データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中國の關稅に關する條約(中国の関税に関する条約)

[場所] 華盛頓
[年月日] 1922年2月6日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,12‐15頁.
[備考] 
[全文]

一九二二年(大正一一年)二月六日華盛頓ニ於テ署名

調印

同年八月五日批准

一九二五年(大正一四年)八月五日華盛頓ニ於テ批准書寄託

同年同月同日實施

同年同月六日公布

亞米利加合衆國、白耳義國、英帝國、支那國、佛蘭西國、伊太利國、日本國、和蘭國及葡萄牙國ハ支那國政府ノ歲入ヲ增加スルノ目的ヲ以テ支那關稅率ノ改訂及之ニ關聯スル事項ニ付條約ヲ締結スルコトニ決シ之カ爲左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ

(全權委員名略)

右各委員ハ互ニ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ

第一條 締約國ノ代表者ハ支那國ト他國トノ間ニ締結セラレタル現存諸條約ニ基キ支那關稅ヲ現實從價五分ニ相當セシムルノ目的ヲ以テスル同關稅ノ改訂ニ關スル決議ニシテ本條ニ附屬書トシテ添附スルモノヲ千九百二十二年二月四日華盛頓市ニ於テ採用シタルニ因リ締約國ハ茲ニ右決議ヲ確認シ該改訂ノ結果トシテ決定セラルル稅率ヲ受諾スルコトヲ約ス前記改訂稅率ハ其ノ公表ノ時ヨリ二月後ニ於テ成ルヘク速ニ之ヲ實施スヘシ

附屬書

本會議ニ參加スル亞米利加合衆國、白耳義國、英帝國、支那國、佛蘭西國、伊太利國、日本國、和蘭國及葡萄牙國ハ支那國政府ノ所要ニ應スル爲歲入ヲ增加スル目的ヲ以テ左ノ如ク約定ス

千九百十八年十二月十九日上海ニ於テ關稅率改訂委員會ノ採用シタル支那輸入稅率表ハ支那國ヲ一方ノ當事國トスル諸通商條約ニ規定スルカ如ク其ノ稅率ヲ現實五分ニ相當セシムル樣直ニ改訂セラルヘシ

改訂委員會ハ前記改訂ヲ直ニ且前回改訂ノ一般方針ニ從ヒ實施スル爲出來得ル限リ速ニ上海ニ於テ會合スヘシ

右委員會ハ前記諸國ノ代表者及本會議ニ參加スル諸國ニ依リ現ニ承認セラレタル政府ヲ有スル他ノ諸國ニシテ支那國トノ間ニ輸入及輸出ノ稅率ニ付從價五分ヲ超エサルコトヲ規定スル條約ヲ有シ且該委員會ニ參加スルコトヲ希望スルモノノ代表者ヲ以テ之ヲ構成スヘシ

前記改訂ハ軍備制限竝太平洋及極東問題ニ關スル會議ニ於テ本決議ヲ採用シタル日ヨリ四月內ニ完了スルノ目的ヲ以テ成ルヘク速ニ之ヲ進捗セシムヘシ

改訂稅率ハ改訂委員會カ之ヲ公表シタル時ヨリ二月後ニ於テ成ルヘク速ニ之ヲ實施スヘシ

本會議ノ主催者タル合衆國政府ハ本會議ニ參加セサルモ千九百十八年ノ前記改訂ニ參加シタル諸國ノ政府ニ對シ直ニ本決議ノ條項ヲ通吿スヘキモノトス

第二條 大不列顚國及支那國間ノ千九百二年九月五日ノ條約第八條、合衆國及支那國間ノ千九百三年十月八日ノ條約第四條及第五條竝日本國及支那國間ノ千九百三年十月八日ノ追加條約第一條ニ規定スル附加稅ヲ賦課スルノ目的ヲ以テ右諸條ニ規定スル釐金ノ急速ノ廢止及他ノ條件ノ履行ニ付準備ヲ爲スカ爲特別會議ニ依リ直ニ必要ナル措置ヲ執ルヘシ

右特別會議ハ署名國ノ代表者及該會議ニ參加スルコトヲ希望スル他ノ諸國ニシテ之ニ其ノ代表者ヲ參加セシムルニ足ル時期ニ於テ本條約第八條ノ規定ニ從ヒ本條約ニ加入スルコトアルヘキモノノ代表者ヲ以テ之ヲ構成スヘシ右會議ハ本條約實施後三月內ニ支那ニ於テ之ヲ開催スヘク其ノ時日及場所ハ支那國政府之ヲ指定スヘシ

第三條 第二條ニ規定スル特別會議ハ同條ニ記載スル諸條約ノ條項ニ規定スル釐金ノ廢止及他ノ條件ノ履行ニ先チ適用セラルヘキ暫行規定ヲ考量スヘシ同會議ハ其ノ決定スヘキ期日、目的及條件ニ依リ有稅輸入品ニ對シ附加稅ヲ賦課スルコトヲ認ムヘシ右附加稅ハ之ヲ從價二分五厘ノ一律ノ率トス但シ特別會議ニ於テ過度ニ貿易ヲ阻礙スルコトナクシテ一層ノ增課ヲ負擔シ得ルモノト認ムル或種ノ奢侈品ニ付テハ其ノ總附加稅ハ從價五分ヲ超エサル限リ之ヲ增加スルコトヲ得

第四條 第一條ニ記載スル支那輸入關稅率表ノ卽時改訂ノ後同關稅ヲシテ第二條ニ規定スル特別會議ノ定ムル從價稅率ニ相當セシムヘキコトヲ確保スル爲更ニ其ノ再改訂ヲ行フヘク再改訂稅率ハ前記卽時改訂ノ完了後四年ヲ經テ之ヲ實施スヘシ

右再改訂ノ後ニ於テハ前記ノ目的ノ爲支那輸入關稅率表ヲ支那國トノ現存諸條約ノ認ムル十年每ノ定期改訂ニ代へ七年每ニ定期改訂スヘシ

遲延ヲ避クル爲本條ニ基キ行フヘキ改訂ハ第二條ニ規定スル特別會議ノ定ムヘキ規則ニ從ヒ之ヲ實施スヘシ

第五條 關稅ニ關スル一切ノ事項ニ付テハ一切ノ締約國ニ對シ待遇及機會ノ現實ノ均等アルヘシ

第六條 支那ノ一切ノ陸境及海境ニ於テ賦課スル關稅率ニ付テノ均一ノ原則ハ茲ニ承認セラレタルモノトス第二條ニ規定スル特別會議ハ右原則ヲ實行スルノ取極ヲ爲スヘシ同會議ハ撤廢セラルヘキ關稅上ノ特權カ地方的經濟上ノ便益ニ代ヘテ許與セラレタルモノナルニ於テハ之カ衡平ナル調整ヲ爲スコトヲ得

右實行ニ至ル迄ハ關稅率改訂ノ結果トシテ生スへキ關稅率ノ增加又ハ本條約ニ基キ將來賦課セラルヘキ附加稅ハ支那ノ一切ノ陸境及海境ニ於テ均一ノ從價稅率ニ依リ徴收セラルヘシ

第七條 抵代稅ハ第二條ニ規定スル措置ノ實施セラルル迄ハ之ヲ從價二分五厘ノ率トス

第八條 本條約ニ署名セサル諸國ニシテ署名國ニ依リ現ニ承認セラレタル政府ヲ有シ且支那國トノ間ニ輸入及輸出ノ稅率ニ付從價五分ヲ超エサルコトヲ規定スル現存條約ヲ有スルモノハ本條約ニ加入スルコトヲ招請セラルヘシ

合衆國政府ハ右目的ノ爲必要ナル通牒ヲ爲シ且其ノ受領シタル回答ヲ締約國政府ニ通吿スルコトヲ約ス別國ノ加入ハ合衆國政府カ右加入ノ通吿ヲ受領シタル時ヨリ效力ヲ生スヘシ

第九條 本條約ノ規定ハ支那國及各締約國間ノ條約ノ一切ノ規定ニシテ之ト抵觸スルモノ(最惠國民待遇ノ規定ヲ除ク)ニ優ル

第十條 本條約ハ締約國ニ依リ各自ノ憲法上ノ手續ニ從ヒ批准セラルヘク且批准書全部ノ寄託ノ日ヨリ實施セラルヘシ右ノ寄託ハ成ルヘク速ニ華盛頓ニ於テ之ヲ行フヘシ合衆國政府ハ批准書寄託ノ調書ノ認證謄本ヲ他ノ締約國ニ送付スヘシ

本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トシ合衆國政府ノ記錄ニ寄託保存セラルヘク其ノ認證謄本ハ同政府ヨリ他ノ締約國ニ之ヲ送付スヘシ

右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名ス

千九百二十二年二月六日華盛頓市ニ於テ之ヲ作成ス

チァールス、エヴァンス、ヒューズ(印)

ヘンリー、カボット、ロッジ(印)

オスカー、ダブリュー、アンダウッド(印)

エリヒュー、ルート(印)

男爵カルチエ、ド、マルシエンヌ(印){ンは小文字}

アーサー、ジェームス、バルフォア(印)

リー、オヴ、フェアラム(印)

エー、シー、ゲデス(印)

アール、エル、ボーデン(印)

ジー、エフ、ピアス(印)

ジョン、ダブリュー、サルモンド(印)

アーサー、ジェームス、バルフォア(印)

ヴィー、エス、スリニヴァサ、サストリ(印)

施肇基(印)

顧維鈞(印)

王寵惠(印)

アー、サロー(印)

ジュスラン(印)

カルロ、シァンツェル(印)

ヴィー、ロランディ、リッチ(印)

ルイジ、アルベルティニ(印)

加藤友三郞(印)

幣原喜重郞(印)

埴原正直(印)

ベーラールツ、ヴァン、ブロックランド(印)

ダブリュー、ド、ボーフォール(印)

アルテ(印)

エルネスト、デ、ヴァスコンセロス(印)