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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中國に關する九國條約

[場所] ワシントン
[年月日] 1922年2月6日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,15−19頁.
[備考] 
[全文]

一九二二年(大正一一年)二月六日華盛頓ニ於テ署名調印

同年八月五日批准

一九二五年(大正一四年)八月五日華盛頓ニ於テ批准書寄託

同年同月同日實施

同年八月六日公布

亞米利加合衆國、白耳義國、英帝國、支那國、佛蘭西國、伊太利國、日本國、和蘭國及葡萄牙國ハ極東ニ於ケル事態ノ安定ヲ期シ支那ノ權利利益ヲ擁護シ且機會均等ノ基礎ノ上ニ支那ト他ノ列國トノ間ノ交通ヲ増進セムトスルノ政策ヲ採用スルコトヲ希望シ

右ノ目的ヲ以テ條約ヲ締結スルコトニ決シ之カ爲左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ

 亞米利加合衆國大統領

  合衆國人民「チァールス、エヴァンス、ヒューズ」

  同「ヘンリー、カボット、ロッジ」

  同「オスカー、ダブリュー、アンダウッド」

  同「エリヒュー、ルート」

 白耳義國皇帝陛下

  亞米利加合衆國駐剳特命全權大使男爵「カルチエ、ド、マルシエンヌ」

 大不列顛愛蘭聯合王國及大不列顛海外領土皇帝印度皇帝陛下

  樞密院議長國會議員「アーサー、ジェ一ムス、バルフォア」

  海軍大臣男爵「リー、オヴ、フェアラム」

  亞米利加合衆國駐剳特命全權大使「サー、オークランド、キァンブル、ゲデス」

 加奈陀

  「サー、ロバート、レアド、ボーデン」

 濠太利聯邦

  内務大臣上院議員「ジョージ、フォスター、ピアス」

 新西蘭

  新西蘭最高法院判事「サー、ジョン、ウィリアム、サルモンド」

 南阿弗利加聯邦

  國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」

 印度

  印度參議院議員「ヴァリングマン、サンカラナラヤナ、スリニヴァサ、サストリ」

 支那共和國大總統

  亞米利加合衆國駐剳特命全權公使施肇基

  英國駐剳特命全權公使顧維鈞

  前司法大臣王寵惠

 佛蘭西共和國大統領

  殖民大臣下院議員「アルべール、サロー」

  亞米利加合衆國駐剳特命全權大使「ジュール、ジー、ジュスラン」

 伊太利國皇帝陛下

  參議院議員「カルロ、シァンツェル」

  亞米利加合衆國駐剳特命全權大使參議院議員「ヴィットリオ、ロランディ、リッチ」

  參議院議員「ルイジ、アルベルティニ」

 日本國皇帝陛下

  海軍大臣男爵 加藤友三郎

  亞米利加合衆國駐剳特命全權大使男爵 幣原喜重郎

  外務次官 埴原正直

 和蘭國皇帝陛下

  特命全權公使「ヨンクヘール、フランス、べーラールツ、ヴァン、ブロックランド」

  亞米利加合衆國駐剳代理公使「ヨンクヘール、ウィルレム、ヘンドリック、ド、ボーフォール」

 葡萄牙共和國大統領

  亞米利加合衆國駐剳特命全權公使「アルテ」子爵「ジョゼー、フランシスコ、デ、オルタ、マシャド、ダ、フランカ」

  海軍大佐殖民省技術部長「エルネスト、ジュリオ、デ、カルヴァリオ、イ、ヴァスコンセロス」

右各委員ハ互ニ其ノ全權委任状ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ

第一條 支那國以外ノ締約國ハ左ノ通約定ス

(一)支那ノ主權、獨立竝其ノ領土的及行政的保全ヲ尊重スルコト

(二)支那カ自ラ有力且安固ナル政府ヲ確立維持スル爲最完全ニシテ且最障礙ナキ機會ヲ之ニ供與スルコト

(三)支那ノ領土ヲ通シテ一切ノ國民ノ商業及工業ニ對スル機會均等主義ヲ有效ニ樹立維持スル爲各盡力スルコト

(四)友好國ノ臣民又ハ人民ノ權利ヲ減殺スヘキ特別ノ權利又ハ特權ヲ求ムル爲支那ニ於ケル情勢ヲ利用スルコトヲ及右友好國ノ安寧ニ害アル行動ヲ是認スルコトヲ差控フルコト

第二條 締約國ハ第一篠ニ記載スル原則ニ違背シ又ハ之ヲ害スヘキ如何ナル條約、協定、取極又ハ了解ヲモ相互ノ間ニ又ハ各別ニ若ハ協同シテ他ノ一國又ハ數國トノ間ニ締結セサルヘキコトヲ約定ス

第三條 一切ノ國民ノ商業及工業ニ對シ支那ニ於ケル門戸開放又ハ機曾均等ノ主義ヲ一層有效ニ適用スルノ目的ヲ以テ支那國以外ノ締約國ハ左ヲ要求セサルヘク又各自國民ノ左ヲ要求スルコトヲ支持セサルヘキコトヲ約定ス

(イ)支那ノ何レカノ特定地域ニ於テ商業上又ハ經濟上ノ發展ニ關シ自己ノ利益ノ爲一般的優越權利ヲ設定スルニ至ルコトアルヘキ取極

(口)支那ニ於テ適法ナル商業若ハ工業ヲ營ムノ權利又ハ公共企業ヲ其ノ種類ノ如何ヲ問ハス支那國政府若ハ地方官憲ト共同經營スルノ權利ヲ他國ノ國民ヨリ奪フカ如キ獨占權又ハ優先權或ハ其ノ範圍、期間又ハ地理的限界ノ關係上機會均等主義ノ實際的適用ヲ無效ニ歸セシムルモノト認メラルルカ如キ獨占權又ハ優先權

本條ノ前記規定ハ特定ノ商業上、工業上若ハ金融業上ノ企業ノ經營又ハ發明及研究ノ奬勵ニ必要ナルヘキ財産又ハ權利ノ取得ヲ禁スルモノト解釋スヘカラサルモノトス

支那國ハ本條約ノ當事國タルト否トヲ問ハス一切ノ外國ノ政府及國民ヨリノ經濟上ノ權利及特權ニ關スル出願ヲ處理スルニ付本條ノ前記規定ニ記載スル主義ニ遵由スヘキコトヲ約ス

第四條 締約國ハ各自國民相互間ノ協定ニシテ支那領土ノ特定地方ニ於テ勢力範圍ヲ創設セムトシ又ハ相互間ノ獨占的機會ヲ享有スルコトヲ定メムトスルモノヲ支持セサルコトヲ約定ス

第五條 支那國ハ支那ニ於ケル全鐵道ヲ通シ如何ナル種類ノ不公平ナル差別ヲモ行ヒ又ハ許容セサルヘキコトヲ約定ス殊ニ旅客ノ國籍、其ノ出發國若ハ到達國、貨物ノ原産地若ハ所有者、其ノ積出國若ハ仕向國又ハ前記ノ旅客若ハ貨物カ支那鐵道ニ依リ輸送セラルル前若ハ後ニ於テ之ヲ運搬スル船舶其ノ他ノ輸送機關ノ國籍若ハ所有者ノ如何ニ依リ料金又ハ便宜ニ付直接間接ニ何等ノ差別ヲ設ケサルヘシ

支那國以外ノ締約國ハ前記鐵道中自國又ハ自國民カ特許條件、特殊協定其ノ他ニ基キ管理ヲ爲シ得ル地位ニ在ルモノニ關シ前項ト同趣旨ノ義務ヲ負擔スヘシ

第六條 支那國以外ノ締約國ハ支那國ノ參加セサル戰爭ニ於テ支那國ノ中立國トシテノ權利ヲ完全ニ尊重スルコトヲ約定シ支那國ハ中立國タル場合ニ中立ノ義務ヲ遵守スルコトヲ聲明ス

第七條 締約國ハ其ノ何レカノ一國カ本條約ノ規定ノ適用問題ヲ包含シ且右適用問題ノ討議ヲ爲スヲ望マシト認ムル事態發生シタルトキハ何時ニテモ關係締約國間ニ充分ニシテ且隔意ナキ交渉ヲ爲スヘキコトヲ約定ス

第八條 本條約ニ署名セサル諸國ニシテ署名國ノ承認シタル政府ヲ有シ且支那國ト條約關係ヲ有スルモノハ本條約ニ加入スヘキコトヲ招請セラルヘシ右目的ノ爲合衆國政府ハ非署名國ニ必要ナル通牒ヲ爲シ且其ノ受領シタル回答ヲ締約國ニ通告スヘシ別國ノ加入ハ合衆國政府カ其ノ通告ヲ受領シタル時ヨリ效力ヲ生スヘシ

第九條 本條約ハ締約國ニ依リ各自ノ憲法上ノ手續ニ從ヒ批准セラルヘク且批准書全部ノ寄託ノ日ヨリ實施セラルヘシ右ノ寄託ハ成ルヘク速ニ華盛頓ニ於テ之ヲ行フヘシ合衆國政府ハ批准書寄託ノ調書ノ認證謄本ヲ他ノ締約國ニ送付スヘシ

本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トシ合衆國政府ノ記録ニ寄託保存セラルヘク其ノ認證謄本ハ同政府ヨリ他ノ各締約國ニ之ヲ送付スヘシ

右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名ス

千九百二十二年二月六日華盛頓市ニ於テ之ヲ作成ス(署名省略)

{マルシエンヌの「ン」は、出所では「ッ」の大きさに印刷}

{ヴィットリオの後方の点は出所にはなし}

{ジョゼーの後方の点は出所にはなし}

中國に關する九國條約締約國一覽表

締約國      批准ノ日      批准書寄託及實施ノ日 加入通告ノ日     效力發生ノ日

米國       一九二三、六、九  一九二五、八、五   −−−−       −−−−

白耳義國     一九二三、一、二七 一九二五、八、五   −−−−       −−−−

「ボリヴィア國」 −−−−      −−−−       一九二五、一一、二一 −−−−

支那國      一九二二、四、二九 一九二五、八、五   −−−−       −−−−

丁抹國      −−−−      −−−−       一九二五、一二、二九 一九二五、一二、三〇

佛蘭西國     一九二五、七、二〇 一九二五、八、五   −−−−       −−−−

英帝國      一九二二、八、四  一九二五、八、五   −−−−       −−−−

伊太利國     一九二三、四、一九 一九二五、八、五   −−−−       −−−−

日本國      一九二二、八、五  一九二五、八、五   −−−−       −−−−

「メキシコ國」  −−−−      −−−−       一九二七、一、一四  一九二七、一、一五

諾威國      −−−−      −−−−       一九二五、一一、一六 一九二五、一一、一八

和蘭國      一九二二、五、二六 一九二五、八、五   −−−−       −−−−

「ポルトガル國」 一九二三、五、二四 一九二五、八、五   −−−−       −−−−

瑞典國      −−−−      −−−−       一九二五、一二、五  一九二五、一二、八