[文書名] 鮮満國境通過鐵道貨物關稅輕減取極(鮮満国境通過鉄道貨物関税軽減取極)
大正二年五月二十九日北京ニ於テ調印
同年六月十一日吿示
同年同月二日ヨリ實施
朝鮮ヨリ若ハ朝鮮ヲ通過シテ滿洲ニ輸入セラレ又ハ滿洲ヨリ朝鮮ニ若ハ朝鮮ヲ通過シテ輸出セラルル安東經由鐵道貨物ニ對スル減稅特典ニ關スル取極
第一條 滿洲ヨリ鐵道ニ依リ新義州以遠ノ各地ニ仕向ケラルル有稅貨物及新義州以遠ノ各地ヨリ鐵道ニ依リ滿洲ニ仕向ケラルル有稅貨物ニ對シテハ各海關稅率三分ノ二ノ輸出稅又ハ輸入稅ヲ課ス
第二條 新義州ヨリ更ニ鴨綠江水路ニ依リ他ニ輸送センカ爲鐵道ニ依リ滿洲ヨリ輸出セラレ又ハ該水路ニ依リ新義州ニ到著シテ更ニ鐵道ニ依リ滿洲ニ輸入セラルル貨物ハ前記減稅ノ特典ヲ受クルコトヲ得ス
從テ滿洲ヨリ鐵道ニ依リ新義州ニ輸出セラルル一切ノ有稅貨物ニハ關稅全額ヲ課スルモ左記ノ貨物ニ限リ其ノ三分ノ一ノ拂戾ヲ爲スモノトス
(イ) 新義州ニ於テ地方的消費ニ供セラルルモノ
(ロ) 滿洲輸出ノ日ヨリ二年以內ニ更ニ鐵道ニ依リ新義州以遠ニ輸送セラルルモノ
前記(イ)ノ貨物ニ關シテハ新義州稅關發給ノ輸入免狀(輸入稅仕拂濟ヲ證セルモノ)(ロ)ノ貨物ニ關シテハ安東稅關ヲシテ原輸出貨物タルコトヲ識別セシメ得ルニ必要ナル細目ヲ記載セル新義州稅關發給ノ運送免狀ヲ以テ當該貨物カ關稅三分ノ一ノ拂戾ヲ受クルニ必要ナル條件ヲ具備スルノ證憑ト認ムヘシ
本條第一項ニ記載スルモノヲ除クノ外新義州ヨリ鐵道ニ依リ滿洲ニ輸入セラルル有稅貨物ハ船便ニ依リ到著シタルモノニ非サルコトヲ明記セル新義州稅關發給ノ輸出免狀又ハ運送免狀ヲ添附スルニ於テハ海關稅率三分ノ二ノ輸入稅ヲ課セラルヘシ
朝鮮稅關手續ニ何等變更アリタル場合ニハ本條記載ノ貨物ニ關スル支那海關手續モ亦改正ヲ要スルコトアルヘシ
第三條 三分ノ一減稅ノ特典ヲ受ケテ滿洲ノ內地ニ仕向ケラルル貨物ニ對スル抵代稅ハ海關稅率ノ三分ノ一卽チ旣納三分ノ二輸入稅ノ半額トス
第四條 三分ノ一減稅ノ特典ヲ受ケテ安東ニ輸入セラレ次テ鐵道ニ依リ滿洲以外ノ條約港若ハ支那本部各省ノ內地ニ仕向ケラレ又ハ海路滿洲若ハ支那本部ニ仕向ケラルル貨物ハ支那海關ニ右旣減額ヲ納入スルニ非サレハ條約ノ規定ニ基キ外國輸入品ニ適用セラルヘキ普通ノ稅關取扱ヲ受クルコトヲ得サルモノトス
第五條 申吿者ハ英文及支那文ノ申吿書ノ外左ノ事項ヲ記載セル鐵道運送狀ノ副本ヲ提出スルコトヲ要ス
出荷者ノ氏名及成ルヘクハ荷受主ノ氏名、發荷地(停車場名)、仕向地(停車場名)、品名、容量、重量、包裝、符號、記號、番號等及成ルヘクハ其ノ價格竝鐵道係員ノ署名
第六條 朝鮮稅關及支那海關ハ各其ノ所屬國ノ收入ヲ害スヘキ詐僞行爲ヲ防遏スル爲共助スルノ主義ヲ承認ス
一九一三年五月二十九日北京ニ於テ
日本國特命全權公使
伊集院彥吉印
総稅務司
エフ、エー、アグレン印