[内閣名] 第61代第1次佐藤(昭和39.11.9〜42.2.17)
[国会回次] 第52回(臨時会)
[演説者] 佐藤榮作内閣総理大臣
[演説種別] 衆議院予算委員会における佐藤内閣総理大臣の所信表明
[衆議院演説年月日] 1966/10/20
[参議院演説年月日] 1966/10/20
[全文]
予算委員会の審議に先立ちまして、私の所信を明らかにいたしたいと存じます。
私は、先般、病のためにやむを得ず入院治療するということになりました。しかし、幸いに順調に回復いたしまして、早期に退院することができました。しかし、その間短い期間ではありましたが、政治の空白を生じ、国民の皆さまに御迷惑をおかけしたこと、深くおわびいたします。
私は、政権担当以来、国民の信頼を得ることを政治の要諦であると信じ、国民とともに歩む清潔な政治を政治の基本としてまいりました。しかるに、最近政界の一部に、公党の道義と綱紀の問題について国民の不信と疑惑を招くような事態を生じたことは、まことに遺憾にたえません。国民諸君に対し申しわけないことであります。政局を担当する者としてその責任を痛感しております。私は、現在このような事態を直視し、世論の批判に謙虚に耳を傾け、反省しております。国民の間に政治不信の念が高まることはゆゆしきことでございます。私は、今後一大決心を持つて、積年の病弊を根絶するため、積極的かつ具体的な措置を講じていく決意であります。これが、いま私に与えられた国家国民に対する義務であると信じております。
すでに自由民主党内では、党の組織調査会において、党の体質改善についての具体策が昨日決定され、また、党内には、清瀬一郎君を委員長とする粛党に関する特別委員会も発足いたされました。私は、これらを基盤として、今日ただいまの問題及び長期的視野に立っての改善等、全力をあげて政界刷新の実をあげていく決意であります。
また、政党のみならず、官界の一部にも最近綱紀のゆるみが見られますが、政党及び政治家が厳正に身を持することによつて、官界の規律はおのずから正されていくであろうことを信じて疑いません。私は、穏健で中正な、そして進歩的な政治こそ国民の大多数が望んでいるところであると思います。そのにない手であるわが自由民主党の責任は重大であり、国民のわが党に対する期待は大きいのであります。国民の期待にこたえ、政治への信頼を回復するため、全党一致協力して政治徳義を高めなければなりません。そのためには、まず現在の政治のあり方を根本的に再検討する必要があります。責任政党である自由民主党の体質改善をはかつていくこと、金のかからない選挙のあり方を検討すること、当面、この二点に重点を置いて考えております。選挙のあり方については、選挙制度審議会においてすでに長期にわたつて御審議いただいておりますが、結論を得次第、国民世論の動向を見きわめ、勇断を持つてこれに取り組む決意であります。
ひるがえつて、わが国を取り巻く諸情勢は依然きびしいものがあり、アジアの一角においては、いまなお戦火が絶えません。このような中にあつてわが国が平和と繁栄を維持しているのは、わが国が自由主義国家の一員として、また民主主義国家として健全な発展を遂げているからにほかなりません。私は、激動する内外の諸情勢に対応して、適切な諸施策を実行し、国民生活向上のため一段と努力する決意でありますが、議会民主主義発展のため、党派を越えた御協力をお願いするものであります。