[文書名] 日露漁業協約及附屬議定書(日露漁業協約及附属議定書)
明治四十年七月二十八日聖彼得堡ニ於テ調印(佛文)
同年九月九日批准
同年同月同日東京ニ於テ批准書交換
同年同月十一日公付
日本國皇帝陛下及全露西亞國皇帝陛下ハ明治三十八年九月五日卽千九百五年八月二十三日(九月五日)「ポーツマス」ニ於テ締結セラレタル講和條約第十一條ニ依リ一ノ漁業協約ヲ締結セムカ爲日本國皇帝陛下ハ露西亞國駐劄特命全權公使法學博士本野一郞ヲ全露西亞國皇帝陛下ハ外務大臣「メートル、ド、ラ、クール」「アレキサンドル、イズヴォルスキー」、外務次官「コンセイエ、プリヴェ」「コンスタンチン、グバストフ」ヲ各其ノ全權委員ニ任命セリ因テ兩國全權委員ハ互ニ其ノ委任狀ヲ示シ其ノ良好妥當ナルヲ認メ左ノ諸條ヲ協議決定セリ
第一條
魚類及水產物捕獲製造ノ權利
露西亞帝國政府ハ本協約ノ規定ニ依リ河川及入江(インレット)ヲ除キ日本海、「オコーツク」海及「ベーリング」海ニ瀕スル露西亞國沿岸ニ於テ膃肭獸及臘虎以外ノ一切ノ魚類及水產物ヲ捕獲、採取及製造スルノ權利ヲ日本國臣民ニ許與ス前記入江ハ本協約附屬議定書第一條ニ之ヲ列擧ス
第二條
漁區貸下ノ方法及右ニ關スル內國待遇
日本國臣民ハ魚類及水產物ノ捕獲及製造ノ目的ヲ以テ特ニ設ケラレタル水陸兩面ニ亙ル漁區ニ於テ魚類及水產物ノ捕獲及製造ニ從事スルコトヲ得ヘシ前記漁區ノ貸下ハ其ノ短期タルト長期タルトヲ問ハス總テ競賣ノ方法ニ依テ之ヲ爲シ日本國臣民ト露西亞國臣民トノ間ニ何等ノ區別ヲ設クルコトナク該事項ニ關シ日本國臣民ハ本協約第一條ニ特定シタル各方面ニ於テ漁區ノ貸下ヲ受ケタル露西亞國臣民ト同一ノ權利ヲ享有スヘシ
前記競賣ノ爲メニ指定シタル時日及場所竝各種漁區ノ貸下ニ關シ必要ナル細目ハ競賣施行ヨリ少クトモ二箇月前浦潮斯德駐在日本國領事へ公然通牒セラルヘシ
特別免許狀ノ效力
特別ノ免許狀ヲ備フル船舶ニ在ル日本國臣民ハ鯨、鱈其ノ他特定漁區內ニ於テ捕獲スルコト能ハサル一切ノ魚類及水產物ノ漁獲ニ從事スルコトヲ得ヘシ
第三條
岸地ノ使用權
本協約第二條ノ規定ニ依リ漁區ノ貸下ヲ受ケタル日本國臣民ハ其ノ漁區ノ限界內ニ於テ漁業ニ從事スルカ爲貸與セラレタル岸地ヲ自由ニ使用スルノ權利ヲ有スヘシ前記日本國臣民ハ該岸地ニ於テ漁船及漁網ニ必要ナル修繕ヲ加へ、漁網ヲ曳キ、魚類及水產物ヲ揚陸シ竝漁獲物及採取物ヲ鹽漬シ、乾燥シ、製造シ又ハ貯藏スルコトヲ得ヘシ且此等ノ目的ヲ以テ建物、倉庫、小屋及乾燥場ヲ自由ニ築造シ又ハ移轉スルコトヲ得ヘシ
第四條
漁業權其ノ他ニ對スル課稅ニ關スル內國待遇
本協約第一條ニ特定シタル各方面ニ於テ漁區ノ貸下ヲ受ケタル日本國臣民及露西亞國臣民ハ漁業ヲ爲シ且捕獲物ヲ製造スル權利竝漁業ニ必要ナル動產及不動產ニ對シ賦課シ又ハ賦課セラルルコトアルヘキ一切ノ公課ニ關シテ均等ノ取扱ヲ享クヘシ
第五條
日本國ニ輸出スル魚類及水產物ノ免稅
露西亞帝國政府ハ沿海洲及黑龍江洲ニ於テ捕獲又ハ採取セラレタル魚類及水產物ニ對シ此等ノ魚類及水產物カ日本國ニ輸出セラルヘキモノナルトキハ其ノ製造セラレタルト否トヲ問ハス何等ノ稅ヲ課スルコトナカルヘシ
第六條
漁獲及製造ニ使用スル人員ノ國籍
本協約第一條ニ特定セラレタル各方面ニ於テ日本國臣民カ魚類及水產物ノ漁獲又ハ製造ノ爲使用スル人員ノ國籍ニ關シテハ何等ノ制限ヲ設クルコトナカルヘシ
第七條
魚類等ノ製造方法ノ制限ニ關スル內國待遇
魚類及水產物ノ製造方法ニ關シテハ露西亞帝國政府ハ本協約第一條ニ特定セラレタル各方面ニ於テ漁區ノ貸下ヲ受ケタル露西亞國臣民ニ加ヘサル特別ノ制限ヲ日本國臣民ニ加フルコトナキヲ約ス
第八條
漁業權取得者ノ日本國ト漁場トノ直接往復
漁業權ヲ取得シタル日本國臣民ハ日本國ニ於テ當該露西亞國領事ノ發シタル證明書及日本國官憲ノ發シタル健康證書ヲ有スル船舶ヲ以テ日本國ト漁場トノ間ニ直接往復スルコトヲ得ヘシ
漁業權取得者ノ各漁場間ノ運搬權
前記船舶ハ何等ノ公課ヲ課セラルルコトナク一ノ漁場ヨリ他ノ漁場ヘ漁業上必要ナル人員、物件竝漁獲物及採取物ヲ運搬スルコトヲ得ヘシ但シ前記船舶ハ他ノ一切ノ關係ニ於テハ沿岸航海ニ關スル露西亞國ノ現行又ハ將來ノ法律ヲ遵守スヘキモノトス
第九條
魚類ノ養殖保護等ノ法令ニ關スル內國待遇
本協約第一條ニ特定シタル各方面ニ於テ漁區ノ貸下ヲ受ケタル日本國臣民及露西亞國臣民ハ魚類ノ養殖方法、魚類及水產物ノ保護、此等產業ニ關スル取締竝漁業上他ノ一切ノ事項ニ關スル現行又ハ將來ノ法律、命令及規則ニ關シ均等ノ取扱ヲ受クヘシ
前記法律及命令カ新ニ制定セラレタルトキハ其ノ施行ヨリ少クトモ六箇月前日本國政府ニ通牒セラルヘシ
前記規則カ新ニ發布セラレタルトキハ其ノ施行ヨリ少クトモ二箇月前浦潮欺德駐在日本國領事ニ通牒セラルヘシ
第十條
日本漁業者ノ內國待遇
本協約ニ於テ特ニ規定セサル事項ト雖本協約第一條ニ特定シタル各方面ニ於ケル漁業ニ關係スルモノニ付テハ日本國臣民ハ前記各方面ニ於テ漁區ノ貸下ヲ受ケタル露西亞國臣民ト同一ノ待遇ヲ享クヘシ
第十一條
特定方面以外ノ借區內ニ於ケル魚類等ノ製造ニ關スル最惠國待遇
日本國臣民ハ本協約第一條ニ特定シタル各方面以外ノ借區內ニ於テ一切ノ魚類及水產物ノ製造ニ從事スルコトヲ得ヘシ但シ此ノ場合ニ於テハ霞{前1文字ママ}西亞國在留一切ノ外國人ニ適用セラルル現行又ハ將來ノ法律、命令及規則ヲ遵守スヘシ
第十二條
沿海洲及黑龍江洲ノ漁獲物ニ對スル輸入稅ノ免除
日本帝國政府ハ露西亞帝國政府カ本協約ニ依リ日本國臣民ニ對シ漁業權ヲ許與シタルコトニ鑑ミ沿海洲及黑龍江洲ニ於テ漁獲又ハ採取シタル魚類及水產物ニ對シ其ノ製造セラレタルト否トヲ問ハス何等ノ輸入稅ヲ課スルコトナキヲ約ス
第十三條
本協約ノ有效期間
本協約ハ十二箇年間效力ヲ有スヘク每十二箇年ノ終ニ於テ兩締約國相互ノ合意ニ依リ之ヲ更新又ハ改正スヘキモノトス
第十四條
本協約ノ批准
本協約ハ批准セラルヘシ而シテ其ノ批准書ハ成ルヘク速ニ且如何ナル場合ニ於テモ調印後四箇月以內ニ東京ニ於テ交換セラルヘシ
右證據トシテ兩國全權委員ハ本協約ニ記名調印スルモノナリ
明治四十年七月二十八日卽千九百七年七月十五日(二十八日)聖彼得堡ニ於テ之ヲ作ル
本野一郞<印>
イズヴォルスキー<印>
グバストフ<印>
{<>は原文では丸い囲み線}
同上附屬議定書
日本國皇帝陛下ノ政府及全露西亞國皇帝陛下ノ政府ハ本日調印シタル漁業協約ヨリ生スル或種ノ問題ヲ決定スルノ必要アルヲ認メタルニ因リ兩國全權委員ハ左ノ諸條ヲ協議決定セリ
第一條
除外入江ノ名稱
本日調印シタル漁業協約第一條ニ記載シタル例外トナルヘキ入江(インレット)ハ左ノ如シ
一 「ラウレンチイヤ」灣(「プナウグン」岬ト「カルギラク」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
二 「メチグメンスカヤ」灣
三 「コニアム」灣一名「ペンケグネイ」灣(「ネチホノン」岬ト「カラブ、ビーク」トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
四 「アボレエシエフ」灣一名「コロガン」灣
五 「ルメレート」灣
六 「プロヴェデエーニエ」灣(「レソフスキー」岬ト「ルイサヤ、ガラワ」トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
七 「クレスト」灣(「メエエチケン」岬ト同緯線ニ至ル迄)
八 「アナドイル」灣(「ワシィリヤ」岬ト「グエック」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
九 「パアウエル」灣
十 「シリューポチナヤ、ガーワニ」
十一 「チェレニエ」湖
十二 「シエスチフウトーオエ」湖
十三 「バロン、コルフ」灣ノ北部
十四 「カラーガ」港
十五 「ベチェヴヰンスカヤ」灣{ヰは原文では捨て仮名}
十六 「アヴアチンスカヤ」灣(「ベヅイミヤンヌイ」岬ト「ダルニー」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
十七 「ペンヂンスカヤ」灣(「マメート」岬ト同緯線ニ至ル迄)
十八 「コンスタンチン」太公灣
十九 「ニコライ」灣(「ラムスドルフ」岬ト「グロテ」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
二十 「スチヤスチヤ」灣
二十一 「バイカル」灣(「チャウノ」岬ト「ヴヰトウトフ」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄){ヰは原文では捨て仮名}
二十二 「ヌイスキー」灣
二十三 「ナビリスキー」灣
二十四 「クレストーワヤ」灣
二十五 「スタルク」灣
二十六 「ワニン」灣(「ヴエッセリー」岬「トブールニー」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
二十七 「イムペラートルスカヤ、ガーワニ」(「ミリウチン」岬ト「プチャーチン」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
二十八 「テルネイ」灣(「ストラーシヌイ」岬ト同子午線ニ至ル迄)
二十九 「ウラヂーミル」灣(「バリユーゼク」岬ト「バトフスキー」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
三十 「プレオブラジエーニエ」灣ノ北東部ニ在ル小ナル入江(「マトヴエーエフ」岬ト同子午線ニ至ル迄)
前記例外ハ露西亞國領水ノ範圍內ニ於テノミ其ノ效力ヲ及ホスヘキモノタルハ別ニ言ヲ俟タサルモノトス
オコーツク海北岸ニ於ケル入江ノ定議
「ポドカゲルナヤ」河口ヨリ「アヤン」港ニ至ル「オコーツク」海ノ北岸ニ於テハ「ペンヂンスカヤ」灣(第十七條參照)ヲ除キ前記例外トナルヘキ入江(インレット)ハ下ノ定義ニ從ヒ之ヲ決定スヘシ卽陸地ニ灣入セル部分ノ長(「タルウェッグ」ノ長)江口ノ幅ノ三倍以上ニ及フ灣ハ之ヲ例外トナルヘキ入江トス
漁業禁止區域
右ノ外左記ノ港灣ノ領水範圍內ニ於テハ軍略上ノ理由ニ依リ日本國臣民及他ノ諸外國人ニ對シテ漁業ヲ禁止スヘシ
一 「デ、カストリー」灣及「フレデリックス」灣(「カストリー」岬ト「クロステル、カンプ」岬トヲ連結スル直線及「クロステル、カンプ」岬ト「オストルイ」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
二 「オリガ」灣(「マネフスキー」岬ト「シユコート」岬トヲ連結スル直線ニ至ル迄)
三 彼得大帝灣(「バワロートヌイ」岬ヨリ「ガモウ」岬ニ至ル迄但シ灣內ノ群島ヲ包含ス)
四 「ポシエット」灣(「ガモウ」岬ヨリ「ブタコウ」岬ニ至ル迄)
第二條
河海ノ境界
河ト海トノ境界ニ關シテハ兩締約國ハ國際法ノ原則及慣例ニ從テ之ヲ決定スヘシ
第三條
黑龍江海灣漁業權ノ特別條件
漁業協約ニ依リ黑龍江海灣(リマン)ニ於テ日本國臣民ニ許與セラレタル漁業權ハ左ノ特別條件從フヘキモノトス
一 日本國臣民ハ該方面ニ於テ露西亞國臣民ト均シク競賣ノ方法ニ依リ漁區ノ貸下ヲ受クルコトヲ得ヘシ
二 漁區ノ貸下ヲ受ケタル日本國臣民ハ漁業上一切ノ關係ニ於テ漁區競落人タル露西亞國臣民ト均シク黑龍江沿岸河川漁業ニ關シ制定セラレ又ハ制定セラルヘキ法律、命令及規則ニ從フヘク特ニ該方面ニ於ケル漁區借受人ニ對シ外國勞働者ノ使用ヲ禁止スル規則ニ從フヘキモノトス
第四條
漁區ノ貸下法漁業法令ニ關スル內國待遇
日本國臣民ハ漁業協約第一條ニ特定シタル各方面何レノ所ニ於テモ漁區ノ貸下ヲ請願スルトキハ競賣ノ方法ヲ以テ其ノ貸下ヲ受クルコトヲ得ヘシ但シ前記各方面ニ於ケル魚類ノ養殖及保護、此等產業ノ取締其ノ他漁業ニ關スル現行又ハ將來ノ法律、命令及規則ヲ遵守スルヲ要ス尤日本國臣民ハ前記法律、命令及規則カ前記各方面ニ於テ漁區ノ貸下ヲ受ケタル露西亞國臣民ニ適用アルニアラサレハ之ニ服從スルコトヲ要セサルハ言ヲ俟タサルモノトス
第五條
漁區ノ貸下ヲ受ケタル露國臣民
「漁區ノ貸下ヲ受ケタル露國亞國臣民」ナル名稱ハ(漁業協約第二條、第四條、第七條、第九條及第十條竝本議定書第四條參照)特別ノ取扱ヲ受クル移住民及土民ニハ之ヲ適用セサルモノトス
第六條
移住民土民漁業權ノ留保
露西亞帝國政府ハ競落人ニ貸下ケタル漁區ノ存在セサル場所ニ定住ノ爲來着スル移住民ニ對シテハ漁業權ヲ許與スルノ權利ヲ留保スルハ言ヲ俟タサルモノトス土民ニ對シテモ亦同シ
露西亞國政府ハ一度漁區ヲ開設シタル場所ニ於テ漁業協約存續期間內移住民又ハ土民ニ前項ノ權利ヲ許與セサルへキコトヲ約ス
移住民タル資格ハ勞働者ヲ使用スルコトナク自ラ漁業ニ從事スル者及其ノ家族ニノミ之ヲ認ムルモノトス
第七條
現在漁區
露西亞帝國政府ハ漁業協約第一條ニ特定シタル各方面ニ於テ既ニ存在スル漁區ハ移住民カ自己ノ漁業ノ爲現今占有スルモノヲ除クノ外該協約存續期間內之ヲ開キ置クヘキコトヲ將來ノ爲保證ス
第八條
漁區ノ貸下期間
競賣ニ付スル漁區ノ貸下期間ハ左ノ如ク之ヲ定ム
(一)漁業協約施行後ニ於テ始メテ開カルル漁區ニ付テハ一箇年
(二)一箇年間既ニ經營シタル漁區ニ付テハ三箇年
(三)三箇年ノ第一期間既ニ經營シタル漁區ニ付テハ三箇年
(四)三箇年ツツ二期間既ニ經營シタル漁區ニ付テハ五箇年
第九條
漁業協約滿了ノ際貸下期限未到達ノ漁區
漁業協約第十三條ニ記載シタル十二箇年ノ期間終了ノ際ニ於テ未タ貸下ノ期限到來セサル漁區ハ漁業協約ニ關シ兩締約國ノ爲スヘキ決定如何ニ拘ハラス其ノ貸下ニ付定メタル期間內引續キ有效ナルモノトス
第十條
鰊及鰊以外ノ魚類ノ肥料製造及紅魚ノ製造ニ關スル權利
露西亞帝國政府ハ日本國臣民カ鰊及鰊群來ノトキ鰊ト共ニ偶然網中ニ入リタル他ノ各種魚類ヲ以テ肥料ヲ製造スルコトニ異義ナシ又日本國臣民カ日本風ノ製法ニ依リ紅魚(鮭鱒ノ種屬)ヲ製シ且鹽漬又ハ鹽引ニスルコトニ關シテモ亦同シ
第十一條
航海證書
日本國ト露西亞國領水內ノ漁場トノ間ヲ往復スルコトニ關スル航海證書ハ左記ノ事項ヲ證明スヘキ書類ヲ提出シタル日本國漁業者ニ對シ當該露西亞國領事館ヨリ之ヲ交付スヘシ
一 船舶カ囘航セムトスル一箇又ハ數箇ノ漁區ノ貸下ヲ受ケタル權利
二 乘組人ノ員數
三 單ニ漁業ニノミ使用セラルヘキ載貨ノ性質及積量
航海證書ニハ左記ノ事項ヲ記載スヘシ
一 船舶及船籍港ノ名
二 漁業者卽一箇又ハ數箇ノ漁區ノ借受權利者ノ名
三 船舶ノ囘航先ナル一箇又ハ數箇ノ漁區ノ所在地
四 載貨ノ性質及積量
五 乘組人ノ員數
前記航海證書及健康證書ヲ有スル船舶ハ航海證書ニ記載シタル露國沿岸ノ地點ニノミ到リ且該地點ニノミ碇泊スルコトヲ得ヘシ該船舶カ常ニ關稅港ニ出入スルコトヲ得ヘキハ言ヲ俟タサルモノトス
鯨鱈等漁獲免許狀
漁業協約第二條第三項ニ依リ鯨、鱈等ノ漁獲ヲ爲スカ爲露西亞國領水內ニ到ル日本船舶ハ豫メ露西亞國ノ特定港ニ碇泊シ當該露國官憲ヨリ該漁獲ニ關シ特別ナル免許狀ノ給付ヲ受クヘシ該免許狀ハ同時ニ航海證書タル性質ヲ有スルモノトス
第十二條
建網ノ使用
日本國臣民ノ占有スル一切ノ漁區ニ於テハ其ノ河口ニ最モ接近セルモノノ外通常ノ建網ヲ使用スルコトヲ得ヘシ河口ニ最モ接近セル漁區ニ於テモ曳網ニ依リ漁獲ヲ行フコトヲ得サル場合ニ於テハ建網ノ使用ヲ禁止セサルへキコトヲ約ス
第十三條
魚類及水產物ノ定義
漁業協約及附屬議定書中ニ使用セル「漁類及水產物」ナル文字ハ膃肭獸及獵虎ヲ除クノ外一切ノ魚類、水產動植物其ノ他一切ノ水產物ヲ指示スルモノト解スヘキモノトス
第十四條
本議定書ハ本日調印シタル漁業協約ノ批准ニ依リ批准セラレタルモノト看做サルヘシ
本議定書ノ存續期間ハ前記協約ノ存續期間ト同一ナルモノトス
右證據トシテ兩國全權委員ハ本議定書ニ記名調印スルモノナリ
明治四十年七月二十八日卽西曆千九百七年七月十五日(二十八日)聖彼得堡ニ於テ本書二通ヲ作ル
本野一郞印
イズヴォルスキー印
グパストフ印