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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米通商航海條約・附屬議定書(日米通商航海条約・附属議定書)

[場所] ワシントン
[年月日] 1911年2月21日
[出典] 條約彙纂,第一卷,外務省條約局,133-145頁.
[備考] 
[全文]

 明治四十四年二月二十一日華盛頓ニ於テ調印(英文)

 同年三月三十日批准

 同年四月四日東京ニ於テ批准書交換

 同年同月同日公布

日本國皇帝陛下及亞米利加合衆國大統領ハ幸ニ兩國民間ニ存在スル友好親善ノ關係ヲ鞏固ナラシメムコトヲ欲シ而シテ今後兩國間ノ通商關係ヲ律スヘキ條規ヲ明確ニ訂立スルハ此ノ善美ナル目的ヲ達スルニ資スヘキヲ信シ之カ爲ニ通商航海條約ヲ締結スルコトニ決定シ因テ日本國皇帝陛下ハ亞米利加合衆國駐箚特命全權大使從三位勳一等男爵內田康哉ヲ亞米利加合衆國大統領ハ合衆國國務卿「フィランダー、シー、ノックス」ヲ各其ノ全權委員ニ任命セリ右各全權委員ハ互ニ其ノ委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ諸條ヲ協定セリ

 第一條

入國、旅行、居住、商業、家屋等ノ所有、賃借及土地賃借ニ關スル內國待遇

兩締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ他ノ一方ノ版圖內ニ到リ、旅行シ又ハ居住シ卸賣又ハ小賣商業ニ從事シ家屋、製造所、倉庫及店舖ヲ所有又ハ賃借シヲ{前4文字ママ}之ヲ使用シ自ラ選擇セル代理人ヲ雇使シ住居及商業ノ目的ノ爲土地ヲ賃借シ其ノ他一般ニ商業ニ附帶シ又ハ必要ナル一切ノ行爲ヲ爲スコトニ付其ノ國ノ法令ニ遵由スルニ於テハ內國臣民又ハ人民ト同一ノ條件ニ依リ之カ自由ヲ享有スヘシ

課金又ハ租稅ニ關スル內國待遇

該臣民又ハ人民ハ何等ノ名義ヲ以テスルモ內國臣民又ハ人民ノ納付シ若ハ納付スルコトアルヘキ所ト異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル課金又ハ租稅ヲ徵收セラルルコトナカルヘシ

身體財產ノ保護竝之ニ關スル權利及特權ニ關スル內國待遇

兩締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ其ノ身體及財產ニ對シテ常ニ保護及保障ヲ享受スヘク而シテ內國臣民又ハ人民ト同一ノ條件ニ服スルニ於テハ本件ニ關シ內國臣民又ハ人民ニ許與シ若ハ許與スルコトアルヘキ所ト同一ノ權利及特權ヲ享有スヘシ

强制兵役、貢納、强募公債、軍用賦歛又ハ取立金ノ免除

該臣民又ハ人民ハ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ常備軍タルト護國軍タルト民兵タルトヲ問ハス陸海孰レニ於テモ强制兵役ヲ免レ且服役ノ代トシテ課セラルル一切ノ貢納ヲ免レ又一切ノ强募公債又ハ軍用賦歛若ハ取立金ヲ免ルヘシ

 第二條

家宅等ノ不可侵

家宅搜索等ニ關スル內國待遇

兩締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民カ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ有スル家宅、倉庫、製造所及店舖竝一切ノ附屬構造物ニシテ住居及商業ノ目的ニ使用セラルルモノハ侵スヘカラス右建物又ハ附屬構造物ニ付テハ法律、命令及規則ヲ以テ內國臣民又ハ人民ニ對シテ定メタル條件及方式ニ依ルノ外臨檢搜索ヲ爲シ又ハ帳簿、書類若ハ計算書ヲ檢査點閱スルコトヲ得ス

 第三條

領事官ノ任置

兩締約國ノ一方ハ他ノ一方ノ港、都市其他ノ場所ニ總領事、領事、副領事、辨理領事及領事事務官ヲ置クコトヲ得但シ右領事官ノ駐在ヲ認可スルニ便ナラサル場所ニ付テハ此ノ限ニ在ラス尤モ此ノ制限ハ一切ノ他國ニ對シテモ亦均シク之ヲ加フルニ非サレハ一方ノ締約國ニ對シテ之ヲ加フルコトヲ得ス

領事官ノ職務執行竝特典、免除ニ關スル最惠國待遇

右總領事、領事、副領事、辨理領事及領事事務官ハ駐在國政府ヨリ認可狀其ノ他相當ノ證認狀ヲ得タルトキハ最惠國ノ同等領事官ニ認許セラレ又ハ今後認許セラルルコトアルヘキ範圍內ニ於テ相互ノ條件ニ依リ職務ヲ執行シ竝特典及免除ヲ享有スルノ權利ヲ有スヘシ認可狀其ノ他ノ證認狀ヲ發給セル政府ハ其ノ裁量ヲ以テ之ヲ取消スコトヲ得但シ其ノ取消ヲ爲スニ付テハ之ヲ正當ト認メタル理由ヲ通知スヘシ

 第四條

通商航海ノ自由、開港地往來ノ自由ニ關スル最惠國待遇

兩締約國版圖ノ間ニハ相互ニ通商及航海ノ自由アルヘシ締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ外國通商ノ爲ニ開カレ又ハ開カルルコトアルヘキ一切ノ場所、港及河川ニ最惠國ノ臣民又ハ人民ト均シク船舶及貨物ヲ以テ自由ニ到ルコトヲ得但シ常ニ到達國ノ國法ニ從フコトヲ要ス

 第五條

輸入稅ニ關スル協定

兩締約國ノ一方ノ版圖內ノ生產又ハ製造ニ係ル物品ニシテ他ノ一方ノ版圖內ニ輸入セラルルモノニ對スル輸入稅ハ今後兩國間ノ特別取極又ハ各自ノ國內法ニ依リテ之ヲ定ムヘシ

輸出品ニ對スル稅金又ハ課金ニ關スル最惠國待遇

締約國ノ孰レノ一方タリトモ他ノ一方ノ版圖ニ輸出セラルル物品ニ對シ同樣ノ物品カ別國ニ輸出セラルルニ當リ納付シ又ハ納付スルコトアルヘキ所卜異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル何等ノ稅金又ハ課金ヲ課スルコトヲ得ス

輸出入ノ禁止ニ關スル最惠國待遇

又締約國ノ孰レノ一方タリトモ他ノ一方ノ版圖ヨリノ物品ノ輸入又ハ該版圖ヘノ物品ノ輸出ニ對シテハ同樣ノ物品ノ別國ヨリノ輸入又ハ別國ヘノ輸出ニ對シテ均シク適用セラレサル何等ノ禁止ヲ加フルコトヲ得ス但シ衞生上ノ措置トシテ又ハ動物及有用ノ植物ヲ保護スルノ目的ヲ以テ加フル禁止又ハ制限ハ此ノ限リニ在ラス

 第六條

通過稅ノ免除竝庫入、奬勵金、便益及戾稅ニ關スル內國待遇

兩締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ一切ノ通過稅ヲ免除セラルヘク又庫入、奬勵金、便益及戾稅ニ關スル一切ノ事項ニ付テハ全ク內國臣民又ハ人民ト均等ナル待遇ヲ享受スヘシ

 第七條

會社及組合ノ互認

兩締約國ノ一方ノ國法ニ從ヒテ既ニ設立セラレ又ハ今後設立セラルヘキ商工業及金融業ニ關スル有限責任其ノ他ノ會社及組合ニシテ該國版圖內ニ住所ヲ有スルモノハ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ其ノ國法ニ違反セサル限リ權利ヲ行使シ且原告又ハ被告トシテ裁判所ニ出頭スルコトヲ得

前項ノ規定ハ兩締約國ノ一方ニ於テ設立セラレタル會社又ハ組合カ他ノ一方ニ於テ其ノ營業ニ從事スルヲ認許セラルルヤ否ヤト何等ノ關係ヲ有セスシテ右認許ハ常ニ各當該國又ハ其ノ地方ノ法令ニ依ルモノトス

 第八條

船舶、貨物ニ關スル內國待遇

兩締約國ノ一方ノ港ニ其ノ國ノ船舶ヲ以テ外國ヨリ適法ニ輸入セラレ又ハ輸入セラルルコトアルヘキ一切ノ物品ハ他ノ一方ノ船舶ヲ以テ亦均シク該港ニ之ヲ輸入スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ右物品ノ內國船舶ニ依リテ輸入セラルルトキ課スル所ト異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル稅金又ハ課金ハ如何ナル名稱ヲ有スルモノタリトモ之ヲ課スルコトナシ右相互均等ノ待遇ハ該物品カ直接ニ製產原地ヨリ到ルト其ノ他ノ外國地方ヨリ到ルトヲ問ハス之ヲ實行スヘシ

輸出ニ關シテモ右ト同樣ニ全ク均等ノ待遇ヲ爲スヘク從テ兩締約國ノ一方ノ版圖內ニ於テ該版圖內ヨリ適法ニ輸出セラレ又ハ輸出セラルルコトアルヘキ物品ハ其ノ輸出カ日本船舶ニ依ルト合衆國船舶ニ依ルトヲ問ハス且其ノ仕向先カ締約國ノ他ノ一方ノ港タルト第三國ノ港タルトニ拘ラス之カ輸出ニ當リ同一ノ輸出稅ヲ納付シ又同一ノ奬勵金及戾稅ヲ受クヘシ

 第九條

船舶ノ繫留及貨物ノ積卸ニ關スル內國待遇

締約國版圖內ノ港ニ於ケル船舶ノ繫留及貨物ノ積卸ニ關スル一切ノ事項ニ付テハ締約國ニ於テ兩國ノ船舶ヲ全ク均等ニ待遇スルノ意思ナルニ因リ締約國ノ孰レノ一方タリトモ他ノ一方ノ船舶ニ對シ同樣ノ場合ニ均シク許與セサル何等ノ特權ヲ自國船舶ニ許與スルコトナカルヘシ

 第十條

船舶ノ國籍

日本國又ハ合衆國ノ國旗ヲ揭ケ且各本國法ニ規定スル國籍證明書類ヲ有スル商船ハ合衆國又ハ日本國ニ於テ之ヲ日本船舶又ハ合衆國船舶ト認ムヘシ

 第十一條

船舶ノ噸稅其ノ他ノ稅金ニ關スル內國及最惠國待遇

政府、官公吏、私人、團體又ハ各種營造物ノ名義ヲ以テ又ハ其ノ利益ノ爲ニ課セラルル噸稅、港稅、水先案內料、燈臺稅、檢疫費其ノ他名稱ノ如何ニ拘ラス之ニ類似又ハ該當スル稅金ハ同樣ノ場合ニ均シク內國船舶一般ニ又ハ最惠國船舶ニ課スルモノニ非サレハ締約國ノ一方ノ版圖內ノ港ニ於テ之ヲ他ノ一方ノ船舶ニ課スルコトナシ右均等ノ待遇ハ兩國ノ船舶カ何レノ地ヨリ來リ又何レノ地ニ往クヲ問ハス相互ニ之ヲ實行スヘシ

 第十二條

定期郵便運送船ニ關スル最惠國待遇

兩締約國ノ一方ノ定期郵便運送ノ任務ニ當ル船舶ハ國有タルト國家ヨリ之カ爲補助ヲ受クルモノタルトノ別ナク他ノ一方ノ版圖內ノ港ニ於テ同樣ノ最惠國船舶ニ許與セラルル便益、特權及免除ヲ享有スヘシ

 第十三條

沿岸貿易ニ關スル最惠國待遇

兩締約國ノ沿岸貿易ハ本條約ノ規定スル限ニ在ラス日本國及合衆國各自ノ國法ノ定ムル所ニ依ル但シ締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ本件ニ關シ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ最惠國待遇ヲ享受スヘキモノトス

兩締約國ノ一方ノ船舶ニシテ他ノ一方ノ版圖內ノ二箇以上ノ輸入港ヘ仕向ケラレタル貨物ヲ外國ニ於テ積載シタルモノハ右諸港ノ一ニ於テ其ノ貨物ノ一部ヲ陸揚シ更ニ他ノ一港又ハ數港ニ續航シテ其ノ地ニ貨物ノ殘部ヲ陸揚スルコトヲ得但シ常ニ到達國ノ國法、稅法及稅關規則ニ從フコトヲ要ス又同樣ノ方法及同一ノ制限ニ依リ締約國ノ一方ノ船舶ハ他ノ一方ノ港ヨリ其ノ國外ニ向ヒ發航ノ途次該國ノ數港ニ於テ貨物ヲ船積スルコトヲ得

 第十四條

通商航海ニ關スル最惠國待遇

本條約ニ於テ別段ノ明文アル場合ヲ除クノ外兩締約國ハ通商及航海ニ關スル一切ノ事項ニ付其ノ一方カ別國ノ臣民又ハ人民ニ現ニ許與シ又ハ今後許與スルコトアルヘキ一切ノ特權、恩典又ハ免除ニシテ若シ右別國へ無償ニテ詐與シタルモノナルトキハ無償ニテ又若シ條件ヲ附シテ許與シタルモノナルトキハ同一又ハ均等ノ條件ヲ以テ之ヲ他ノ一方ノ臣民又ハ人民ニ及ホスコトニ同意ス

 第十五條

特許、商標及意匠ノ保護ニ關スル內國待遇

兩締約國ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ他ノ一方ノ版圖內ニ於テ法定ノ手續ヲ履行スルトキハ特許、商標及意匠ニ關シ內國臣民又ハ人民ト同一ノ保護ヲ享受スヘシ

 第十六條

舊條約ノ廢棄

本條約ハ其ノ實施ノ日ヨリ千八百九十四年十一月二十二日ノ通商航海條約ニ代ハルモノトス而シテ同日ヨリ千八百九十四年十一月二十二日ノ通商航海條約ハ其ノ效力ヲ失フヘシ

 第十七條

本條約ノ實施期及其ノ有效期間

本條約ハ千九百十一年七月十七日ヨリ實施シ十二年間又ハ兩締約國ノ一方カ他ノ一方ニ對シ本條約ヲ消滅セシムルノ意思ヲ通告セル日ヨリ六月ノ期間ノ滿了ニ至ル迄效力ヲ有ス

終了方法

右十二年ノ期間滿了ノ六月前ニ兩締約國ノ孰レヨリモ本條約ヲ消滅セシムルノ意思ヲ他ノ一方ニ通告セサルトキハ本條約ハ締約國ノ一方カ右通告ヲ與ヘタル日ヨリ六月ノ期間ノ滿了ニ至ル迄引續キ效力ヲ有ス

 第十八條

本條約ノ批准

本條約ハ批准ヲ要ス其ノ批准書ハ本日ヨリ三月以內ニ成ルヘク速ニ東京ニ於テ交換スヘシ

右證據トシテ各全權委員本條約二通ニ署名調印ス

 明治四十四年二月二十一日卽西曆千九百十一年二月二十一日華盛頓ニ於テ

  內田康哉 印

  フィランダー、シー、ノックス 印

 同上附屬議定書

日本帝國政府及亞米利加合衆國政府ハ千九百十一年七月十七日ヨリ千八百九十四年十一月二十二日ノ條約ニ代ハラシメムカ爲本日調印シタル日米通商航海條約ノ第五條ニ關シ各其ノ全權委員ニ由リ左ノ約定ニ同意セリ

關稅ニ關スル特別取極ノ締結セラルルニ至ル迄ハ千八百九十四年十一月二十二日ノ條約中ニ存スル關稅ニ關スル規定ヲ維持スヘシ

右證據トシテ各全權委員ハ本議定書二通ニ署名調印ス

 明治四十四年二月二十一日卽西曆千九百十一年二月二十一日華盛頓ニ於テ

  內田康哉 印

  フィランダー、シー、ノックス 印