[文書名] 滿洲事變に關する國際聯盟理事會決議竝議長及日本理事宣言(満州事変に関する國際連盟理事会決議並議長及日本理事宣言)
(十二月十一日發表)
(イ)國際聯盟理事會ハ滿洲事變ニ關シ十二月十日左ノ決議
(假譯)ヲ採擇セリ
理事會ハ
一、兩當事國カ嚴肅ニ遵守スル旨宣言シ居レル一九三一年九月三十日理事會全會一致可決ノ決議ヲ再ヒ確認ス依テ理事會ハ右決議ノ定ムル條件ニヨリ日本軍ノ鐵道附屬地內撤收カ成ルヘク速ニ實行セラレンカ爲日支兩國政府ニ對シ右決議實施ヲ確保スルニ必要ナル一切ノ手段ヲ講センコトヲ要請ス
二、十月二十四日ノ理事會以來事態更ニ重大化シタルニ鑑ミ理事會ハ兩當事國カ此ノ上事態ノ惡化スルヲ避クルニ必要ナル一切ノ措置ヲ執リ又此ノ上戰鬪又ハ生命ノ喪失ヲ惹起スルコトアルヘキ一切ノ主動的行爲ヲ差控フヘキヲ約スルコトヲ了承ス
三、兩當事國ニ對シ情勢ノ進展ニ付引續キ理事會ニ通報センコトヲ求ム
四、其ノ他ノ理事國ニ對シ其ノ關係地域ニ在ル代表者ヨリ得タル情報ヲ理事會ニ提供センコトヲ求ム
五、上記諸措置ノ實行トハ關係ナク
本件ノ特殊ナル事情ニ顧ミ日支兩國政府ニヨル兩國間紛爭問題ノ終局的且根本的解決ニ寄與センコトヲ希望シ
國際關係ニ影響ヲ及ホシ日支兩國間ノ平和又ハ平和ノ基礎タル良好ナル諒解ヲ攪亂セムトスル虞アル一切ノ事情ニ關シ實地ニ就キ調査ヲ遂ケ理事會ニ報吿センカ爲五名ヨリ成ル委員會ヲ任命スルニ決ス
日支兩國政府ハ委員會ヲ助クル爲各一名參與委員ヲ指名スルノ權利ヲ有シ兩國政府ハ委員會カ其ノ必要トスヘキ一切ノ情報ヲ實地ニ就キ入手センカ爲ノ各般ノ便宜ヲ委員會ニ供與ス
兩當事國カ何等カノ交涉ヲ開始スル場合ニハ右交涉ハ本委員會所定任務ノ範圍內ニ屬セサルヘク又何レカノ當事國ノ軍事的措置ニ苟モ干涉スルコトハ本委員會ノ權限ニ屬セサルモノト諒解ス
本委員會ノ任命及審議ハ日本軍鐵道附屬地撤收ニ關シ九月三十日ノ決議ニ於テ日本政府ノ與ヘタル約束ニ何等影響ヲ及ホスモノニ非ス
六、現在より一九三二年一月二十五日ニ開カルヘキ次回通常理事會期迄ノ間ニ於テ本件ハ依然理事會ニ繫屬スルモノニシテ議長ニ於テ本件經過ヲ注意シ若シ必要アラハ新ニ會合ヲ招集センコトヲ求ム
(ロ) 前項決議ニ關シ十二月九日「ブリアン」議長ハ左ノ宣言(假譯)ヲ爲セリ
茲ニ提出セラレタル決議ハ二ツノ方針ニ則リテ措置スルコトヲ規定シテ居ルモノテアル卽チ第一ハ平和ニ對スル直接ノ脅威ヲ終熄セシムルコトテアリ、第二ハ目下日支兩國間ニ存スル紛爭ノ原因ノ終局的解決ヲ容易ナラシムルコトテアル
日支兩國ノ關係ヲ攪亂セムトスル虞アル各般ノ事情ヲ調査スルコトハ夫レ自體寔ニ望マシキコトテアルカ今回ノ會期中兩當事國モ如此調査ヲ受諾スルノ用意アルコトヲ發見シタノハ理事會ノ欣快トスル所テアツテ從テ理事會ハ十一月二十一日ノ會議ニ於テ提議セラレタル委員會設置案ヲ歡迎シタ次第テアル本決議ノ末項ニハ右委員會ノ任命竝職能カ規定サレテアル予ハ茲ニ決議ニ就キ項ヲ逐フテ說明セムトスル
第一項 本項ハ九月三十日理事會カ全會一致ヲ以テ採擇セル決議ヲ再ヒ確認シ同決議中ニ記サレタル條件ノ下ニ日本軍カ成ルヘク速ニ鐵道附屬地內ニ撤收スルコトヲ特ニ强調スルモノテアル理事會ハ此ノ決議ヲ最モ重視シ且日支兩國政府カ其ノ九月三十日ニ爲シタル約束ノ完全ナル履行ニ努ムヘキコトヲ確信スル
第二項 前回ノ理事會以來事態ノ惡化ヲ來シ且當然ノ憂慮ヲ抱カシムルニ至リタル諸種ノ事件發生シタルハ不幸ナル事實テアツテ此ノ上戰鬪ヲ惹起スルコトアルヘキ一切ノ主動的行爲竝事態ヲ惡化セシムル虞アル其ノ他一切ノ行動ヲ差控フルコトハ此ノ際最緊要テアル
第四項 本項ハ紛爭當事國以外ノ諸理事國ニ於テ關係地ニ在ル自國代表者ヨリ接受スル情報ヲ引續キ理事會ニ提供センコトヲ請求スルモノテアル
此ノ種情報ハ過去ニ於テ頗ル價値アルモノナルコトヲ證シタルヲ以テ諸地點ニ斯ノ如キ代表者ヲ派遣シ得ル各國ハ現在ノ方法ヲ繼續シ且出來得ル限リ此ヲ改善スルコトニ同意シタ之カ爲日支兩國ニシテ希望スルニ於テハ此等代表者ヲ派遣スヘキ地點ヲ指示シ得ル樣右諸國ハ兩當事國ト接觸ヲ保タムコトヲ希望スル
第五項 本項ハ調査委員會ノ設置ヲ規定スルモノテアル本委員會ハ純然タル諮問機關ノ性質ヲ有スルモノナルモ其ノ所定任務ハ廣汎テアツテ苟モ國際關係ニ影響ヲ及ホシ日支兩國間ノ平和又ハ平和ノ基礎タル良好ナル諒解ヲ攪亂セムトスル虞アル事態ニ關スルモノナル限リ本委員會カ調査ノ要アリト思惟スル問題ハ原則トシテ何等除外サレテイナイノテアル
兩國政府ハ何レモ其ノ特ニ審査ヲ希望スル問題ニ付テハ之カ考慮ヲ委員會ニ請求スル權利ヲ持ツテ居ル又委員會ハ其ノ理事會ニ報吿スヘキ問題ヲ定ムルニ付充分ナル裁量ヲ有シ且望マシキ場合中間報吿ヲナス權能ヲ有スル
兩當事國ノ九月三十日ノ決議ニ依ル約束カ委員會到着ノ時迄ニ實行セラレサル場合ニハ委員會ハ成ルヘク速ニ理事會ニ對シ其ノ事態ニ付報吿スルコトヲ要スル
「兩當事國カ何等カノ交涉ヲ開始スル場合ニハ右交涉ハ本委員會ノ所定任務ノ範圍內ニ屬セサルヘク又何レカノ當事國ノ軍事的施設ニ苟モ干捗スルコトハ本委員會ノ權限ニ屬セサル」旨ヲ特ニ規定シテアル尤モ此ノ後段ノ規定ハ委員會ノ調査ニ關スル權能ヲ毫モ制限スルモノテハナイ
又委員會カ其ノ報吿ニ必要ナル情報ヲ得ル爲充分ナル行動ノ自由ヲ有スヘキコトモ明白テアル尙ホ「ブリアン」議長ハ十二月十日左ノ追加宣言ヲ爲セリ
「理事會ハ日本軍ノ完全ナル撤收ニ關シテ期限ヲ定メテ居ナイカ九月三十日ノ決議ニ示サレタル條件ノ下ニ日本軍ノ鐵道附屬地內撤收カ出來得ル限リ速ニ行ハレルコトヲ切實ニ期待スルコトニ於テハ何等渝ル所ハナイ」
(ハ)日本理事芳澤大使ハ前項決議ノ受諾ニ際シ左ノ留保宣言(假譯)ヲ爲セリ
理事會ニ提出セラレタル決議草案第二項ニ關シ
右ハ日本軍ニ於テ滿洲各地ニ猖獗ヲ極ムル匪賊竝不逞分子ノ活動ニ對シ日本臣民ノ生命財產ヲ直接保護スル爲ニ必要ナルヘキ行動ヲ執ルコトヲ妨クルノ趣旨ニ非ストノ諒解ノ下ニ日本政府ノ名ニ於テ本項ヲ受諾スルハ本理事ノ欣幸トスル所ナリ而シテ右ノ如キ軍事行動ハ滿洲現下ノ特殊狀況ニ基ク例外的措置ニシテ同地方ニ於テ正常狀態カ回復セラルルト共ニ自然其ノ必要ナキニ至ルヘシ
{本文中に第三項なし}