データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安奉線改築に關する通牒(安奉線改築に関する通牒)

[場所] 
[年月日] 1909年8月6日
[出典] 日本外交年表竝主要文書上巻,外務省,317−318頁
[備考] 
[全文]

  明治四十二年八月六日

 駐淸伊集院公使ヨリ淸國外務部宛

以書翰致啓上候陳者安奉鐵道改築問題ニ關シテハ本年一二月ノ交ヨリ貴國政府ト累次交涉ヲ重ネタル儀ニ有之此間本使ハ深ク本國政府善隣ノ交誼ヲ顧重スルノ大旨ヲ体シ肝膽ヲ披キ誠衷ヲ吐キ條理ノ存スル所ヲ瀝盡シテ貴國政府ニ於テ帝國政府ノ要望ヲ容諾セラルルノ切要ナル所以ヲ闡明シ數月ノ久シキニ亘リ切々偲々ヲ重ネタルニモ拘ハラス貴國有司ニ於テ恬トシテ帝國政府和衷陰忍ノ誠意ヲ藐視スルモノノ如ク常ニ辭ヲ左右ニ托シ曠日彌久ヲ以テ今日ニ至リタル次第ニ有之候處今般本件ニ關シ左ノ趣旨ヲ貴國政府ニ通牒スヘキ旨本國政府ヨリ本使ニ電訓有之候

帝國政府ハ安奉鐵道カ淸韓兩國鐵路ノ連鎖タルノミナラス歐亞交通ノ要衝ニ方ルニ鑑ミ速ニ現在ノ輕便軌道ヲ改築シ以テ各國商務ノ須要ニ應シ以テ東西交通ノ利便ヲ增進センコトヲ欲シ本年一月以來貴國政府ニ對シ右改築ノ爲必要ナル共助ヲ與へ以テ兩國ノ誓約ニ附セムコトヲ求メタルニ貴國政府ニ於テハ徒ラニ辭柄ヲ構ヘテ數月ノ久シキニ亘リ之カ應答ヲ遷延セラレタル末六月二十四日ニ至リ漸ク東三省總督ヲ經テ其所謂回答ナルモノヲ我ニ致サレタル儀ニ候處其內容ハ頗ル妥當ヲ失セルモノニ有之卽チ貴國政府ハ右ノ回答ニ於テ守備兵及鐵道警察撤退等ノ如キ線路ノ改築ト秋毫ノ關係ナク而モ之カ應諾ハ北京條約ノ精神ト帝國政府累次ノ聲明ニ照ラシ帝國政府ノ不可能トスル所タルコト明白ナル問題ヲ提起シ之ヲ以テ改築工事施行ノ條件トナサムトセラルルノミナラス改築工事ノ主眼タル軌道ノ取擴ケ及技術上ノ須要ナル線路ノ更正ヲスラ目シテ改築ニアラストナシ一併之ヲ拒絕セラレタル儀ニ有之候抑安奉線路ノ改築ハ我條約上ノ權利ニ屬シ貴國政府ニ於テ如上ノ口實ヲ籍リテ漫ニ之カ實行ヲ妨害セラルルノ不當ナルハ論ヲ待タサル處ニ有之候ヘ共帝國政府ハ深ク兩國ノ友好ヲ顧重シ可成貴國ノ協力ヲ以テ改築ノ實行ヲ遂クルコトヲ希望シ反覆條理ヲ盡シテ貴國政府ノ反省ヲ求メタルニ拘ハラス貴國政府ハ依然從前ノ態度ヲ固持セラレ交涉開始以來七月有餘ノ久シキヲ經過セル今日ニ至リ尙我要請ヲ應諾セラルルニ至ラス貴國ノ意志實ニ安奉線路ノ改築ヲ阻害シ兩國ノ誓約ヲ蒙晦ニ附セントスルニアルコト旣ニ一點懷疑ノ餘地ナキニ至リ候ニ付帝國政府ニ於テハ甚乍遺憾不得已世界交通ノ利便ノ爲條約上ノ權利ニ據リ貴國ノ協力ヲ待タス自ラ安奉線路ノ改築ヲ實行スルニ決シ候條此旨御了承相成度此段帝國政府ノ命ニ依リ照會申進候 敬具