データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「貿易調節及通商擁護ニ關スル法律」施行に關する外務當局談(「貿易調節及通商擁護ニ関スル法律」施行に関する外務当局談)

[場所] 
[年月日] 1934年4月30日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,282-284頁.
[備考] 
[全文]

四月三十日公表

過般議會ノ協賛ヲ得四月七日附官報ヲ以テ公布セラレタ「貿易調節及通商擁護ニ關スル法律」ハ、來ル五月一日ヨリ施行セラルヘキコトニ決定シ、本日附ノ官報ヲ以テ右ニ關スル勅令カ公布セラレタ。

同法ハ最近世界通商上ニ於テ有無相通スル經濟原則ニ則リ、國際的協力ニ依リ人類福祉ノ增進ニ貢獻セントスル精神カ乏シクナリ、或ハ高率ナル關稅ヲ課シ、或ハ輸入ヲ制限スル等ノ方法ニ依リ外國品ノ輸入ヲ抑止セントスル傾向强ク、殊ニ我國ノ輸出貿易ニ對シ障壁ヲ築カントスルモノカ漸ク多キヲ加ヘントスル樣ナ情勢ニ在ルノテ、各國ノ措置如何ニ依リテハ之ニ對應シテ貿易ヲ調節シ、以テ國際收支ノ均衡ヲ圖リ、又ハ通商ヲ擁護スル爲臨機應變ノ措置ヲ執ルノ必要アルコトヲ慮リ制定セラレタモノテアルカ、我國トシテハ固ヨリ自ラ好ンテ國際間ニ事端ヲ滋カラシメントスルカ如キ態度ニ出ツル考ヘハナク、寧ロ本法ヲ活用スルノ必要ヲ生スルカ如キ機會ノ生セサランコトヲ希望スルモノテアル。

同法全文ハ次ノ通テアル。

   貿易調節及通商擁護ニ關スル法律

第一條 政府ハ外國ノ執リ又ハ執ラントスル措置ニ對應シテ貿易ヲ調節シ又ハ通商ヲ擁護スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ關稅調査委員會ノ議ヲ經テ期間及物品ヲ指定シ關稅定率法別表輸入稅表ニ定ムル輸入稅ノ外其ノ物品ノ價格ト同額以下ノ輸入稅ヲ課シ若ハ輸入稅ヲ減免シ又ハ輸出若ハ輸入ノ禁止若ハ制限ヲ爲スコトヲ得

第二條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依リテ爲ス禁止又ハ制限ニ關係アル事項ニ付報吿ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢査ヲ行フコトヲ得

第三條 第一條ノ規定ニ依リテ爲ス禁止又ハ制限ニ違反シテ輸出若ハ輸入ヲ爲シ又ハ爲サントシタル者ハ二年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ七千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ犯罪ニ係ル物品ノ價額ノ三倍カ七千圓ヲ超ユルトキハ罰金ハ當該價額ノ三倍以下トス

 前條ノ規定ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ報吿ヲ爲サス虛僞ノ報吿ヲ發シ帳簿其ノ他ノ檢査ヲ拒ミ又ハ帳簿書類ノ隱蔽不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ依リ檢査ヲ妨ケタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス本法ニ基キテ發スル勅令ニ依リ政府ニ提出スル許可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者亦同シ

第四條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者カ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前條ノ罰金刑ヲ課ス

第五條 本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者カ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者カ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ付亦同シ

   附則

本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

本法ハ施行後三年間ヲ限リ其ノ效力ヲ有ス

前項ノ期間內ニ爲サレタル本法ニ依リ處罰セラルル行爲ニ付テハ

本法ノ罰則ハ前項ノ期間經過後ト雖モ仍之ヲ適用ス