データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アメリカ合衆国大統領より日本国天皇への書簡(ペルリノ齎セル大統領親翰,ペリー准将のもたらしたフィルモア米国大統領の国書)

[場所] ワシントン
[年月日] 1852年11月13日
[出典] 
[備考] 翻訳 田中明彦
[全文] 

偉大にして良き友へ。私は米国海軍最高位の士官の一人であり現在陛下の所領を訪問する司令官であるマシュー・P・ペリー准将によってこの公式書簡をお送りするものであります。

私はペリー准将に、私が陛下と陛下の政府への最高の好意を保持していること、また米国と日本が友好的関係と相互の通商関係を保持することを陛下に提案する以外の目的を持っていないことを保証するよう命じております。

米国憲法と法律は、他国の宗教的政治的問題に対するいかなる干渉も禁じています。私はペリー准将に対して、陛下の領土の平穏を動揺させかねないいかなる行為も慎むよう特に命じております。

アメリカ合衆国は大洋から大洋に達し,わがオレゴン準州とカリフォルニア州は陛下の領土に直接向き合う位置にあります。カリフォルニアから日本までは蒸気船で十八日で着くことができます。

私たちの偉大なカリフォルニア州では、銀、水銀、貴重鉱石その他の価値ある物産に加え、約6000万ドルの金が毎年産出されます。日本もまた豊かで肥沃な国家であり多くの価値ある物産を産出しています。陛下の臣民は多くの技能に熟達しています。私は、われら二国が日本と合衆国の双方に利益をもたらすため相互に貿易することを希望するものです。

陛下の政府の古くからの法律は、中国とオランダ以外との外国貿易を許可していないことを承知しております。しかしながら、世界情勢が変わり新しいいくつもの政府が形成されています。時に応じて、新しい法律を作ることが賢明ではないかと思われます。陛下の政府によるこの古い法律が最初に作られたのは過去の時のことです。

それとほぼ同じ時、新世界と呼ばれるアメリカがヨーロッパ人によって初めて発見され植民されました。長い間わずかな人々しかいませんでしたし、貧しい人々でした。しかし、いまや人口は増え、商業も大変拡大しました。そして、もし陛下がこの古来の法律を変え、両国の間に自由貿易をゆるすことになれば、双方にとって極めて有益であると思うのです。

もし陛下が外国貿易を禁ずるこの古来からの法律をすべて廃止することが安全であると納得されないとすれば、実験のために五ないし十年間停止してみることができると思います。もし、期待したほど有益でないということがわかれば、古来からの法律を復活させることができます。合衆国はしばしば外国との条約を数年に区切り、外国の望みに応じて延長したりしなかったりします。

私はペリー准将に対して、陛下にもう一つのことをお話するように命じてあります。私たちの多くの船が毎年カリフォルニアから中国に向かいます。そしてわが国の多くの人々が日本近海で捕鯨業に従事しています。荒天の時など、時にわが国の船が陛下の海岸で難破することも起こります。そのような時に、私たちの別の船が到着して連れ戻すまでの間、私たちの不幸な人々が好意をもって扱われ、彼らの所有物が保護されることを依頼し、かつ期待します。

ペリー准将は、私の命により、陛下に対して、日本帝国には大変豊富な石炭と食料が存在することを理解していると表明いたします。われわれの蒸気船は、この巨大な大洋を渡るため、多大な石炭を燃焼いたします。そして、その石炭をアメリカからはるばる持って行くのは便利なことではありません。わたしたちは、私たちの蒸気船や他の船が日本に寄港し、石炭、食料、水を補給することを許可されることを希望します。これらの供給品については、貨幣であれ、陛下の臣下の望む物であれ、代価を支払います。そして、私たちの船がこのような目的のため寄港する可能性のある帝国南部の都合のよい港を陛下が指定していただくことを要請いたします。この件については強く望みます。

友好、通商、石炭と食料の供給、そして難波したわが国民への保護、これらのみが私がぺリー准将と強力な小艦隊を陛下の有名な都市である江戸に派遣した目的です。

私は、ペリー准将に対して、陛下がわずかばかりの贈り物をお受け取りいただけるようお願いするよう命じました。それらは特に大きな価値のあるものではありませんが、それらのいくつかは合衆国で製造された物品の見本ともなりましょう。これらは、私たちの誠実かつ敬意にみちた友好のあかしとなることを意図されたものです。

陛下に、全能の神の偉大で神聖なご加護がありますように

ここに証として合衆国の偉大な印章を捺せしめ、私の名前を署名する、わが政府の存するアメリカ、ワシントン市にて。1852年11月13日。

(捺印)

あなたの良き友
ミラード・フィルモア

大統領とともに
エドワード・エヴァレット
国務長官