データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第67代福田(昭和51.12.24〜53.12.7)
[国会回次] 第80回(常会)
[演説者] 福田赳夫内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1977/1/31
[参議院演説年月日] 1977/1/31
[全文]

 内外情勢の大いなる変化のうちに第八十回国会が再開されるに当たりまして、新政府の施策に関する基本方針を申し述べ、国民の皆様の御理解を求め、特に、議員諸君の御協力を得たいと存じます。

 私は、このたび内閣総理大臣の大命を拝受いたしました。国政の重責を思い、決意を新たにして、国家と国民に対する使命を果たしてまいりたいと存じます。そのため、日本国の進路に誤りなきよう全力を傾注してまいりたい所存でございます。

 三年前、私は大蔵大臣として、この壇上から、わが国経済社会のかじ取りを大きく、かつ、明確に転換すべきときに来ていると申し上げました。

 そして次の年、昭和五十年一月には、経済企画庁長官として、国も、企業も、家庭も、「高度成長の夢よ再び」という考え方から脱却し、経済社会についての考え方を根本的に転換すべきときに来ていると申し上げたのであります。

 そのときは、いわゆる石油危機を契機として、わが国経済が異常なインフレの火の手に包まれ、日本社会の大混乱という緊急事態であったのであります。

 しかし、私がそう申し上げましたのは、その緊急事態に対応するという、ただ単にそれだけの理由からではなかったのであります。資源有限時代を迎え、一体わが国の将来はこのままでいいのだろうかと、心から憂えたからであります。

 戦後三十年余り、世界は平和と科学技術に支えられまして、目覚ましい経済の成長と繁栄をなし遂げました。その結果、つくりましょう、使いましょう、捨てましょうのいわゆる大量消費社会が出現したのであります。

 この間に、人類は貴重な資源を使い荒らし、遠くない将来に、一部の資源がこの地球上からなくなろうとしておるのであります。しかも、二十一世紀の初頭には、世界人口は現在の二倍に達すると予想され、さらにさらに膨大な資源が求められることは明らかであります。

 これは大変なことだと思います。人類始まって以来の変化の時代の到来だと思います。人類は、まさに資源有限時代の到来を意識せざるを得なくなったのであります。

 このような大いなる変化の時代には、国々の姿勢にも変化が出てまいります。石油危機はその象徴的な出来事と理解すべきであります。二百海里経済水域問題など海洋をめぐる複雑な動きも出てまいりました。

 資源小国のわが日本国は、資源を世界じゅうから順調に入手できなければ、一刻も生きていくことができないのであります。もうこれからの日本社会には、従来のような高度成長は期待できないし、また、期待すべきでもないと思うのであります。しかし、成長はその高きをもってとうとしとはいたしません。成長の質こそが大事であります。

 要は、われわれが時代の認識に徹してその対応ができるか否かであり、その対応を誤ることがなければ、より静かで、より落ちついた社会を実現することができると信じます。今日この時点でのわれわれの選択は、日本民族の将来にかかわる重大な意味を持っておるのであります。

 翻って人類の歴史をながめるときに、われわれは、物質文明の発達が無限の欲望をつくり出してきたという事実を見るのであります。しかし、すでに申し上げているように資源は有限であります。無限の欲望と有限の資源というこの相反する命題の解決こそ、現代のわれわれに問われている根源的な課題であると言わねばなりません。

 このことは、物の部面だけのことにはとどまりません。人間の生き方、さらには現代文明のあり方が問われるようになるということでもあります。

 高度成長になれ親しみ、繁栄に酔って、「物さえあれば、金さえあれば、自分さえよければ」という風潮に支配される社会は、過去のものとしなければならないと思うのであります。

 人間はひとりで生きていくわけにはまいりません。一人一人の人間が、その生まれながらの才能を伸ばしに伸ばす、その伸ばした才能を互いに分かち合う、補い合う、その仕組みとしての社会と国家、その社会と国家がよくなるその中で、一人一人の人間は完成していくのだと思います。

 助け合い、補い合い、責任の分かち合い、すなわち「協調と連帯」こそは、これからの社会に求められるところの行動原理でなければならないと思うのであります。

 国際社会でも同じです。今日世界はますます相互依存の度を強めております。一国の力だけで生存することは不可能になっております。互いに譲り合い、補い合い、それを通じておのおのの国がその国益を実現することを基本としなければならないと思います。

 私は資源有限時代の認識に立ち、「協調と連帯」の基本理念に立って、世界の中での「日本丸」の運営に当たり、その枠組みの中で、当面する問題の処理に当たってまいりたいと存じます。

 まず、経済問題について申し上げます。

 ことしは内外ともに経済の年であると考えます。

 昨年の経済は全体として見るときは、ほぼ順調な歩みだったと思います。しかしながら、上半期の景気急上昇の後、夏以降そのテンポは緩み、業種、地域による格差や企業倒産多発等の現象が見られます。

 このような状態が続きますと、雇用に不安を生じ、企業意欲を失わせ、社会の活力を弱めることにもなりかねないことを考えるとき、この際、景気回復への早期てこ入れを必要とするものと考えるのであります。

 こうした考え方のもとで、政府は景気対策の一環として昭和五十一年度補正予算を提出することにいたしました。

 また、五十二年度予算におきましても、需要喚起の効果もあり、国民生活の充実向上と経済社会の基盤整備に役立つ公共事業等に重点を置くと同時に、雇用安定のための施策を充実することといたしております。

 これにより五十二年度のわが国経済には六・七%前後の成長が期待されますが、この目標は先進工業国の中でも最も高い水準であり、国際社会におけるわが国経済への期待にもこたえるものであると信じます。

 予算の編成に先立ちまして、私は各党を初め各界の人々の御意見を承りました。独占禁止法改正案や大企業と中小企業との事業活動調整のための法案につきましては、それらの経緯を踏まえ、各方面と協議を進め、速やかに結論を得たいと存じております。

 さらにまた、大幅減税を行うよう強く求められたのであります。私も真剣に検討しました。しかし、資源の有限性とこれをめぐる国際環境を考えれば、これまでのような大幅な消費拡大よりもむしろ国民生活の質的向上へと考え方を切りかえるべきであり、この際は、中小所得者の負担軽減を中心とした減税を行うにとどめたのであります。

 景気問題と並んで私が重視しておりますのは、物価問題であります。物価は安定化の基調にありますが、その傾向を一層確実なものにするため、各般の施策を講ずることにより、消費者物価の年度中上昇率が七%台になるよう最善を尽くす所存であります。

 何よりも恐ろしいのはインフレであります。インフレは断じて起こしてはならないのと信じます{前6字ママ}。

 国民経済、国民生活から考えて最も大事なことは、資源エネルギーの確保と科学技術の振興の問題であります。これらの問題は、資源小国であるわが国にとって、国の存立と発展にかかわるものであり、まさしく、安全保障的な重要性を持つものであります。政府は、原子力を含むエネルギーの安定供給確保、省エネルギー対策等総合的な資源エネルギー対策のほか、宇宙、海洋開発を初めとする各分野の科学技術の振興対策を強力に推進してまいります。

 特にこれらの点につきましては国民の皆様の御理解と御協力を得たいのであります。

 次は、外交であります。

 世界は、いま二つの大きな変動の波に洗われておるのであります。一つは、先進工業国が軒並み苦しんでいる深刻な景気停滞であり、もう一つは、開発途上諸国の経済自立への苦悩であります。

 この二つは、分かちがたく結びついておるのです。言うまでもなく、今日の相互依存の世界では、南北間の調和的発展なくしては世界の政治的安定もなく、先進工業国の繁栄もあり得ません。他方、先進工業国の成長と安定なくしては、開発途上諸国が期待しているような民生の向上も発展も不可能であります。

 このような状況のもとにおきましては、日本外交が当面取り組むべき緊急の課題として、私は、わが国、米国、西欧などの主要な先進工業国間の協力強化を挙げたいと思うのであります。

 今日の世界におきまして、先進国自身の景気回復も、南北関係の改善も、一国の努力の範囲を越えた問題となっていることは明らかであり、事態解決の責任と能力を分かち合う主要な先進工業国間の協力なしには、前進を図りがたいからであります。私が主要先進国の首脳会議の開催を主張しているのは、まさにそういう時代の要請にこたえんがためであります。

 開発途上諸国との経済協力の強化も、新しい国際環境の中で、日本外交が真剣に取り組まなければならない主要な課題であります。

 このため、政府開発援助の水準を主要先進国並みへ引き上げるよう努力するとともに、一次産品問題の解決等にも積極的に取り組みたいと存ずるのであります。

 わが国の外交にとりまして、基本的な重要性を持つものは、戦後日本の繁栄と安全を支えてきた日米両国の友好協力関係であります。政治、経済、安全保障、いずれの面をとってみましても、日米関係は、わが国にとって際立った重要性を持っております。

 幸い日米両国は、過去のような不協和音の試練を乗り越え、かつてないほど安定した、いわば成熟したパートナーの関係にあるのであります。このような関係のもとで、日米両国が不断の協議によって意思疎通を図ることは、きわめて重要であると考えます。

 主要先進国の首脳会議に先立って、カーター米大統領と会談を行うことを私が重視しているのはそのためでございます。今般カーター大統領にかわり、モンデール副大統領がわが国を訪問されております。私自身、できるだけ早い時期に訪米し、変化する国際情勢に対処するお互いの新しい責任と相互信頼を確かめ合うつもりでございます。

 日米安全保障条約を引き続き堅持するとの政府の基本方針には、いささかの変更もありません。同時にわが国自身も、防衛力の基盤整備に努めなければならないということはこれは当然のことでございます。

 東南アジア諸国の平和と繁栄は、同じアジアの友邦であるわが国にとって最も大きい関心事であります。このような見地から、ASEANに見られるような自主的発展を目指すさまざまな努力に対しまして、人的交流、国づくりへの積極的寄与等を通じ、協力してまいる所存であります。

 日中共同声明を基礎として着実に発展している中国との善隣関係を揺るぎないものにすることは、アジアにおける平和な国際環境をつくる上からも、特に大きな意味を持っておるものと考えます。日中平和友好条約に関しましては、できるだけ早期に締結を図ろうとする熱意において両国は一致しており、政府は双方にとって満足のいく形でその実現を目指し、一層の努力を払ってまいる所存でございます。

 日ソ両国の友好関係も、わが国の外交にとってきわめて重要であります。日ソ両国の関係は、経済、貿易、文化、人的交流の面で順調な歩みをたどってまいりました。政府は、経済協力や文化交流などの分野でさらに着実な前進を積み重ね、日ソ関係の強化発展に努めるとともに、北方領土の祖国復帰を実現して平和条約を締結するとのわが国の基本的立場を貫くために、一層の努力を傾ける所存であります。

 朝鮮半島の情勢は、わが国を含む東アジアの平和と安定に深いかかわり合いを持っております。さしあたり、同地域の均衡状態を支えている国際的な枠組みを崩すことなしに南北間の緊張が緩和され、ひいては平和的な統一への道につながることを期待するものであります。

 四面海に囲まれたわが国にとって、漁業資源や海底鉱物資源の開発利用の問題をめぐる最近の国際的動向は、きわめて切実な関心事であります。

 国連海洋法会議では、なお最終的な結論を出しておりませんが、経済水域を二百海里に広げる方向は、次第に動かないものとなりつつあります。政府はこの大勢を注視しながら、冷静に長期的国益を踏まえ、国際協調の精神に沿って最善の解決を図る所存であります。

 懸案の領海十二海里問題につきましては、新しい海洋秩序への国際社会全体の急速な歩みを考慮し、沿岸漁業者のかねてからの切実な要望にこたえるため、所要の立法措置を講ずるつもりでございます。

 今日の国際社会の際立った特徴の一つは、紛争解決の手段として軍事力を使うことが、超大国を含め、すべての国々にとって許されないこととなってきたことであります。紛争を未然に防止すること、万一、不幸にして紛争が生じたときにも、できるだけその拡大を阻止することが、今日の外交の重要な任務となってまいりました。このような見地から不断に発生する「小さな誤解」や「小さな摩擦」を賢明に処理すること、すなわちコミュニケーション・ギャップの解消が、外交活動の中で果たす役割りはきわめて大きいと考えるのであります。

 今後とも一層多角的な国際交流を通じて相互理解を増進し、進んで人類の連帯感を強化するための共通の努力を生み出すように努めてまいる所存でございます。

 資源有限時代を迎えて、不安定な世界の食糧需給、漁業専管水域二百海里時代の到来等の問題に直面し、食糧問題を見直す必要性を痛感しております。

 このような基本的認識のもとに、農林漁業者が誇りと働きがいをもって農林漁業にいそしめるよう、その体質の強化を進め、食糧自給力の向上を図ることを長期にわたる国政の基本方針として、生産基盤及び生活環境の整備、需要に即応した生産の増大、生産の担い手と後継者の確保等、農林水産施策の拡充に努める所存でございます。

 中小企業は、農林漁業と並んでわが国経済の安定を支える柱であり、発展を図る活力の源であります。中小企業は、現在、安定成長経済への移行の中で厳しい対応を迫られており、政府としては、各般の施策を通じてこの苦難を克服する中小企業の努力を助成することが必要であり、特に小規模企業に対し十分配慮してまいらなければならないと考えるのであります。

 労使の理解と協調は、経済社会安定のかなめであります。

 幸い、わが国の労使は、これまで一度ならず、経済危機に直面して、すぐれた適応力を発揮してまいりました。私はこのことを高く評価するものであります。今後とも労使が日本経済の現状を踏まえ、「協調と連帯」の精神をもって徹底した話し合いを行い、良識ある対処をされるよう強く期待いたします。

 福祉政策や公共事業等を進めていくに際して、国と地方公共団体とは車の両輪の関係にあります。

 政府は地方公共団体の行財政が適切に運営されるように、明年度予算でその財源確保などの措置をとりました。

 地方公共団体におかれましては、新しい転換の時代に対応して、自主的な責任でその行財政を合理化し、効率的な運営をされるよう期待をいたす次第でございます。

 なお、祖国復帰以来五年を迎える沖縄につきましては、経済、社会の推移や民生安定の実態を見守りつつ、必要な諸施策を推進してまいります。

 真の福祉社会は、福祉の心に裏打ちされてこそ初めて成り立つものと信じます。従来のように経済成長に多くを望むことが困難となった今日、真に社会の援助を必要とする恵まれない人々への心温かい配慮は、格段の重要性を持ってまいります。私は、社会連帯の考え方のもとに、福祉対策を着実に前進させていきたいと思うのであります。

 急速に進行する人口老齢化の趨勢に応じて老齢者に対する年金や医療を充実させ、心身障害者など社会的に恵まれない人々に対してもきめの細かい対策を講ずるとともに、家庭、地域社会、企業などとも力を合わせまして、これらの人々の社会参加、社会復帰を促進し、その生きがいを高めるように配慮したいと存ずるのであります。

 高度成長の過程で相対的に立ちおくれておるのは住宅環境でありますが、その改善は、国民生活の基盤として、強く推し進めなければならないと存じます。

 住宅の量的拡大もさることながら、今後はその質的向上に目標を置き、住宅金融の充実、公的住宅の供給の確保などに努力し、また地価の安定、宅地供給の促進など対策に困難が伴うものにつきましても、一層真剣に取り組んでみたいと存じます。

 公害や自然破壊等の環境問題は、高度成長に伴って急速に深刻化してまいりました。健全な産業活動なくして社会の安定はあり得ませんが、錯綜したさまざまな利害を冷静に調整し合うことで、多様な欲求の合理的接点は必ず得られると思うのであります。この見地に立って、公害防止の充実強化を図り、開発等に当たっては環境汚染の未然防止に努めるとともに、豊かな国土を保全するため、水資源の涵養、治水、防災などの対策を進め、快適な人間環境を確保してまいりたいと存じます。

 わが国社会の進歩と発展のためには、あらゆる分野において、婦人が積極的に参加し、貢献することが必要であると考えます。このため、私は、国連の国際婦人年世界会議の決定にも留意して、国内行動計画を策定いたしました。

 私は、国民各層の方々とともに、婦人の地位と福祉の向上に一層努力してまいる所存でございます。

 およそ国を興し、国を担うものは人であります。民族の繁栄も衰退も、かかって人にあると思うのであります。

 資源小国のわが国が幾多の試練を乗り越えて、短期間のうちに今日の日本を築き得たのは、国民の教育水準と普及度の高さによるものと存じます。

 人間こそはわが国の財産であり、教育は国政の基本であります。私は、教育を重視し、その基調を、個人の創意、自主性及び社会連帯感を大切にし、世界の平和と繁栄に貢献し得る、知、徳、体の均衡のとれた豊かな日本人の育成に置きたいと思うのであります。

 このためには知識偏重の教育を改め、家庭、学校、社会のすべてを結ぶ総合的な教育の仕組みを創造していかなければならないと存じます。

 特に戦後の学校教育は、入試中心、就職中心の功利主義的な行き過ぎた傾向が目立っておるのであります。教育にとって一番大切な、自由な個性、高い知性、豊かな情操、思いやりの心などを育てることを忘れがちであると思うのであります。

 新しい時代の要請にこたえて、学校教育をはつらつとした創造的な人間の育成の場とするよう、教育界に人材を集め、教育課程をゆとりあるものに変え、入試の改善を図るなど、教育改革のための着実な一歩を進めたいと考えております。

 また、芸術、文化、スポーツなどを振興し、次代を担う青少年を初め国民の一人一人が、自主的な選択によって、生きがいのある充実した生活を創造し得るような環境づくりに努めてまいる所存であります。

 最後に、国の内外に迫る厳しい難局打開に当たりまして、私は皆様にお願いしたいことがあります。いやしくも、国政に参加するすべての政治家、中央・地方の公務員、公共の仕事に従事する人々は、この際、公私を峻別し、身辺を清潔にし、公に奉仕する喜びと責任を再確認していただきたいということであります。私自身、これを自粛自戒の言葉といたす所存であります。

 政治の退廃は、社会、民族の没落につながるのであります。

 ロッキード事件の徹底的究明は必ず実行いたします。その結果につきましては、国会にこれを報告いたします。また、このような不祥事が再発しないよう、腐敗防止のために必要な措置を講じます。

 国民の皆様も、この激動期を乗り切るために、いたずらな物欲と、自己本位の欲望に流されがちの世相から訣別し、世代を超え、立場を超え、助け合う人間的連帯の中から、この日本の国土の上に、世界じゅうの国々から信頼と敬意をかち得るように、真に安定した文明社会をつくり上げようではありませんか。

 資源有限時代の激しい嵐の中で、「日本丸」を安全に航海させ得るか否かは、一にかかって国民一人一人の自覚と努力にあると思うのであります。

 日本民族が力を合わせ、手を取り合って進む限り、変動期の激流がいかに激しく、障害がいかに大きくとも、克服し得ないはずはないと思うのであります。

 お互いに勇気を持って「日本丸」の航路を切り開き、二十一世紀に連なる希望に満ちた社会の実現に向かって前進しようではございませんか。

 重ねて国民の皆様の深甚な御理解と真剣な御協力をお願いして、終わります。