[文書名] 海軍軍備制限に關する條約(抄)
一九二二年(大正一一年)二月六日華盛頓ニ於テ署名調印
同年八月五日批准
一九二三年(大正一二年)八月一七日華盛頓ニ於テ批准書寄託
同年同月同日公布
同年同月同日實施
亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國、伊太利國及日本國ハ
一般ノ平和ノ維持ニ貢獻シ且軍備競爭ノ負擔ヲ輕減セシムルコトヲ望ミ
右目的ヲ達成スル爲各自ノ海軍軍備ヲ制限スルノ條約ヲ締結スルコトニ決シ之カ爲左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ
亞米利加合衆國大統領
合衆國人民「チァールス、エヴァンス、ヒューズ」
同「ヘンリー、カボット、ロッジ」
同「オスカー、ダブリュー、アンダウッド」
同「エリヒュー、ルート」
大不列顛愛蘭聯合王國及大不列顛海外領土皇帝印度皇帝陛下
樞密院議長國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」
海軍大臣男爵「リー、オヴ、フェアラム」
亞米利加合衆國駐剳特命全權大使「サー、オークランド、キァンブル、ゲデス」
加奈陀
「ロバート、レアド、ボーデン」
濠太利聯邦
内務大臣上院議員「ジョージ、フォスター、ピアス」
新西蘭
新西蘭最高法院判事「サー、ジョン、ウィリアム、サルモンド」
南阿弗利加聯邦
國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」
印度
印度參議院議員「ヴァリングマン、サンカラナラヤナ、スリニヴァサ、サストリ」
佛蘭西共和國大統領
殖民大臣下院議員「アルベール、サロー」
亞米利加合衆國駐剳特命全權大使「ジュール、ジー、ジュスラン」
伊太利國皇帝陛下
參議院議員「カルロ、シァンツェル」
亞米利加合衆國駐剳特命全權大使參議院議員「ヴィットリオ、ロランディ、リッチ」
參議院議員「ルイジ、アルベルティニ」
日本國皇帝陛下
海軍大臣男爵加藤友三郎
亞米利加合衆國駐剳特命全權大使男爵幣原喜重郎
外務次官埴原正直
右各委員ハ互ニ其ノ全權委任状ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ
第一章
海軍軍備ノ制限ニ關スル一般規定
第一條 締約國ハ本條約ノ規定ニ從ヒ各自ノ海軍軍備ヲ制限スヘキコトヲ約定ス
第二條 締約國ハ第二章第一節ニ掲クル主力艦ヲ各自保有スルコトヲ得本條約實施ノ上ハ合衆國、英帝國及日本國ノ既成又ハ建造中ノ他ノ一切ノ主力艦ハ第二章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ但シ本條中ノ左ノ諸規定ヲ留保ス
合衆國ハ第二章第一節ニ掲クル主力艦ノ外現ニ建造中ノ「ウェスト、ヴァージーニア」級二隻ヲ完成シ之ヲ保有スルコトヲ得右二隻完成ノ上ハ「ノース、ダコータ」及「デラウェーア」ハ第二章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ
英帝國ハ第二章第三節ノ代換表ニ從ヒ基準排水量各三萬五千噸(三萬五千五百六十「メートル」式噸)ヲ超エサル新主力艦二隻ヲ建造スルコトヲ得右二隻完成ノ上ハ「サンダラー」、「キング、ジョージ」五世、「エージァックス」及「センチューリオン」ハ第二章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ
第三條 第二條ノ規定ヲ留保シ締約國ハ各自ノ主力艦建造計畫ヲ廢止スヘク又締約國ハ第二章第三節ニ掲クル所ニ從ヒ建造シ又ハ取得スルコトヲ得ヘキ代換噸數以外ニ新主力艦ヲ建造シ又ハ取得スルコトヲ得ス
第二章第三節ニ從ヒ代換セラレタル軍艦ハ同章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ
第四條 各締約國ノ主力艦合計代換噸數ハ基準排水量ニ於テ合衆國五十二萬五千噸(五十三萬三千四百「メートル」式噸)、英帝國五十二萬五千噸(五十三萬三千四百「メートル」式噸)、佛蘭西國十七萬五千噸(十七萬七千八百「メートル」式噸)、伊太利國十七萬五千噸(十七萬七千八百「メートル」式噸)、日本國三十一萬五千噸(三十二萬四十「メートル」式噸)ヲ超ユルコトヲ得ス
第五條 基準排水量三萬五千噸(三萬五千五百六十「メートル」式噸)ヲ超ユル主力艦ハ何レノ締約国モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ、建造セシメ若ハ其ノ法域内ニ於テ之カ建造ヲ許スコトヲ得ス
第六條 何レノ締約國ノ主力艦モ口徑十六吋(四百六「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ装備スルコトヲ得ス
第七條 各締約國ノ航空母艦合計噸數ハ基準排水量ニ於テ合衆國十三萬五千噸(十三萬七千百六十「メートル」式噸)、英帝國十三萬五千噸(十三萬七千百六十「メートル」式噸)、佛蘭西國六萬噸(六萬九百六十「メートル」式噸)、伊太利國六萬噸(六萬九百六十「メートル」式噸)、日本國八萬一千噸(八萬二千二百九十六「メートル」式噸)ヲ超ユルコトヲ得ス
第八條 航空母艦ノ代換ハ第二章第三節ノ規定ニ從フノ外之ヲ行フコトヲ得ス但シ千九百二十一年十一月十二日ニ現存シ又ハ建造中ノ一切ノ航空母艦ハ之ヲ試驗的ノモノト看做スヘク且其ノ艦齡ノ如何ニ拘ラス第七條ニ規定スル合計噸數ノ範圍内ニ於テ之ヲ代換スルコトヲ得
第九條 基準排水量二萬七千噸(二萬七千四百三十二「メートル」式噸)ヲ超ユル航空母艦ハ何レノ締約国モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ、建造セシメ若ハ其ノ法域内ニ於テ之カ建造ヲ詐スコトヲ得ス
尤モ各締約國ハ其ノ航空母艦ノ割當合計噸數ヲ超エサル限リ基準排水量各三萬三千噸(三萬三千五百二十八「メートル」式噸)ヲ超エサル航空母艦二隻以内ヲ建造スルコトヲ得ヘク又經費節約ノ爲各締約國ハ第二條ノ規定ニ依リ廢棄スヘキ既成又ハ建造中ノ主力艦中ノ二隻ヲ右目的ニ利用スルコトヲ得基準排水量二萬七千噸(二萬七干四百三十二「メートル」式噸)ヲ超ユル航空母艦ノ武装ハ第十條ノ規定ニ準據スヘシ但シ備砲中ニ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超ユルモノアルトキハ航空機防禦砲及口徑五吋(百二十七「ミリメートル」)以下ノ砲ヲ除クノ外備砲ノ數ハ合計八門ヲ超ユルコトヲ得ス
第十條 何レノ締約國ノ航空母艦モ口徑八吋(二百三「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ装備スルコトヲ得ス備砲中ニ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超ユルモノアルトキハ航空機防禦砲及口徑五吋(百二十七「ミリメートル」)以下ノ砲ヲ除クノ外備砲ノ數ハ合計十門ヲ超ユルコトヲ得ス但シ第九條ノ規定ノ適用ヲ妨クルコトナシ又備砲中ニ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超ユルモノナキトキハ砲ノ數ハ制限セラルルコトナシ
右何レノ場合ニ於テモ航空機防禦砲及口徑五吋(百二十七「ミリメートル」)ヲ超エサル砲ノ數ハ制限セラルルコトナシ
第十一條 主力艦又ハ航空母艦以外ノ軍艦ニシテ基準排水量一萬噸(一萬百六十「メートル」式噸)ヲ超ユルモノハ何レノ締約國モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ、建造セシメ若ハ其ノ法域内ニ於テ之カ建造ヲ許スコトヲ得ス特ニ戰鬪用艦船トシテ建造セラレタルモノニ非サル船舶又ハ戰鬪用トシテ平時政府ノ管理ノ下ニ置カレタルモノニ非サル船舶ニシテ艦隊要務又ハ軍隊輸送ノ爲其ノ他戰鬪用艦船トシテ爲ス以外ニ於テ敵對行爲ノ遂行ヲ幇助スル爲使用セラルルモノハ本條ノ制限ヲ受ケサルモノトス
第十二條 將來起工セラルヘキ何レノ締約國ノ軍艦モ主力艦ヲ除クノ外口徑八吋(二百三「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ装備スルコトヲ得ス
第十三條 第九條ニ規定スル場合ヲ除クノ外本條約中ニ廢棄スヘキモノトシテ指定セラレタル軍艦ハ再ヒ之ヲ軍艦ニ變更スルコトヲ得ス
第十四條 商船ハ軍艦ニ變更スルノ目的ヲ以テ平時之ニ武装ヲ施スノ準備ヲ爲スコトヲ得ス但シ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超エサル砲ヲ装備スル爲必要ナル甲板ノ補強設備ハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 何レノ締約國ノ法域内ニ於テ非締約國ノ爲ニ建造スル軍艦モ締約國ノ建造シ又ハ建造セシムル同型ノ軍艦ニ付本條約ニ規定スル排水量及武装ニ關スル制限ヲ超ユルコトヲ得ス但シ非締約國ノ爲ニ建造スル航空母艦ノ排水量ハ如何ナル場合ニ於テモ基準排水量二萬七千噸(二萬七千四百三十二「メートル」式噸)ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六條 締約國ノ法域内ニ於テ非締約國ノ爲ニ軍艦ヲ建造スルトキハ該締約國ハ他ノ締約國ニ對シ契約締結ノ日及軍艦ノ龍骨据附ノ日ヲ速ニ通報シ且第二章第三節第一款(ロ)ノ(四)及(五)ニ規定スル軍艦ニ關スル細目ヲ通知スヘシ
第十七條 締約國ハ戰爭ニ從事スル場合ニ於テハ其ノ法域内ニ於テ他國ノ爲ニ建造中ノ軍艦又ハ其ノ法域内ニ於テ他國ノ爲ニ建造シタルモ引渡ヲ了セサル軍艦ヲ軍艦トシテ使用スルコトヲ得ス
第十八條 各締約國ハ贈與、賣却又ハ如何ナル讓渡ノ形式ニ依ルヲ問ハス外國海軍ニ於テ軍艦ト爲スヲ得ルカ如キ方法ニ依リ其ノ軍艦ヲ處分セサルヘキコトヲ約ス
第十九條 合衆國、英帝國及日本國ハ左