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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本國合衆國間現存條約中或箇條を改定し且兩國の通商を增進する爲めの約書(吉田・エヴァーツ条約)

[場所] ワシントンDC
[年月日] 1878年7月25日
[出典] 舊條約彙纂,第一卷第一部,外務省條約局,95‐100頁.
[備考] 
[全文]

明治十一年(千八百七十八年)七月廿五日華盛頓府ニ於テ調印

明治十二年(千八百七十九年)四月八日同府ニ於テ本書交換

日本國 皇帝陛下及ひ亞米利加合衆國 大統領は從來幸に兩國間に現存する所の親睦なる交際を維持せんことを希望し且追加の約書に因て庶幾くは尙一層其交誼を固くし兩國間の貿易を擴張し且堅實ならしめんとす其爲め雙方に於て各自の全權委員を選ふ卽ち

日本國皇帝陛下は亞米利加合衆國に駐劄する特命全權公使從四位勳三等吉田淸成合衆國大統領は國務卿ウヰリアム、マツキスウヱル、ヱウワーツ右雙方の 全權委員は各其委任狀 を相示し雙方其確實正當なるを識認して左の各條を協議決定せり

 第一條

慶應二年五月十三日卽ち西曆一千八百六十六年六月廿五日一方は日本國委員他の一方は亞米利加合衆國、大貌利太泥亞、佛蘭西、和蘭、の委員江戶に於て調印したる改稅約書並に右約書中に載せたる輸出入品運上目錄及借庫規則は日本と合衆國との間に於ては茲に之を廢棄し而して現に其施行を止むるは此約書の第十條に揭載する約束實施の時に於てすへし又江戶に於て取結ひたる安政五年卽西曆一千八百五十八年條約の中港海關稅及ひ諸稅の諸規則に關する條款並に右安政五年卽ち西曆一千八百五十八年の條約に添へたる貿易章程も悉皆之を廢棄すへし

此約書實施の日より日本海關稅並に其他の諸稅を自由に賦課し及ひ日本開港場外國貿易に關する諸規則制定の權利は獨り日本政府に屬することを合衆國は識認すへし

 第二條

然れとも合衆國より日本に輸入する諸物品に課する稅額は他の外國より輸入する同種類の物品に課するものに超過す可からす而して若日本政府に於て其領地內へ或物品の輸入若くは輸出を禁止することあるときは合衆國の產物船舶或は人民に對し他に異なる所の禁止を爲さ〃る可し

 第三條

合衆國は日本に向て輸出する物品に輸出稅を課せさるを以て此約書實施の後は日本に於ても亦合衆國へ向け輸出する物品に輸出稅を課せさるへし

 第四條

安政五年卽ち西曆一千八百五十八年の條約第六條第一節卽ち最初の三句現存する間は右現存條約の違犯若くは此約書に因て日本政府に於て時々制定する海關稅借庫及ひ港の諸規則違犯に關する沒入品或は罰金に付日本政府の要求は悉く合衆國領事裁判所に訟ふ可し而して該國領事は各訴訟を公正に審按し右條約及ひ諸規則の條款に照らし之を裁斷す可し而して右沒入品或は罰金は日本官員に交付すへし

 第五條

日本沿海貿易統轄の權利は獨り日本政府のみに屬する者たることは固より雙方の識認する所たるを以て此に之を明言す

 第六條

然れとも日本開港場に來着する合衆國の船舶は日本海關稅則に隨ひ其舶載する物品中幾分たりとも其望に任せ陸揚するを得へし而して其船舶は右陸揚して積荷目錄中に其事由を記載したる部分の外は輸入稅其他一切の諸稅を拂わすして其殘餘の物品を載せ出港するを得へし右船舶は其後他の日本諸開港場に航行し其望に依り殘りの物品を右諸開港場に陸揚するを得へし然れとも凡て船舶のみに對し課する諸稅諸費は最初其積荷の幾部分を陸揚する港のみに於て拂ふへし而して該船舶其後引續き航海して到る所の港に於ては其地方港內諸稅のみを入港の爲めに拂ふへし

 第七條

合衆國は上文第一條に約するか如く日本輪出入品運上目錄運上規則及ひ其他の諸規則に關し讓與する所あるを以て日本政府は互相の理に基き左の事を讓與す卽ち從前開港場の外に更に二港を此約書實施の日より合衆國人民並に商船來往貿易の爲めに開く可し

 但し二港中一港は下の關たるへし而して他の一港は此後雙方協議の上決定すへし

 第八條

兩國間に結へる安政五年卽ち西曆一千八百五十八年の條約第五條は必用ならすと認むるを以て右條款は此約書實施の日より發棄すへし

 第九條

從來兩國間に結約したる條約或は約書の條款中今茲に廢棄を明揭せさるものにして此約書の條款に抵觸するものは悉皆廢棄す可し且つ此約書は兩國間現存條約の一部分と爲す可し又右條約中此約書に因て變更若くは廢棄せさる部分の重修並に此約書の重修は此後雙方の中より要求するを得へし又此約書並に此約書に因て變更する所の右條約は其全部或は其部分の重修を爲す時に臨み廢止若くは年限を約定する迄は引續き之を施行す可し

 第十條

此約書は日本と他の締盟各國と現實此約書と均しき所の約書或は現存條約の重修を取結ひ右現行の時に至り實施すヘし

此約書は批准を要するものとす而して其交換は此約書調印の日より十五ケ月以內に成る可く速に華盛頓府に於てすへし

右の證として上文記載の全權委員各自から其名を署し印を鈐す

 華盛頓府に於て

  明治十一年七月二十五日

  西曆一千八百七十八年七月廿五日

   吉田淸成 印

   ウヰリアム、ヱム、ヱウワー 印