データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 独逸国ニ対スル宣戦ノ詔書(第一次世界大戦宣戦の詔書,独逸国ニ対シ宣戦)

[場所] 
[年月日] 1914年8月23日
[出典] 国立国会図書館,アジア歴史資料センター.
[備考] 
[全文]

天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本國皇帝ハ忠實勇武ナル汝有衆ニ示ス

朕茲ニ獨逸國ニ對シテ戰ヲ宣ス朕カ陸海軍ハ宜ク力ヲ極メテ戰鬪ノ事ニ從フヘク朕カ百僚有司ハ宜ク職務ニ率循シテ軍國ノ目的ヲ達スルニ勗ムヘシ凡ソ國際條規ノ範圍ニ於テ一切ノ手段ヲ盡シ必ス遺算ナカラムコトヲ期セヨ

朕ハ深ク現時歐洲戰亂ノ殃禍ヲ憂ヒ專ラ局外中立ヲ恪守シ以テ東洋ノ平和ヲ保持スルヲ念トセリ此ノ時ニ方リ獨逸國ノ行動ハ遂ニ朕ノ同盟國タル大不列顛國ヲシテ戰端ヲ開クノ已ムナキニ至ラシメ其ノ租借地タル膠州灣ニ於テモ亦日夜戰備ヲ修メ其ノ艦艇荐ニ東亞ノ海洋ニ出沒シテ帝國及與國ノ通商貿易爲ニ威壓ヲ受ケ極東ノ平和ハ正ニ危殆ニ瀕セリ是ニ於テ朕ノ政府ト大不列顛國皇帝陛下ノ政府トハ相互隔意ナキ協議ヲ遂ケ兩國政府ハ同盟協約ノ豫期セル全般ノ利益ヲ防護スルカ爲必要ナル措置ヲ執ルニ一致シタリ朕ハ此ノ目的ヲ達セムトスルニ當リ尚努メテ平和ノ手段ヲ悉サムコトヲ欲シ先ツ朕ノ政府ヲシテ誠意ヲ以テ獨逸帝國政府ニ勸告スル所アラシメタリ然レトモ所定ノ期日ニ及フモ朕ノ政府ハ終ニ其ノ應諾ノ囘牒ヲ得ルニ至ラス

朕皇祚ヲ踐テ未タ幾クナラス且𫝆尚皇妣ノ喪ニ居レリ恒ニ平和ニ眷々タルヲ以テシテ而カモ竟ニ戰ヲ宣スルノ已ムヲ得サルニ至ル朕深ク之ヲ憾トス

朕ハ汝有衆ノ忠實勇武ニ倚頼シ速ニ平和ヲ克復シ以テ帝國ノ光榮ヲ宣揚セムコトヲ期ス

御名*注* 御璽

大正三年八月二十三日

内閣總理大臣兼

内務大臣 伯爵 大隈重信

農商務大臣 子爵 大浦兼武

外務大臣 男爵 加藤髙明

陸軍大臣 岡市之助

海軍大臣 八代六郎

大藏大臣 若槻禮次郎

文部大臣 法學博士 一木喜德郎

司法大臣 尾嵜行雄

遞信大臣 武富時敏

{*注* 国立公文書館の出典には嘉仁とある。

国立公文書館参考URL:http://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/Detail_F0000000000000015691}