[文書名] 對中國國際援助問題に關する情報部長の非公式談話(天羽声明)(対中国国際援助問題に関する情報部長の非公式談話(天羽声明))
(四月十七日及二十日)
(イ)四月十七日情報部長ハ定期會見ノ際記者團ニ東亞ニ於ケル日本ノ立場ニ付左ノ趣意ノ非公式談話ヲ試ミタ。
日本ハ滿洲事變及滿洲國問題ニ關シテ昨年三月聯盟脫退ヲ通吿スルノ止ムヲ得サルニ至ツタカ、之ハ東亞ニ於ケル平和維持ノ根本義ニ就キ、日本ト國際聯盟トノ間ニ意見ノ相違ヲ見タ爲テアル。日本ハ諸外國ニ對シテ常ニ友好關係ノ維持增進ニ努メテ居ルノハ云フ迄モナイカ、東亞ニ關スル問題ニ就テハ、其ノ立場及使命カ列國ノ夫レト一致シナイモノカアルカモ知レナイ。日本ハ東亞ニ於ケル平和及秩序ノ維持ハ當然東亞ノ諸國ト責ヲ分ツヘキテアル。日本ハ東亞ニ於ケル平和及秩序ヲ維持スヘキ使命ヲ全フスル決意ヲ有シテ居ルカ、右使命ヲ遂行スルカ爲ニハ、日本ハ先ツ友邦支那ト共ニ平和及秩序ノ維持ニ努メナケレハナラナイ。
從ツテ支那ノ保全、統一乃至秩序ノ恢復ハ、日本ノ最切望スル所テア圍ル。併シ支那ノ保全、統一及秩序ノ恢復ハ、支那自身ノ自覺又ハ努力ニ待ツ他ナキハ、過去ノ歷史ニ徵シテモ明テアル。故ニ支那ニシテ、若シ他國ヲ利用シテ日本ヲ排斥シ東亞ノ平和ニ反スル如キ措置ニ出テ、或ハ夷ヲ以テ夷ヲ制スルノ排外策ヲ採ルカ如キ事アラハ、日本ハ之ニ反對セサルヲ得ナイ。他方列國側ニ於テモ、滿洲事變、上海事變カラ生シタ特殊ノ狀態ヲ考慮ニ入レ、支那ニ對シテ共同動作ヲ執ラントスル如キ事アラハ、假令名目ハ財政的又ハ技術的援助ニアルニセヨ、政治的意味ヲ帶フル事ハ必然テアツテ、若シ其ノ形勢カ助長セラルル時ハ、遂ニ支那ニ於ケル勢力範圍ノ設定トナリ、或ハ國際管理又ハ分割ノ端緖ヲ開クコトトナリ、支那ニ取ツテハ非常ナル不幸ヲ來タスノミナラス、東亞ノ安全惹ヒテハ日本ニ對シテモ重大ナル結果ヲ及ホス虞カアルノテアル。從テ日本ハ主義トシテ之ニ反對セサルヲ得ナイ。併シ各國カ支那ニ對シ個別的ニ經濟貿易上ノ交涉ヲナスカ如キハ、東亞ノ平和及秩序維持ニ支障ヲ及ホササル限リ、之ニ干涉スル必要ヲ認メナイ。併シ右ノ如キ行動カ東亞ノ平和及秩序ヲ攪亂スル性質ナラハ、之ニ反對セサルヲ得ナイ。例ヘハ武器、軍用飛行機等ヲ供給シ、軍事敎官ヲ派遣シ、政治借款ヲ起スカ如キ事ハ、結局支那ト日本其ノ他諸國トノ關係トヲ離間シ、極東平和及秩序ノ維持ニ反スル結果ヲ生スル事ハ明テアルカラ、日本トシテハ之ヲ默過スル事カ出來ナイ。
敍上ハ日本ノ從來ノ方針カラ當然演繹セラルヘキモノテアルカ、最近諸外國カ支那ニ對シ共同援助等ノ名義テ積極的進出ノ形跡顯著ナルモノアルカ故ニ、此ノ際我日本ノ立場ヲ明ニスルノモ必シモ徒爾ナラスト信スルモノテアル。
(ロ)四月二十日情報部長ハ外國新聞記者トノ定期會見ニ於テ質問ニ應シ、前記ノ談話ニ付左ノ通說明ヲ加ヘタ。
余ハ先日ノ談話ニ對スル海外ノ反響ヲ意外トシテ居ル。先日ノ談話ハ今年一月外務大臣ノ議會ニ於ケル演說ノ趣旨ヲ敷衍シタニ過キナイ。此ノ演說ハ世界ニ好感ヲ以テ迎ヘラレタノテアル。
外務大臣ハ議曾ニ於テ
「帝國ハ東亞ニ於ケル平和維持ノ唯一ノ礎トシテ其ノ全責任ヲ荷フモノテアリマスカラ、吾人ハ一日モ此ノ意識ヲ離レテハナラヌノテアリマス」云々又
「米國側ニ於テモ複雜ニシテ特異ナル東亞ノ事態ヲ十分ニ認識シ、我國カ東亞平和ノ安定力タル所以ヲ諒解スルニ於キマシテハ、日米間ノ感情ノ緊張ハ自ラ緩和セラルヘキヲ確信シテ疑ハサル次第テアリマス」云々又
「帝國政府ハ東亞ニ於ケル平和ノ維持ニ付重大ナル責任ヲ感シ、且確固タル決意ヲ有スルモノテアリマス」云々
ト述ヘラレテ居ル。
日本ハ支那ノ獨立及權益ヲ侵害スル意思ハナイ。日本ハ支那ノ保全、統一及繁榮ヲ希望シテ居ル。若シ支那カ統一セラレ繁榮ヲ見ル場合ハ、日本ハ地理的關係ヨリ其ノ利益ヲ分タルヘキ立場ニアル。然シ統一及繁榮ハ支那自身ノ覺醒及努力ニ待ツヘキモノテ、他國ノ利己的開發ニ依ル可キテナイ。
日本ハ第三國ノ權利ヲ害スル意思ハナイ。第三國カ支那人ノ利益ノ爲ニ支那ト通商上ノ取引ヲナスハ日本ハ之ヲ歡迎スル。日本ハ素ヨリ支那ニ於ケル門戶開放及機會均等主義若クハ現ニ有效ナル諸取極ヲ無視スル意思ハナイ。併シ日本ハ各國カ如何ナル形ニ於テモ東亞ノ平和及秩序ノ攪亂ニ導ク行動ヲ爲スコトニ對シテ反對スル。日本ハ東亞ニ於ケル平和秩序ノ維持ニ就テハ、東亞ノ諸國殊ニ支那ト其ノ責ヲ分ツノテアル。諸外國又ハ聯盟カ支那ニ對シ利己本位ノ政策ヲ實行スル時代ハ過キ去ツタ。
(ハ)外務大臣ハ四月二十六日駐日英、米兩國大使ノ質問ニ對シ、四月二十日頃ノ係官ノ應答ハ大體帝國政府ノ立場ヲ說明シテ居ルモノテアルトテ左ノ如キ應答要領譯文ヲ交附シタ。
(一)日本ハ何等支那ノ獨立性ヲモ又其ノ利益ヲモ害シタルコトナク、又之ヲ害セントスル意志モナイ許リテナク、衷心カラ其ノ保全、統一及繁榮ヲ希望スル。而シテ支那ノ保全、統一及繁榮ハ主義トシテ支那自身ノ覺醒及努力ニ委セラルヘキモノテアル。
(二)日本ハ支那ニ於ケル第三國ノ如何ナル利益ヲモ害セントスル意向ヲ有シナイ。第三國カ善意ヲ以テ經濟通商上ノ取引ヨリ支那ニ接スルコトハ支那ノ爲ニ利益ヲ齎スヘク、日本トシテハ寧ロ之ヲ歡迎スルモノテアル。日本ハ素ヨリ支那ニ於ケル門戶開放、機會均等等ノ主義ヲ支持シ、又支那ニ關スル現ニ有效ナル諸條約及取極ヲ遵守スルモノテアル。
(三)。併シ乍ラ日本ハ如何ナル形ニ於テモ東亞ノ平和及秩序維持ニ反スル行動ヲ取ルモノニ對シテハ默視スルコトヲ得ナイ。日本ハ東亞ニ於ケル其ノ地理的地位ニモ顧ミ、同方面ノ平和及秩序ノ維持ニ付テハ最緊切ナル關心ヲ有スルモノテアツテ、從テ支那問題ニ付テハ、如何ナル第三者ト雖右ノ事情ヲ考慮ニ入レサル自己本位ノ政策實行ノ爲ニ之ヲ利用スルコトヲ默過シ得ヌ次第テアル。