[文書名] シベリアの事態に處すべき根本方針(シベリアの事態に処すべき根本方針)
西比利亞ノ事態ニ處スヘキ帝國政府ノ根本方針ニ關スル大正九年三月二日閣議同月五日外交調査會決定
西比利亞ノ事態ニ處スヘキ根本方針ニ付テハ三月五日左ノ通リ廟議一決セリ
帝國西比利亞出兵ハ一昨年八月ノ帝國政府宣言ニ明記シアル通リ主トシテ「チエツク、スロヴアツク」軍ノ救援ヲ目的トセルモノナルカ今ヤ同軍ハ近キ將來ニ於テ西比利亞ヲ撤退スヘク從テ帝國トシテハ將ニ西比利亞出兵ノ目的ヲ達セムトスル次第ニ付單ニ右ノ見地ニ立論スルトキハ間モナク撤兵ヲ實行スヘキ筈ナリ然ルニ西比利亞ニ於ケル事態ハ益々混沌ヲ極メ過激派ノ勢力將ニ東部西比利亞ヲ席捲セムトスルニ至リ帝國ト一衣帶水ノ浦潮方面モ全然過激派ノ掌中ニ歸シ接壤地タル朝鮮ニ對スル一大脅威ヲ現出スルト同時ニ同派ハ進ンテ北滿ニ侵入シ來ルノ虞アル處此ノ如キハ帝國ノ自衞上默視シ難キ所タリ仍テ帝國軍隊ノ守備線ヲ短縮シ後貝加爾及黑龍江方面ノ軍隊ヲ撤シテ之ヲ概ネ東支鐵道沿線及浦潮地方ノ沿海州ニ配置シテ此等地方ノ交通及治安ヲ維持シ直接滿洲及朝鮮方面ニ對スル過激派ノ行動ヲ防止シ以テ形勢ノ推移ヲ觀ルヲ要ス「ニコライウスク」ハ黑龍江ノ河口ニ位シ我樺太ニ對スル防備上ノ要地ナルヲ以テ目下同地ニ駐屯スル我陸海ノ守備兵ハ依然之ヲ留置ス