[内閣名] 第84代小渕内閣(平成10.7.30〜平成12.4.5)
[国会回次] 第145回(常会)
[演説者] 小渕恵三内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1999/1/19
[参議院演説年月日] 1999/1/19
[全文]
第百四十五回国会の開会に当たり、私は、国政を預かる責任ある立場にいる者として、施政に関する所信の一端を申し述べます。
本年、一九九九年は、一九〇〇年代最後の年であります。と同時に、次の新しい千年紀、ミレニアムを迎える前夜であります。千年紀をまたごうとしているこの重要な時期に、日本は経済的な苦難に直面しております。この苦難を克服し、次の世代に力強い品格あふるる、そして美しい日本を引き継ぐために、私は身命を賭して国政運営に当たる覚悟であることを、まず冒頭に申し上げたいと思います。
冷静な状況認識はもとより重要であります。しかしながら、私は、今や大いなる悲観主義から脱却すべきときが来ていると考えます。行き過ぎた悲観主義は活力を奪い去るだけであります。今必要なのは、確固たる意思を持った建設的な楽観主義であると思います。コップの半分の水を、もう半分しか残っていないと嘆くのはたやすいことであります。私は、まだ半分も残っているじゃないかと考える意識の転換が、今まさに求められていると確信するものであります。
私たちが愛してやまないこの日本は、必ずやこの困難を脱することができる、そういう土性骨の据わった社会をつくり上げたい、そのために私は蛮勇を奮い、間もなく訪れる二十一世紀へのかけ橋を築くために邁進することを誓うものであります。
私は、現在を明治維新、第二次世界大戦後に続く第三の改革の時期と位置づけております。明治維新以来、我が日本は官民一体となった先人の血のにじむような努力で近代国家としての基礎を築いてきました。驚異的な経済成長と今日の繁栄はそのたまものであります。しかしながら、私どもは今、その成功体験の上に安住し続けることは許されない状況になりました。価値観が多様化し、世界が流動化する中で、過去には有効だったシステムや意思決定の方法が今や足かせとなることも少なくないのであります。
明治維新と第二次世界大戦後の改革は、大変困難なものでありました。しかしながら、先人の勇気と覚悟がそれを可能にしました。現在の改革の難しさはまさにそこにあります。社会を挙げての意識の転換が不可欠であります。足かせとなるものを壊すだけでなく、新しいシステムをつくり上げなければなりません。同時に、私ども日本の持っているすばらしいものを残す努力も必要であります。
申し上げるまでもなく、第三の改革は政治家だけでできるものではありません。国民挙げての意識改革と支援がなければ、何事もなし得ません。国民各位の御理解と御支援をお願いするとともに、党派を超えた議員各位の御協力をお願いする次第であります。
もとより、最も重要なのは、国民お一人お一人が豊かで幸せに安心して暮らせる社会を築くことであります。国は立派だが国民は不幸せというようなことはあり得ません。と同時に、国民がすべて国に頼って生きるということも健全な社会と言えない時代になったと考えます。戦後五十数年、私たちは豊かさをひたすら追求してまいりました。豊かになりたいという目的はある程度は達成されましたが、その反面、心の充実という人間にとって最も重要なことを忘れがちだったことは否定できません。
内閣をお預かりして以来、私は、事あるごとに富国有徳ということを申し上げてまいりました。健全な資本主義は利潤追求だけでは維持できません。それは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーを初め、世界の哲人が主張しておるところでもあります。徳すなわち高い志を持った国家でなければ、豊かな国であり続けることは不可能であり、何よりも世界から信頼されなくなるわけであります。
他人に優しく、美しきものを美しくとごく自然に感じ取ることのできる社会、隣人が優しく触れ合うことのできる社会、そして、何よりも、住みやすい地域社会を建設することが必要だと考えるものであります。このような考え方に基づきまして、私は、二十一世紀のあるべき国の姿について、有識者から成る懇談会を早急に設置し、次の世代に引き継ぐべき指針をまとめたいと考えております。国会におきましても十分御議論いただき、ともに考えていこうではありませんか。
私は、二十一世紀に向けた国政運営を、次の五つのかけ橋を基本として考えてまいります。第一に世界へのかけ橋、第二に繁栄へのかけ橋、第三に安心へのかけ橋、第四に安全へのかけ橋、第五に未来へのかけ橋であります。この五つのかけ橋に沿って、私の基本的考え方を申し述べます。この際、個別の施策について十分触れられないことをお許しいただきたいと思います。
今日の世界では、いかなる国も孤立して生きていくことはできません。まず考えるべきは、我が国の安全と繁栄が確保されること、そして、我が国が国際社会の中で尊敬され、その地位にふさわしい責任を果たしていくことであります。私は、二十一世紀に向け、世界へのかけ橋を築いてまいります。
我が国の安全保障を考えますときに、第一に、日米関係をこれまで以上に強固なものとしていかなければなりません。このために、日米防衛協力のための指針関連法案等の早期成立、承認が極めて重要であります。また、米軍の施設・区域が集中する沖縄が抱える諸問題に対し、沖縄県の理解と協力を得ながら、さらに真剣に取り組んでまいります。
次に重要なことは、米国と並ぶ地域の主要国であるロシア、中国との安定的関係を築いていくことであります。
特に、ロシアとは、あらゆる分野での関係を一層強化しながら、東京宣言、モスクワ宣言に基づいて来年までに平和条約を締結し、両国間の関係を完全に正常化するよう、引き続き全力を尽くしてまいります。
また、日中関係は、昨年の江沢民国家主席の訪日を契機に新たな段階に入りましたことを踏まえて、両国間及び国際社会における共通の目標に向けて、ともに行動する関係を発展させてまいりたいと考えております。
朝鮮半島情勢は、我が国の安全保障に大きなかかわりを持つ問題であります。
昨年秋の金大中大統領との話し合いを通じて、日韓両国は、過去との決別を果たし、今や名実ともに近くて近い国になったのであります。
一方、北朝鮮に関しましては、米国、韓国などと緊密に連携をとりながら、先般の弾道ミサイルの発射や、秘密核施設疑惑をめぐる国際的な懸念、日朝間の諸懸案の解決に向けて努力してまいります。北朝鮮がこのような問題に建設的な対応を示すのであれば、我が国として、対話と交流を通じ、関係改善を図る用意があることも申し添えます。
我が国の繁栄は、世界経済がしっかりと安定していることが前提であります。
特に、アジア経済の三分の二を占める我が国としては、アジア各国の通貨、経済の安定に積極的に貢献していくことは、みずからの責任であります。
欧州では本年より単一通貨ユーロが導入され、世界の経済、通貨体制は新しい時代を迎えました。私は、我が国経済と世界経済との相互依存関係を十分考慮しながら、世界経済の新たな枠組みやルールづくりに積極的に参画していくとともに、円の一層の国際化が実現するよう、今後とも取り組んでいかなければならないとの思いを新たにいたしております。
さらに、我が国が世界へのかけ橋を築いていく上で、国際社会への応分の貢献を行うべきことは当然であります。開発途上国に対する援助や、PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、ぜひとも国民各位の御理解をいただきながら、積極的に進めてまいりたいと考えております。
経済の繁栄は、豊かで潤いのある国民生活の実現と、国家や社会の発展にとっての基本であります。私は、内閣の命運をかけて繁栄へのかけ橋を築いてまいります。
昨年七月に総理大臣に就任以来、国会の御協力をいただきながら、喫緊の課題である金融システムの再生に取り組んでまいりました。金融再生関連二法や政府保証枠を整備し、また、貸し渋りに直面していた中小企業などに対して、思い切った対策をスピーディーに実行してまいりました。全国の中小企業の皆さんから、年末何とか苦境を乗り越えることができたなどの声が数多く寄せられたところであります。このことを、関係された方々とともに深く心に刻み、今後とも問題解決に全力を傾けてまいります。
また、昨年末に成立いたしました第三次補正予算のもとで、切れ目なく景気回復策を実施いたしており、十一年度予算におきましても、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興など、将来の発展基盤を確立する施策も十分に取り入れたものといたしております。
税制面でも、内需の拡大や我が国企業の国際競争力の強化を図るため、従来なし得なかった、思い切った内容の個人所得課税や法人課税の恒久的な減税の実施を決断するとともに、住宅ローン減税を初めとする政策減税を実施いたします。これらの減税は、九兆円を超える規模のものとなります。
また、消費税に対する国民の御理解を一層深めていただくよう、予算総則に消費税収の使途を明記し、広く国民の老後等を支える基礎年金、老人医療及び介護のための福祉予算に使う旨を明らかにしたところであります。
これらの諸施策と民間の真剣な取り組みとが相まって、平成十一年度には我が国経済の実質成長率が〇・五%程度まで回復するものと確信いたしております。我が国には、巨額の対外資産や個人貯蓄、高い技術力に支えられた製造業の底力、勤勉な国民の資質など、国際的に比較して極めて強固な基盤が存在いたします。私は、この平成十一年を経済再生元年と位置づけ、日本経済の再生に全力で取り組んでまいります。
今後、日本経済が豊かさの中の不況ともいうべき現在の状況を脱し、自律的に発展していくためには、経済構造改革の一層の推進を図り、経済の供給サイドの体質強化、とりわけ新事業を創出することにより良質な雇用の確保や生産性向上を図ることが重要であります。このため、今月末を目途に産業再生計画を策定いたします。
また、社会資本の整備は、二十一世紀先導プロジェクトの推進を核として、民間活力を最大限活用しながら、情報通信、都市、住宅、環境、教育、福祉など、我が国経済の活性化に不可欠な分野について、戦略的、重点的にこれを行ってまいります。さらに、政府全体の取り組みとして、百万人規模の雇用の創出、安定を目指し、雇用活性化総合プランなどの雇用対策を強力に推進してまいります。
我が国財政は、公債残高が三百二十七兆円にも達する見込みであるなど極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えるとき、私は、財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感いたしております。日本経済が回復軌道に乗った段階におきまして、財政、税制上の諸課題につき、中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示さなければならないと考えております。
昨年末に経済戦略会議から貴重な提言をいただきました。今後の政策運営に当たりましては、この提言をしっかり受けとめるとともに、法制度の整備を含め、国会の場におきましても十分御議論いただきたいと考えております。また昨日、私は、経済審議会に対し、新たなる時代の我が国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けた政策方針の策定について諮問いたしました。今後十年程度の間にとるべき政策の基本方針を、できる限り早くお示ししたいと考えております。
我が国経済社会が二十一世紀において一段と活力と魅力にあふれたものとなるためには、それを構成する一人一人の国民や個々の企業が、みずからの個性や独創性を生かして、積極果敢に創意工夫の実現に挑戦できる社会状況をつくらなければなりません。
そのために、規制緩和や地方分権の一層の推進、官民の役割分担の見直しなどを通じて、国民生活や事業活動に対する政府の関与のあり方を抜本的に見直し、スリム化された政府を実現することが何よりまず必要であります。今国会に提出を予定いたしております中央省庁等改革関連法案におきまして、二十一世紀の我が国にふさわしい中央省庁の具体的な姿をお示ししたいと考えております。
また、地方公共団体の自主性、自立性を高めるため、昨年決定した地方分権推進計画を踏まえた関連法案を今国会に提出するなど、地方分権の一層の推進を図り、あわせて、市町村合併を含む体制整備や、行財政改革への地方公共団体の積極的な取り組みを求めてまいります。
国民に開かれた政府の実現のため、情報公開法案の早期成立にも政府として引き続き最大限努力してまいります。
今日、日本国民の多くが、人類の古くからの願いである長寿を享受できるようになりました。その一方で、国民の中には老後の生活に対する不安も広がっております。二十一世紀の本格的な少子高齢社会に向けて、安心へのかけ橋を今から整備し、明るく活力のある我が国社会を築き上げていかなければなりません。
我が国社会には、人生五十年時代に形づくられた制度や慣習が、現在の人生八十年時代に適合するよう改革されないまま残されているものも多く見られます。日本人のライフサイクルの変化に合わせて、人生全般にわたり健康で生きがいを持って充実した生活を送れるよう、高齢者の雇用、就業の促進、高齢者が活動しやすい生活環境の整備など、社会の仕組みや人々の意識を変えていくことが必要であります。また、高齢社会の到来は多様なニーズを持った大消費者層の出現であり、経済活動に新たなチャンスを与えるものでもあります。
社会の仕組み全体を見直す中で、セーフティーネットとしての役割を担う年金や医療、介護などの社会保障制度につきましても、将来にわたり安定的に運営できるよう、構造改革を強力に推し進めていかなければなりません。必要な給付は確保しつつ、将来世代の負担を考え、社会経済の活力を維持するため、給付と負担の均衡を図るとともに、利用者の選択の拡大、民間事業者の導入なども含め、制度の効率化、合理化を図ってまいります。特に年金、医療につきましては、制度改革に取り組み、取り巻く環境の変化に対応し、信頼できる安定した制度を確立してまいります。
少子化の急激な進行も、我が国経済社会に大きな影響をもたらすものであります。私は先般、少子化への対応を考える有識者会議から、家庭や子育てに夢を持てる環境の整備は社会全体で取り組むべき課題であるとの提言を受けました。私は、この問題に適切に対応すべく、各界関係者の参加を募り国民会議を設け、国民的広がりのある取り組みを全力で進めてまいりたいと考えております。今国会には男女共同参画社会基本法案を提出いたしますが、こうした取り組みの大きな推進力になると確信いたしております。
生命や安全な生活を守ること、すなわち人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーの確立も、私たちが果たすべき重要な責務の一つであります。私は、地球全体の環境の保全から国民一人一人の安全の確保に至るまで、安全へのかけ橋を築いてまいります。
大量生産、大量消費型の社会は、大量の廃棄物を生み、地球環境に大きな負担をかけております。美しい安定した環境を守り、子孫に引き継ぎ、循環型の経済社会を築き上げることは、私たちに課せられた最も重い責任の一つであります。
この責任を果たすべく、地球環境問題への対応、省エネルギー対策、原子力や新エネルギーの開発利用の促進、実態に即したきめ細やかなリサイクルなどに努力してまいります。また、ダイオキシンの排出削減、いわゆる環境ホルモン問題への取り組み、化学物質の管理の促進と環境保全のための新たな法的枠組みの整備を行います。自然を慈しみ、資源を大切にする社会を築き、かけがえのない地球を守るため、我が国がその先頭に立って取り組んでまいらなければならないと考えております。
国民が安心して暮らせる安全な国土、社会の整備も政府が引き続き取り組むべき重要な課題であり、阪神・淡路大震災や昨年のたび重なる豪雨災害等の教訓を踏まえ、災害対策や危機管理の充実に最大限努力してまいります。
また、国の発展は良好な治安に支えられるものであり、情報通信技術を悪用したハイテク犯罪や、市民生活の安全を脅かす毒物犯罪、組織的な犯罪、さらに深刻さを増す国境を越えた薬物犯罪には、断固として対処いたしてまいりたいと思います。
さらに、最近の我が国を取り巻く国際環境の中で、我が国の安全を確保するため、安全保障や危機管理に資する情報の収集、分析、伝達等に関し、情報収集衛星の導入を初めとする対策も講じてまいりたいと思います。
二十一世紀の社会を考えるとき、今から取り組んでおくべき多くの課題に向けて、いわば未来へのかけ橋を築いていかなければなりません。
二十一世紀は、ますます科学技術が発展し、また情報化が急速に進展すると見込まれます。科学技術や情報化は将来の経済や国民の暮らしの発展の原動力でもあり、我が国として世界の最先端をリードしていく気概で、科学技術の振興や高度情報通信社会の実現に向け、官民挙げて取り組んでまいりたいと思います。一方で、コンピューター西暦二〇〇〇年の問題や、コンピューターネットワークにおける不正アクセス対策などにも適切に対応してまいります。
本格的な少子高齢社会の到来に備え、国民一人一人が将来に夢を持ち、生涯の生活に安心を実感できるような社会基盤を整備していくことが必要であります。
このため、広く快適な住空間や高齢者に優しい空間などの実現を目指し、かねてより私が提唱してまいりました生活空間倍増戦略プランを今月末を目途に取りまとめ、向こう五年間を視野に入れた、あすへの投資を推進するとともに、バリアフリー化への取り組みなど、安心への投資に重点的に取り組んでまいります。また、地域の特色を生かした魅力ある地域づくり、美しい国土づくりを進めるため、地域戦略プランや新しい全国総合開発計画を、首都機能移転問題への取り組みも含め、積極的に推進してまいります。
農林水産業、そしてそれを支える農山漁村は、食糧の生産に加え、国土、環境の保全や地域文化の継承などの面で、幅広い機能を有するものであります。こうした機能に十分目を向けながら、社会の変化や国際化が進む中で農政改革を実現するため、国内生産を基本とした食糧の安定供給の確保や、経営の安定、発展などの課題に関し、基本法を制定するなど政策の具体化に全力を挙げてまいります。
未来の担い手は、言うまでもなく若者たちであります。私たち大人が未来の担い手のためになし得ることは、二十一世紀へのさまざまなかけ橋を築いていく努力を精いっぱい行うことであるとともに、司馬遼太郎氏が説かれたように、未来の担い手が頼もしい人格を持ち、自分に厳しく、相手には優しい自己を持つ人間に育つ環境をつくっていくことであります。
私は、教育の原点は、生きる力、助け合う心、そして自然を慈しむ気持ちであると信じます。こうした点をしっかりと心に刻み、幅広い視野を養い、個性を大事にして生きるべきこと、ボランティア活動への参画等を通じた地域や社会への貢献は大変に意義深いものであること、人には多様な生き方があり、お互いにそれをたっとぶべきであること、そんな観点に立った心の教育を充実させていきたいと考えております。
また、多様な選択を可能とする学校制度、現場の自主性、自律性を尊重する特色ある学校づくり、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革の実現に向けた教育改革にも引き続き力を注いでまいります。
家庭や地域、職場などにおいて長年にわたり培われてきた道徳心や温かい人間関係、すぐれた文化や伝統などは、大切な未来への財産として、次の世代に引き継いでいくべきであります。また、すべての人々の人権が最大限に尊重される社会の実現に努力するとともに、より国民に身近な司法制度の構築にも取り組んでまいりたいと思います。
二十一世紀の足音が聞こえてまいります。新しい世紀を希望と活力のあるものにするためにも、今世紀中の課題は今世紀中に解決の道筋をつけることが必要であります。
経済を自律的な回復軌道に乗せることに、まず全力を尽くしてまいります。その上で、個人や企業が希望と誇りを持って活動のできるような環境を整え、格調の高い国家を築くために取り組んでまいります。日本は、国際社会でみずからにふさわしい貢献をしなければなりません。それと同時に、いかに安全な国家にしていくべきか。英知を結集し困難に立ち向かえば、必ずや世界が尊敬を寄せ得るような国家建設は可能だと確信いたしております。
内外の重要課題が山積する折、意思決定は速やかでなければなりません。そのためには私は安定した政治基盤をつくることが肝要と考え、先般、自由党との連立政権を樹立いたしました。当然のことながら、各党各会派との協議も従来の信頼関係の上に継続してまいる所存であります。
今や、国家の意思を決めるという重要な任務を帯びた政治そのものの真価が問われております。一内閣、一政党の利害を超越した高い見地からのスピーディーな対応が求められております。自由党との協議におきまして、副大臣制度の導入や政府委員制度の廃止などで合意いたしましたが、これは、国権の最高機関たる国会の権威を高め、国民に直結した政治に転換し、迅速な政策決定を可能にしたいとの考えからであります。
大転換期の国政のかじ取り役として、私は、微力ながら精魂を込めて、責任ある政治を実現すべく、全力を尽くしてまいります。
国民の皆様、また議員各位の御理解と御支援を心からお願い申し上げます。