっておるのであります。しかもまた期待されました麦類及び馬鈴薯の生産も、天候不良その他の事情のため、必ずしも芳ばしくない模様でありまして、国内供給力の点で、当初の予定とは少なからぬ狂いが生じておるのであります。他方輸入食糧は、連合軍最高司令部の絶大なる援助にもかかわらず、諸般の事情のため、わが国不足量の全部を賄うことは、とうてい不可能と考えられておるのであります。
かくて今後十月に至るまでの四ヵ月間の食糧の見透しは、まったく文字通りの危機でありますが、政府は、食糧の確保があらゆる施策の根本であることを率直に認め、今回決定いたしました緊急対策を断行するほか、国内供給力の増加と輸入の懇請に全力を尽くしまして、最低基準量の確保に努力する方針であります。国民諸君も、何とぞ政府の施策に協力せられて、救国の熱意をもって、食糧危機突破に邁進されたいのであります。本月から実施いたしまする全国料理飲食店の休業も、真にやむを得ない措置に出たものであることを御了解願いたいのであります。
食糧に次いで重要なる問題は、いわゆるインフレーションの防止であります。政府は、現在インフレ進行の主要原因が、政府支出の増大にあることをこれまた率直に認めまして、でき得る限り歳出を節約いたしまして、健全財政の確立に努力する方針であります。同時に、いわゆる新円所得者の浮動購買力に対しても、租税あるいは貯蓄を通じてこれを吸収する方針でありまして、特に租税政策におきましては、負担の公平を期する建前のもとに、大口の新円所得者に高率の課税を行わんとするものであります。
他方、金融統制は、経済緊急対策に基いて一層強化する必要があるのでありまして、金融機関は、生産再開にあくまで協力する建前のもとに、今後とも貯蓄の増強、赤字金融の抑制に努力してもらいたのであります。政府といたしましては、金融機関はあくまで産業の奉仕者であると考えておるのでありまして、金融機関は、いやしくも産業に優越するかのごとき観念に陥らざるよう自粛自戒して、生産再開に協力されるよう切望いたすものであります。
次に、重要なる石炭問題につきましては、諸般の情勢に鑑み、その三千万トン生産計画を遂行するため、国家管理案を立てつつあるのであります。近くその内容を発表し、諸君の御協力を仰ぐ予定であります。
さらに、労働省設置に伴い、労働基準法の実施を急ぎ、その内容実現に努めるとともに、健全なる労働組合運動の発達に重点をおくほか、失業問題につきましては、失業手当法、失業保健法等、失業救済施設の拡充強化に関しまする具体策を、本国会に提出する予定であります。
また賃金と物価の問題につきましては、物価の安定に主力を注ぎまして、生活必需品配給の確保等によりまして、実質賃金を維持するに努力する考えであります。
日本経済再建の長期計画につきまして、一言触れたいと思います。この問題につきまして、政府は、緊急対策と並行いたしまして、これを立案しつつあるのでありまして、追って発表し得る段取りとなると思うのであります。この計画の中において、政府は、特に水力電気の開発を重視し、事情の許す限り、速やかに大規模水力電源の開発、ダムの建設に著手いたしたいと、今日より考えておる次第であります。
さらに、貿易産業の振興も長期的な経済再建計画の基調となるべきものでありまして、国内において最大限に消費を節約しましても、輸出の振興をはからねばならないと思うのであります。なお、この貿易の振興に関連いたしまして、私は中小商工業者諸君の奮起と御協力を要望いたすものであります。わが国今後の貿易は、特産物ないし雑品の輸出にまつところ多いのでありまして、この点において、中小商工業者諸君の果すべき役割は、けだし大なるものがあると考えておるのであります。
かくして、産業の復興に全力を傾倒し、何としても、最も重要なる食糧欠乏を中心といたしますこの危機突破対策は、遂行しなければならぬ決意を高めつつある次第であります。この目的を達し得るや否やは、一に、われら日本国民が、自力をもってよくこの難関を切り抜け得るや否や、耐乏生活を続け得るや否や、全国民一致協力をなし得るや否やにかかっておるのであります。一人の餓死者なきを期するためには、豪奢な生活をなくして、分配の公正化と、不当利得者を排除しなければならないのであります。これをなし遂げるために、政府は非常な決意をもって起ち上っておるのであります。諸君の御協力を、一段と希う次第であります。
第五に、緊急経済対策のみならず、一段政策をも必ず実践に移しまして、一つ\/を、生ける実行策としなければならぬことと考えておるのであります。しかして、その第一段の実行の局に当る者は、政府であり、役人であります。第二段においては、国民大衆諸君も強く起ち上がって、その実行に当られんことを希望するものであります。
まず、政府が実行の衝に当るために、行政機構の改革と官吏制度の刷新に著手いたしたいと考えておるのであります。これら改革の心構えは、官僚的観念の打破でありまして、官吏はどこまでも国民のために仕事をする任務を負うものであり、自己の担当する任務につき、強い責任感をもち、かつ正義公平を生命とするものなることを徹底せしめるとともに、また内務省をこの際廃止し、地方自治制度に根本的改革を加え、警察制度、官吏任用制度、服務紀律等にも新らしき考慮を払って、官紀粛正を断行いたしたい考えであります。これらのうち、成案を得ましたるものは本国会に、準備の遅れるものは次の国会に提案いたしたいと思っておるのであります。これ一に行政機構の民主化を実現いたしたい精神より出ておるにほかならないのであります。国民諸君も、その実行の衝に当ってもらうために、自主的な新日本建設国民運動の展開さるることを要望してやまないのであります。
この国民運動は、いうまでもなく単なる精神運動では決してありません。もちろん作文に終らしめたくないのであります。精神運動よりも食糧問題の解決が先だという声は、よく聞くところでありますが、政府は食糧危機突破とこの国民運動を平行し、両者不可分の関係において実行せしめたい所存であります。政府の国民に求める耐乏生活は、普遍的でありまして、公平であるを要するとともに、これは光明を約束し、かつ希望に満ちておるものなることをお考え願いたいのであります。
なお、この国民運動とも密接な関係をもち、かつ憲法の精神を生かすべき文教問題については、政府は、さきに第九十二議会におきまして協賛を経ました新教育制度、特に六・三制の完全実施に関しまして、種々の困難はありますが、その実現のために、許す限りの努力を尽す考えをもっておるのであります。
第六に、さらに進んで講和会議のことについて申し上げたいと思います。講和会議の開催こそは、日本国民に希望と光明を与える大きな事項であります。その開催の一日も早からんことを、政府は全国民とともに熱望いたしておるものであります。顧みますならば、終戦以来二ヵ年、ポツダム宣言に規定されたわが国の非軍事化並びに民主化の事業は、国民一致の努力によりまして、著々と進歩を見てまいりました。政府は、今後とも一層の努力と誠意とをもって、ポツダム宣言受諾に伴う義務を忠実に履行し、真に民主的平和国家の実をあげ、もって国際社会への復帰の条件を満たさなければならないと考えておるものであります。
さいわいにも、連合軍司令部の御好意により、来る八月十五日より民間貿易が再開せられることになりましたことを、心より喜ぶとともに、その順調なる進行を期待しておる次第であります。これにつきましても、われ\/日本国民は、すべて率直なら心持を端的に披瀝いたしまして{前15字目ママ}、立て直りつつある真のわが国の姿を世界に示すことが必要と考えるのであります。すなわちわれ\/の希望するものは、国民生活の安定と、産業の再建、世界恒久平和への熱望にあることを表明し、連合国各国の精神的、経済的援助を求めたいと考えておるのであります。
なお、海外同胞引揚促進につきましては、政府ば細心の注意を払って対策を講じておるのでありますが{前25字目ママ}、今後とも、これがためあらゆる手段と方法をもって努力いたすつもりであります。
第七、以上、政府の施政方針の大要を述べましたが、その他重要なる政策につきましては、すでに発表いたしました緊急諸対策、並びに本国会に提出すべき予算案及び法律案について御了承願いたいのであります。
最後に一言いたします。まことに時局は重大であります。危機は深刻であります。この危機を突破し、来るべき講和会議を迎えて祖国を再建いたすためには、全国民のなみ\/ならぬ努力と忍耐を必要とするのであります。政府は、新憲法のもとに国民の自由なる意思によって選ばれたる最初の民主主義政府として、国民の政府として、否、国民の公僕といたしまして、真に決死難局にあたる覚悟をもって、祖国再建に邁進するの決意を固めておるものであることを、明らかにいたしたいと思うのであります。諸君は、何とぞこの政府の決意を諒とせられ、挙国一体、危機突破に協力されんことを切望してやまないのであります。
われ\/の道は、耐乏と苦難の道でありまするが、しかしながら、われわれの前途には光明と希望が輝いておるのであります。この危機を突破いたしまするならば、連合国の好意ある援助によりまして、再び国際社会の一頁に列することができるのでありまして、民主的な平和国家、文化国家の建設に進み、生活安定と民族文化の向上を実現し得るのであることを信ずるものであります。救国のために、明日の光明をもたらすために、全国民諸君の心からなる御協力を望んでやまない次第であります。私はこれをもって終ります。