データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本の單獨に利害關係を有する講和條件に關する條約案(日本の単独に利害関係を有する講和條件に関する条約)

[場所] 
[年月日] 1919年1月18日
[出典] 日本外交年表竝主要文書上巻,外務省,478‐479頁.
[備考] 
[全文]

大正八年一月十八日閣議決定

第一條 獨逸國ハ赤道以北ニシテ東ハ(緯度零度東經百六十八度)ヨリ(北緯六度東經百七十四度)ニ至ル一線及東經百七十四度ノ經度線、西ハ(緯度零度東經百四十度)ヨリ(北緯二度三十分東經百三十度)ニ至ル一線及東經百三十度ノ經度線ノ間ニ存在シ現ニ獨逸國ノ主權ニ屬スル諸島ヲ日本國ニ讓渡ス

第二條 獨逸國ハ條約其ノ他ノ取極又ハ慣例ニ依リ山東省ニ於テ有スル領土領水ノ租借、鐵道、鑛山其ノ他ニ關スル一切ノ權利、特權、讓與竝上記權利、特權及讓與ノ一部ヲ構成シ又ハ之ニ關聯シ山東省外ニ存スル一切ノ權利、特權及讓與ヲ日本國ニ移轉讓渡ス

第三條 獨逸國ハ日本國ニ讓渡シタル前記諸島及租借地內ニ存在スル一切ノ公共營造物及官公有財產ヲ日本國ニ讓渡ス

第四條 獨逸國ハ靑島濟南間ノ鐵道及其ノ一切ノ支線竝同地方ニ於テ該鐵道ニ屬シ又ハ其ノ利益ノ爲ニ經營セラルル一切ノ鑛山及同地方ニ於テ該鐵道及鑛山ニ附屬スル一切ノ權利、特權及財產ヲ日本國ニ讓渡ス

獨逸國ハ日本國ニ讓渡シタル鐵道、鑛山竝之ニ屬スル權利、特權、財產ニ關シ山東鐵道會社其ノ他第三者カ提起スルコトアルヘキ一切ノ要求ニ付自ラ其ノ責ニ任スルコトヲ約ス

日本國ハ前二項ノ讓渡及約諾ニ對シ日本貨金參千萬圓ヲ獨逸國ニ支拂フヘシ

第五條 獨逸國ハ靑島ト上海及芝罘トヲ連結スル海底電線竝之ニ關スル權利、特權及財產ヲ無償ニテ日本國ニ讓渡ス

第六條 獨逸國ハ第一條ニ依リテ日本國ニ讓渡シタル諸島ニ於テ獨逸南洋燐鑛株式會社ニ屬スル權利、特權及財產ヲ日本國ニ讓渡ス

獨逸國ハ日本國ニ讓渡シタル前記權利、特權及財產ニ關シ獨逸南洋燐鑛株式會社其ノ他第三者カ提起スルコトアルヘキ一切ノ要求ニ付自ラ其ノ責ニ任スルコトヲ約ス

日本國ハ前二項ノ讓渡及約諾ニ對シ日本貨金壹百貳拾萬圓ヲ獨逸國ニ支拂フヘシ

第七條 獨逸國ハ第一條ニ依リ日本國ニ讓渡シタル諸島ニ於テ「ヤルート」會社ニ屬スル權利、特權及財產ヲ日本國ニ讓渡ス

獨逸國ハ日本國ニ讓渡シタル前記權利、特權及財產ニ關シ「ヤルート」會社其ノ他第三者カ提起スルコトアルヘキ一切ノ要求ニ付自ラ其ノ責ニ任スルコトヲ約ス

日本國ハ前二項ノ讓渡及約諾ニ對シ日本貨金(本金額ハ目下精査中)圓ヲ獨逸國ニ支拂フヘシ

本條約附屬約款

本條約附屬議定書又ハ其ノ他適當ノ形式ヲ以テ左記各項ノ趣旨ヲ明ニスルコト

一、靑島租借地ニ於ケル「スネトラーゲ、ウント、ジームセン」會社所有名義ノ財產ハ本條約第三條ニ依リテ日本國ニ讓渡セラレタル官有財產中ニ包含セラレルモノト看做スルコト

獨逸國ハ「スネトラーゲ、ウント、ジームセン」會社ノ權利、特權及財產ニ關シ該會社其ノ他ノ第三者ヨリ提起スルコトアルヘキ一切ノ要求ニ付自ラ其ノ責ニ任スルコトヲ約スルコト

獨逸國ニ於テ前二項ヲ承認シタル上ハ日本國ハ「スネトラーゲ、ウント、ジームセン」會社創立ノ際「スネトラーゲ」及「ジームセン」兩名ノ投資シタル金拾萬馬克ヲ獨逸國ニ支拂フヘキコトヲ約スルコト

二、本條約第一條ニ依リテ日本國ニ讓渡セラレタル諸島ニ於テ西「カロリン」會社ニ屬スル權利、特權及財產中「ヤルート」會社ノ持分ハ本條約第七條第一項ニ依リテ日本國ニ讓渡セラレタル權利、特權及財產中ニ包含セラルルモノト看做スルコト

(備考)

一、高密徐洲間及濟南順德間ノ鐵道敷設ニ關シ獨逸國ノ有スル權利ハ本條約第二條ノ適用ニ依リ日本國ニ移轉讓渡セラレタルモノト認ムル趣旨ナリ

二、本條約第七條第三項ニ依リ日本國ノ獨逸國ニ支拂フヘキ金額ハ本條約附屬約款第二項西「カロリン」會社所屬權利、特權及財產中ノ「ヤルート」會社持分ニ對スル補償ヲモ加算スルモノナリ