[文書名] 帝國政府と英吉利人「レー」との間に締結したる鐵道建設資金壹百萬磅調達に關する契約書(帝国政府とイギリス人「レー」との間に締結したる鉄道建設資金百万ポンド調達に関する契約)
一方ニハ
日本天皇陛下ノ政府一方ニハ英吉利士民バース、ヲルドル爵ホラシヲ、ネルソン、レイト本日左件ヲ契約シタリ
第一 ホラシヲ、ネルソン、レイ、其相續人及其遺言ヲ取行フ者等日本政府ニ英吉利通用貨幣一百萬ポンド、ステルリングノ金高ヲ左ノ約定ニシテ借シ備ント契約ス
第二 ホラシヲ、ネルソン、レイ其相續人及ヒ其遺言ヲ取行フ者等千八百七十年第五月三十一日ニ右金高ヲ龍頓府ニ備へ其金高ヲ日本政府ノ爲二横濱ニ送リ且其金高ヲ千八百七十年第七月三十一日ヨリ遲カラサル樣横濱ニ備フ可シト約定ス又ホラシヲ、ネルソン、レイ其相續人及ヒ其遺言ヲ取行フ者等墨是可ドルラルヲ龍頓府ヨリ横濱迄送ルニ付タル船賃災失請合料等ノ如キ費用ヲ拂フ可シト雖モ墨是可ドルラルヨリモ他ノ品物ヲ横濱迄送ル可キ費用ハ日本政府ニテ之レヲ拂フ可シト約定ス
第三 日本政府右ホラシヲ、ネルソン、レイ其相續人、其遺言ヲ取行フ者、其金高預リ人其名代人一人又ハ數人ト借リ金高拂戾シノ事及六ケ月每ニ拂フ可キ每年一割二分ノ利分ノ事ニ付左件ヲ約定ス
借金ノ拂戾シ方ハ十二ケ年ノ內壹ケ年拾萬ポンド、ステルリングツツノ割合ニテ爲シ第三ケ年目ノ終ヨリ之ヲ始ム可シ
其借金拂戾ノ年賦金及ヒ其利分龍頓ニテホラシヲ、ネルソン、レイ其相續人、其遺言取行人、其金高預リ人其名代人一人又ハ數人ノ手ニ渡ル可キ日附左ノ如シ
六萬ポンド 利分 千八百七十一年第一月二十七日
六萬ポンド 同 千八百七十一年第七月二十七日
六萬ポンド 同 千八百七十二年第一月二十七日
六萬ポンド 同 千八百七十二年第七月二十七日
六萬ポンド 同 千八百七十三年第一月二十七日
六萬ポンド 同 千八百七十三年第七月二十七日
五萬四干ポンド 同 千八百七十四年第一月二十七日
五萬四千ポンド 同 千八百七十四年第七月二十七日
四萬八千ポンド 同 千八百七十五年第一月二十七日
四萬八千ポンド 同 千八百七十五年第七月二十七日
四萬二千ポンド 同 千八百七十六年第一月二十七日
四萬二千ポンド 同 千八百七十六年第七月二十七日
三萬六千ポンド 同 千八百七十七年第一月二十七日
三萬六千ポンド 同 千八百七十七年第七月二十七日
三萬ポンド 同 千八百七十八年第一月二十七日
三萬ポンド 同 千八百七十八年第七月二十七日
二萬四千ポンド 同 千八百七十九年第一月二十七日
二萬四千ポンド 同 千八百七十九年第七月二十七日
一萬八千ポンド 同 千八百八十年第一月二十七日
一萬八千ポンド 同 千八百八十年第七月二十七日
一萬二千ポンド 同 千八百八十一年第一月二十七日
一萬二千ポンド 同 千八百八十一年第七月二十七日
六千ポンド 同 千八百八十二年第一月二十七日
六千ポンド 同 千八百八十二年第七月二十七日
拾萬ポンド 借シ金拂戾ノ年賦 千八百七十三年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百七十四年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百七十五年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百七十六年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百七十七年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百七十八年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百七十九年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百八十年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百八十一年第七月二十七日
拾萬ポンド 同 千八百八十二年第七月二十七日
右利分ノ拂方及借シ金年賦拂方ハ銅鉛水銀及其外ホラシヲ、ネルソン、レイノ日本ノ事ヲ取扱フ爲ニ任シタル名代人ノ好シトス可キ品物ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
此金類又ハ其外ノ品物ハホラシヲ、ネルソン、レイノ名代人吟味ノ上之ヲ船積シ其者ヨリホラシヲ、ネルソン、レイノ時々特ニ任ス可キ支那ニ在ル名代人等ニ向ケ之ヲ送ル可シ
支那ニ在ル名代人等右ノ金類又ハ其外ノ品物ヲ賣拂フ事二付當然ノ世給料*1*及其外ノ費用ヲ掛ケ右ノ金類又ハ其外ノ品物ヲ賣拂ヒタルヨリシテ得タル正ノ利益ヲ龍頓バンク手形トシテホラシヲ、ネルソン、レイ、其相續人、其遺言取行人、其金高預リ人、其名代人一人又ハ數人*2*ヲ渡ス可シ
支那ニ在ル名代人等ハ日本ニ在ル名代人ノ紹介ニテ日本政府へ右賣拂方及渡方ノ正算ヲ示ス可シ又ホラシヲ、ネルソン、レイ、其相續人其遭言取行人、其金高預リ人其名代人一人又ハ數人ヨリ日本政府へ其支那ヨリ受取リタル高ノ正算ヲ示ス可シ
日本政府ハ右ノ支那ニ在ル名代人等賣拂ヲナシテ龍頓へ其利益ヲ送ルノ暇アルニ遲カラサル樣金類又ハ其外ノ品物ヲ船積セシメ支那ニ在ル名代人等ヨリ其利ヲ龍頓ニ送ルノ期日前表ニ記シタル日附ヨリモ遲クナラサル樣ナス可シ
第四 日本政府トホラシヲ、ネルソン、レイ、其相續人、其遺言取行人、其金高預リ人、其名代人一人又ハ數人ト約定シテ曰クホラシヲ、ネルソン、レイ、其相續人、其遺言取行人、其金高預リ人、其名代人一人又ハ數人日本ノ事ヲ取扱フ爲二銅、鉛、水銀又ハ其外ノ品物ヲ吟味シテ船積スルニ相當ナリト思ヘル名代人一人又ハ數人ヲ任ス可シ且其名代人等へ謝金トシテ上海ニ在ル名代人船積シタル右ノ金類又ハ其外ノ品物ノ價ニ一分(百分ノ一ヲ云フ)ノ增シ費用ヲ掛ク可シ
第五 日本政府何レノ時ナリトモ其好シト思ヘル時ハ借金利分拂方及元金年賦拂方ヲ爲スニ付キ品物ヲ船積シテ支那ニ送ル事ニ代へ龍頓バンクノ手形ニテ拂方ヲ爲ス事勝手タル可シ但シ其バンク手形ハ先ツホラシヲ、ネルソン、レイ其相續人、其遺言取行人其金高預リ人其名代人一人又ハ數人ヨリ任シタル日本ニ在ル名代人ノ手ニ渡シ其名代人ノ承諾ヲ得可シ○日本政府バンク手形ニテ爲シタル拂方ニハ日本ニ在ル右ノ名代人ノ爲ノ世話料ヲ掛ル事無カル可シ
第六 此約定ノ通リ相違ナク拂方ヲ行フ可キ請合トシテ日本政府ホラシヲ、ネルソン、レイ其相續人、其遺言取行人、其金高預リ人、其名代人一人又ハ數人ニ千八百七十年第八月一日ヨリ日本領地內ニテ取立ツ可キ輸入輸出物ノ租稅幷ニ造營ス可キ數線ノ鐵道ニテ旅客及品物運送ヨリ得可キ正請取金ヲ渡シ任セ與フ可シ其鐵道ノ一線ハ江戶ヨリ大阪ヲ通リテ(又ハ相當ナル造營者ノ決定ニヨリテハ京都ヲ通リテ)兵庫ニ至リ別ニ横濱ニ至ル枝線アリ又一線ハ琵琶湖ヨリ鶴賀港二至ル可シ
其證トシテ伊達民部卿大隈民部大輔伊藤大藏少輔日本政府ノ爲メニ明治二年十一月十一日即チ千八百六十九年第十二月十三日此證書ヲ二通認メ是レニ我印ヲ押シ姓名ヲ自記シタリ
*1* (話カ)
*2* (ニカ)