[文書名] 国防所要兵力
日本帝国ノ国防方針ヲ遂行スル為メニハ 国防ニ要スル兵力ヲ別冊ノ如ク整備セラルルヲ以テ適当ト認ム
(別冊)
陸軍
曩ニ陸軍大臣ト共ニ内奏セシ平時常設ノ二十五師団完成後十七年(兵役年限)ニ於テ戦時整備シ得へキ帝国陸軍ノ諸部隊概ネ左ノ如シ
一 野戦部隊
一 軍司令部 若干
二 野戦師団 二十五個
三 予備師団 二十五個
四 騎兵旅団 五個
五 野戦砲兵旅団 六個
六 山砲聯隊 六個
七 重砲兵旅団 四個
八 野戰電信隊 若干
九 右ニ適当スル兵站諸部隊及所要ノ重架橋縦列
二 攻城部隊
攻城ノ為メニ要スル諸機関及徒歩砲兵隊 若干
三 後備部隊
一 後備歩兵大隊 百個
二 後備騎兵中隊 二十五個
三 後備野戦砲兵中隊(野砲) 二十五個
四 後備工兵中隊 二十五個
四 守備部隊
一 要塞部隊 十五個
二 対馬警備隊
三 台湾守備隊
四 樺太守備隊
五 特種部隊
一 鉄道旅団 一個
二 気球隊 一個
三 軍楽隊 若干
四 鉄道船舶輸送ニ関スル諸部 及野戦軍ノ被服糧食等ノ補給ヲ管掌スル諸廠
六 留守部隊
野戦部隊及之ニ付属スル諸機関ニ適応スル者
七 国民兵隊
国民兵隊ノ種類及兵力ハ臨時之ヲ定メラルルモノトス
以上ノ兵力ハ国防上必須ノモノナルト雖モ 財政ノ現状ハ
一時ニ此兵力ノ充実ニ着手スル能ハサルノ事情アリ 因テ曩ニ御裁可ヲ得タル如ク 先ツ明治四十年度ヨリ十九箇師団及之ニ伴フ諸部隊ノ整備ニ着手シ 残余六箇師団ノ常設ハ他日財政緩和スルノ時ヲ待テ整備ニ着手シ 以テ国防ニ要スル兵力充実ノ完成ヲ期セントス 而シテ此十九箇師団完成後十七年(兵役年限)ニ於テ 戦時整備シ得ヘキ帝国陸軍ノ諸部隊概ネ左ノ如シ
一 野戦部隊 *
一 軍司令部 *
二 野戦師団 *
三 予備師団 *
四 騎兵旅団 *
五 野戦砲兵旅団 *
六 山砲聯隊 *
七 重砲兵旅団 *
八 野戦電信隊 *[注 *印記載なし]
九 右ニ適当スル兵站諸部隊及所要ノ重架橋縦列
二 攻城部隊
攻城ノ為メニ要スル諸機関及徒歩砲兵隊 若干
三 後備部隊
一 後備歩兵大隊 七十六個
二 後備騎兵中隊 十九個
三 後備野戦砲兵中隊(野砲) 十九個
四 後備工兵中隊 十九個
四 守備部隊
一 要塞部隊 十五個
二 対馬警備隊
三 台湾守備隊
四 樺太守備隊
五 特種部隊
一 鉄道旅団 一個
二 気球隊 一個
三 軍楽隊 若干
四 鉄道船舶輸送ニ関スル諸部 及野戦軍ノ被服糧食等ノ補給ヲ管掌スル諸廠
六 留守部隊
野戦部隊及之ニ付属スル諸機関ニ適応スルモノ
七 国民兵隊
国民兵隊ノ種類及兵力ハ臨時之ヲ定メラルルモノトス
海軍
一 帝国ノ国防方針ニ従ヒ 海軍用兵上最重要視スヘキ想定敵国ニ対シ 東洋ニ在テ攻勢ヲ取ランカ為ニハ 我海軍ハ常ニ最新式即チ最精鋭ナル一艦隊ヲ備ヘサルヘカラス 而シテ其兵力ノ最低限ハ左ノ如クナルヲ要ス
戦艦 凡二万屯 八隻
装甲巡洋艦 凡一万八千屯 八隻
以上ヲ艦隊ノ主幹トシ 其作戦機能ヲ完カラシムルニ要スル他ノ巡洋艦及ヒ大小駆逐艦等各若干隻ヲ付ス
右兵力ヲ国防上ノ第一線艦隊トス
二 列国海軍ノ趨勢、製造力及技術ノ進歩等ニ鑑ミ 且ツ已徃ノ経験ニ徴シ 装甲艦ノ有効艦齢二十五ヶ年ヲ三期ニ区分シ 竣工後八年迄ヲ第一期 第九年ヨリ第十六年迄ヲ第二期 第十七年以後第二十五年迄ヲ第三期トシ 而シテ其第一期ニ属スルモノヲ以テ第一線艦隊ノ編組二充ツルモノトス
第二期及第三期艦齢当ル軍艦ヲ以テ予備隊ヲ編制*1*シ 必要ニ応シ或ハ第一線艦隊ノ増援ニ充テ 或ハ局地ノ防禦警備等ニ任セシムルモノトス
局地ノ防禦ニ充ツヘキ小艦艇ノ如キハ 艦齢第二期 第三期ニ属スルモノヲ以テスルノ外 尚ホ多少新造補充ヲ要スルコトアルヘシ
三 軍港、要港、防禦港、主要軍需品ノ製造所其他諸般ノ設備ハ凡テ 前記第一第二項ノ要旨ニ伴フ如ク施設セラルルヲ要ス
四 河川溯航用ノ砲艦並漁業保護ヲ目的トスル軍艦ノ製造ノ如キハ 主トシテ政略上必要ニ基キ決定セラルヘキモノトス
(附言) 本案ハ列国海軍情勢ノ変遷ニ応ジ改定ヲ要スルコトアルヘシ
御参考
帝国海軍ノ主力ハ 現在ノ軍艦、現ニ製造中ニ属スルモノ及既ニ製造ヲ予定セルモノヲ悉ク計上スルトキハ 明治四十六年度ノ終リニ於テ概ネ左ノ如クナルヘシ
戦艦 拾六隻
内
第一期 五隻
第二期 十隻
第三期 一隻
装甲巡洋艦 拾七隻
内
第一期 七隻
但シ内三隻ハ約一万四千屯
第二期 十隻
{*1* 参謀本部総務部庶務課用の筆写史料によると「編組」とある。}