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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 停戰協定善後處理に關する申合事項(北平申合)(停戦協定善後処理に関する申合事項(北平申合))

[場所] 
[年月日] 1933年11月7日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,277-278頁.
[備考] 
[全文]

   昭和八年自十一月七日至十一月九日

停戰協定善後處理ニ關シ大連會議ノ要領ニ準シ昭和八年十一月七日ヨリ同月九日ニ亙リ關東軍代表陸軍少將岡村寧次、陸軍步兵大佐喜多誠一、大使館書記官花輸義敬ト華北軍政當局代表戰區接收委員殷同、北平軍委分會參事陶尙銘、駐平政整會參議殷汝耕ト北平ニ會同シ左ノ通申合ヲナス

第一、關東軍ハ華北當局カ其ノ治安維持機能ノ充實ニ伴ヒ長城線ヲ含マサル長城以南及以西ノ地域ヲ速カニ且完全ニ接收スルコトヲ希望ス

第二、華北當局ハ當分ノ內其ノ接收地域內ニ於テ長城ニ接續若クハ接近セル地域ニ交通、經濟等諸般ノ事項ヲ處理スル爲關東軍ノ指定スル必要ナル諸機關ノ配置ヲ認容シ且此等機關ノ業務ニ便宜ヲ與フルモノトス

第三、華北當局ハ接收地域內ニ於テ當分ノ內日本軍隊駐屯ノ爲必要ナル土地建物ヲ日本軍ニ貸與スルコトニ同意ス

第四、長城內外ニ於ケル交易、交通、通信等ヲ設定スル爲華北當局ハ必要ナル委員ヲ定メ關東軍ノ指定スル委員ト速カニ逐次協議ヲ進ムルモノトス

   本申合ニ關聯スル了解事項

一、申合事項第二、ノ諸機關ノ配置地點ハ差當リ左ノ如シ

山海關、古北口、喜峰口、潘家口、冷口、界嶺口

二、申合事項第三、ノ日本軍駐屯地點差當リ左ノ如シ

山海關、石門砦、建昌營、擡頭營、冷口、喜峰口、馬蘭峪、古北口

 但シ軍需品輸送ノ爲灤河水運利用間ハ必要ニ應シ灤州ノ外遷安、撤河橋等ニ所要ノ施設及警備部隊ヲ配置スルコトアルヘシ

三、申合事項第四、ノ交通トハ航空ノ聯絡ヲモ含ムモノトス

   支那側希望事項

    昭和八年十一月九日

北平ニ於テ爲セル申合事項ニ付將來ノ誤解紛糾ヲ避クル爲左ノ各項ニ對シ御諒承ヲ請フ

一、接收地域內ニ暫駐ノ日本軍隊及配置セル關東軍ノ指定スル諸機關ハ所在地ノ中國ノ行政ニ對シ一切關與又ハ妨害ノ如キ行爲ヲ爲ササルモノトス

二、本申合ニ依リ已ニ華北當局ノ同意ヲ經タルモノノ外如何ナル正規軍隊モ接收地域內ニ入ルコトヲ得ス

三、察東地區及多倫ノ接收ヲ完全ナラシムル爲關東軍ハ華北當局カ同地方ノ抗命部隊及土匪ヲ自由ニ討伐處置スルコトニ同意ス

   十一月九日支那側ノ提出セル希望事項ニ對スル關東軍ノ回答

    (十一月十五日北平武官宛發電)

一、希望事項第一ニ關シテハ接收地域內ニ於テ排日行爲ナク且ツ申合セ第二ノ趣旨カ完全ニ履行セラルルニ於テハ異存ナシ

二、希望事項第二ハ支那側ヲシテ撤回セシメラレ度

但支那側ニシテ停戰協定ニ違反セサル限リ滿洲國軍隊ノ接收地域內ニ入レサルコトニ關シテハ軍ニ於テ配慮スヘシ

三、希望事項第三ニ關シテハ停戰協定ノ根本ニ抵觸スルヲ以テ軍トシテハ同意スル能ハス

(北平以外ハ參考迄)