[文書名] 壽府軍備制限會議に於ける日本提案
(六月二十日公表)
齋藤全權ハ世界平和ノ爲軍縮問題ニ貢獻スルヲ其ノ傳統的政策トスル日本政府ハ今次ノ會議カ各國特種ノ國情竝要求ニ對シ適切ナル考量ヲ加へ公平滿足ナル結果ニ達セムコトヲ念トス補助艦ハ其ノ用途多端ニシテ國ニ依リ重要程度ヲ異ニスルヲ以テ各國ノ所要ヲ具體的ニ表現スル兵力卽チ現ニ其ノ保有シ竝ニ保有セムトスル補助艦ノ現狀ニハ十分ノ考量ヲ拂ヒ各國安全感ノ基礎ヲ動搖セシムル如キ現狀ノ變化ハ努メテ之ヲ避クヘシト述ヘタル後左ノ提案ヲ爲セリ
華府會議ノ條約規定ニ依ル主力艦航空母艦ハ本提案ノ外トス
一、各國ハ今後其ノ海軍勢力增加ノ目的ヲ以テ新ニ增艦計畫ヲ採用シ又ハ軍艦ヲ取得セサルヘキコト
二、前號ニ揭クル海軍勢力トハ(イ)各國ノ保有スル旣成艦艇中現ニ第四號ノ規定ニ依ル代換艦齢ニ充タサルモノノ噸數(ロ)各國ノ建造中ノ艦艇ノ計畫噸數ヲ基礎トシテ協定スヘキ水上補助艦ノ艦種ニ屬スル合計噸數及潜水艦ノ艦種ニ屬スル合計噸數ヲ云フ
各國ニ許容セラルヘキ海軍勢力協定ニ當リテハ(イ)各國ノ旣定計畫中建造未著手艦艇ノ計畫噸數及(ロ)旣定計畫實施中ニ代換艦齢ヲ經過スヘキ噸數ヲモ考量スヘキコト
三、左ニ揭クル艦船ハ前二號ノ適用ヨリ之ヲ解除スルコト
(イ)排水量七百噸ヲ超過セサル艦艇
(ロ)六吋砲以下ノ砲四門以內(三吋砲以下ノ砲ハ之ヲ計上セス)ノ武裝ヲ有スル水上艦船但シ速力ハ二十節ヲ超ユヘカラス
(ハ)一萬噸未滿ノ航空母艦
四、第二號ニ依リ協定セラレタル海軍勢力ヲ超過セサル範圍內ニ於テ各國ハ左記艦齢ヲ經過シタル艦艇又ハ亡失セル艦艇ニ付各艦種別ニ從ヒ新艦艇ノ建造又ハ取得ニ依リ之ヲ代換スルコトヲ得
水上補助艦 三千噸以上十六年三千噸未滿十二年
潜水艦 十二年
正規ノ代換艦齢ハ各項ニ規定スルカ如シト雖現ニ特種ノ調節ヲ要スルカ如キ狀況ニ對シテハ除外例ヲ認ムルヲ妨ケス
五、第一號及第二號ニ依リ協定シタル海軍勢力ヲ超過シタル噸數及第四號ノ規定ニ依リ代換セラレタル艦艇ハ別ニ協定セラルヘキ方法ニ依リ之ヲ處分スルコト
六、代艦建造ニ當リテハ急激ナル勢力ノ變化ヲ避クル爲及每年度ノ製艦率ヲ均齊ナラシムル爲適當ノ規定ヲ設クルコト