データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第48代第2次吉田(昭和23.10.15〜24.2.16)
[国会回次] 第3回(臨時会)
[演説者] 吉田茂内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1948/11/15
[参議院演説年月日] なし
[全文]

 この決議案の御趣意は、とくと了承いたしました。吉田内閣の性格及びこの国会に対する、このたびの会期に対する現内閣の方針の一端を申し述べます。

 現内閣は、疑獄事件によって辞職せる芦田内閣の後をうけて出現いたしました内閣であります。首班指名の当時、私を支持せられたものは百八十有余であって、二百有余の白票を投ぜられた現衆議院において首班の指名を受けたる少数党内閣であります。この少数内閣は、まず信を国民に問うがために冒頭解散することが政治の常識であり、またわが国朝野の與論となっておるのであります{前14字目ママ}。

 しかしながら、去る七月マ元帥書簡によって勧告せられたる国家公務員法及びその関係法規の制定は、わが政府の義務でありまして、また国家経済再建復興のため欠くべからざる法制として、公務員法制定のために第三国会は召集せられた臨時国会であります。ゆえに、この通過をまって現衆議院を解散し、あらためて信を国民に問うことが当然であるのであります。また民主政治の精神に沿うゆえんであると信ずるのであります。従って、前内閣以来公約せられている公務員法及びその関係法規以外には、特に緊急やむを得ざる議案を除き、国会に提案すべきものでないと信ずるのであります。しかして、芦田内閣当時すでに立案せられ、現内閣において、ほとんどそのまま提案せられたる公務員法及びその関係諸法案は、当然当時の政府與党諸君におかれて、すでに御了承のことと信ずるのであります。

 私は、本件に関する諸君の審議を切り詰めてくれというような意図は毛頭ないのであります。もし、いたずらにその審議を遅延し、これが必然の結果といたしまして、国政の運用を渋滞せしめ、世界列国にも、またわが国祖国再建の熱意について疑いをさしはさましむるがごときことがありましたならば、国家再建を急務とする今日、まことに遺憾であります。これらの事情を了察せられて、時局救済のために政府に十分協力せられんことを切望してやまないのであります。