[文書名] 日英同盟は米國を敵視せざる旨の幣原駐米大使聲明(日英同盟は米国を敵視せざる旨の幣原駐米大使声明)
大正十年七月四日
本同盟協約第四條ノ規定ノ解釋ニ關シ種々ノ誤解ヲ生スルノ惧アル處該協約ニ本條ヲ挿入スルニ至リタル事情ヲ見ルトキハ右誤解ハ直ニ一掃セラルヘシ卽チ千九百十一年本同盟ノ改訂ニ際シ當時英米兩國間ニ商議中ナリシ總括的仲裁裁判條約ヲ利用シ日英兩國カ本同盟ニ依リ何等米國ヲ敵トスルノ意圖ヲ有セサル次第ヲ明瞭ナラシムル目的ヲ以テ該規定ヲ挿入セルニ外ナラス而シテ其ノ後日米兩國ハ右總括的仲裁裁判條約ノ商議ヲ結了シタルモ之ニ付米國上院ノ批准ヲ得ルニ至ラサリシ結果成立スルニ至ラサリシカ日英兩國ノ方針ハ當初ヨリ終始一貫シ毫モ變更セス一言ニシテ之ヲ蔽フトキハ兩國ハ日英同盟成立ノ當所ヨリ米國ヲ敵トシタルコト全然之無シ日本ハ素ヨリ英國トノ關係ヲ益々鞏固ナラシムルニ眷々タルモ同時ニ米國トノ傳統的親善關係ヲ一層增進セシメムトスル斷然タル希望ヲ有ス而シテ此ノ兩政策ハ決シテ相牴觸スルモノニ非サルヲ確信ス或ハ日英同盟ノ存續ヲ以テ日本ノ支那ニ對スル侵略的意圖ヲ誘發スルモノナリト非難ヲ為スモノアリト雖日本ハ欺クノ如キ侵略的政策ハ同盟前文ノ規定ニ相反シ啻ニ其ノ達成ノ至難ナルノミナラス却テ自己ノ安全ト幸福トヲ破壞スルモノタル所以ヲ熟知ス云々