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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海關稅則改訂着手方に關する大隈大藏卿照會(海関税則改訂着手方に関する大隈大蔵卿照会)

[場所] 
[年月日] 1875年7月23日
[出典] 日本外交年表竝主要文書上巻,61‐62頁.
[備考] 
[全文]

明治八年七月廿三日 同廿四日受付

大藏卿 大隈重信

外務卿 寺島宗則殿

外交ノ條約改正ノ期ハ今ヲ距ル四年前卽チ明治五年七月(西洋一千八百七十二年ナリ)ニアリ然ルニ爾後遷延數年ノ星霜ヲ經ルモ猶未タ改正スル能ハス其間已ムヲ得サルノ事故アリトイヘトモ之ヲ要スルニ因循苟且曠シク歲月ヲ費スノミ然ラハ則チ又何ノ日ヲ遲テ其改正ヲ期スヘキ是レ實ニ國家ノ命脈ニ關スル所ノ最大事件ナレハ決シテ之ヲ度外ニ措クヘカラサルヤ無論ナリ而シテ其海關稅則ノ如キハ其得失ニヨリ國家ノ安危貿易ノ盛衰ニ關渉スルヤ是レ又大ナリ故ニ速ニ改定シ以テ其大權ヲ我ニ全收セスンハ有ルヘカラサル一大主要ノ急務ナリ今日ニシテ改メス荏苒歲月ヲ經過セハ天下無數ノ人民ヲシテ無限ノ禍毒ヲ蒙ラシメンノミ夫レ下ノ關償金ノ事ハ旣ニ辨了セリ故ニ茶生絲ノ如キハ素ヨリ輪出ノ稅額ヲ增ス可ク燈明臺ノ如キモ各國ノ定例ニ傚ヒ亦宜シク其稅ヲ課スヘシ就中新條約ノ如キハ之ヲ舊條約ニ比スレハ其不利タルヤ言ヲ待タス素ヨリ一時ノ結約ナルヲ以テ之ヲ舊ニ復スルハ亦難カラス然リトイヘトモ依然置テ手ヲ下サヽルモノハ他ナシ條約改正ノ期ヲ待テ將ニ大ニ改革釐正シテ其大權ヲ收有スル事有ントスレハナリ然ラハ則チ條約改正ノ急務タル亦辨ヲ費スヲ待タサルヘシ然リトイヘトモ今速ニ條約ノ改正ニ着手スル能ハスンハ不如宜シク先ツ海關稅則改正ノ大本ヲ立テ其大權ヲ收有シ以テ多小ノ弊害ヲ除カンニハ故ニ條約改正ノ大本ヲ立テ稅則ノ改定ヲ爲サヽレハ其獨立ノ國權ヲ保ツヘカラサル所以旣ニ再度之ヲ正院ニ上申ストイヘトモ今日ニ至ルマテ何等ノ下命ヲ得ス而シテ其弊害日ニ甚シク必ス不測ノ大患ヲ致スヤ決シテ知ルヘシ今又更ニ前議ノ旨趣ヲ擧ケ以テ之ヲ上申セントス然レトモ此レ特リ當省ノ負荷ノミニアラス殊ニ外交事務ノ如キハ專ラ貴省ノ擔任スル所今日國家多少ノ弊害ヲ受クル恐クハ皆ナ是レ條約ノ改正ヲ爲サヽルヨリ致ス所ニシテ其利害得失實地ノ形態元ヨリ貴省ノヨク熟知スル所ナリ然ラハ則チ貴省亦其責ニ任セサルヲ得ス請フ其國家ノ大本ヲ確立スル所以ノ方策ヲ設ケ以テ廟堂ニ建議セラレン事ヲ當省ニ於テモ前條ノ旨趣不日之ヲ上申スヘシ如此最大事件ナレハ容易ニ其下命ヲ得ヘカラズ然リトイヘトモ若シ此ノ改正ノ議ヲシテ斷然決スル能ハサラシメハ是レ實ニ國家ノ大事ナルヲ以テ貴省ニ於テモ必ス其力ヲ此議ノ決定ニ竭サレン事ヲ企望ス仍テ此段及照會候也

明治八年七月廿三日