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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北滿鐵道讓渡協定假調印に関する公表(北満鉄道譲渡協定仮調印に関する公表)

[場所] 東京
[年月日] 1935年3月23日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,289頁.
[備考] 1936年3月11日公表
[全文]

   (昭和十一年三月十一日公表)

本日外務省ニ於テ滿洲國及「ソヴイエト」聯邦ノ各代表ニ依リ北滿鐵道(東支鐵道)ニ關スル「ソヴイエト」社會主義共和國聯邦ノ權利ヲ滿洲國ニ讓渡スル爲ノ協定及之ニ附屬スル最終議定書ニ假調印ヲ了シ、尙右ニ關聯シ帝國外務大臣及右兩國代表ニ依リ一ノ議定書ニ、又帝國外務大臣及在本邦「ソヴイエト」聯邦大使ニ依リ日「ソ」間交換公文ニ夫々假調印カ了セラレタ。

右北滿鐵道讓渡協定ハ正式署名ト同時ニ實施セラレ、之ト共ニ「ソヴイエト」聯邦ノ北滿鐵道(附帶事業及財產等ヲ含ム)ニ關シテ有スル一切ノ權利ハ滿洲國政府ニ讓渡セラレ、滿洲國ハ之ニ對シ代償額一億四千萬圓ヲ支拂ヒ、尙解雇セラルル「ソ」聯籍北鐵從業員ニ對スル各種退職金約三千萬圓モ滿洲國政府ニ於テ負擔スルコトトナツタ。而シテ右代償額中約三分ノ一ノ決濟ハ現金ヲ以テ三年間ニ行ヒ、又殘餘約三分ノ二ノ決濟ハ在本邦「ソヴイエト」聯邦通商代表部カ日滿兩國ノ人民又ハ法人ヨリ購入スル日本國又ハ滿洲國ノ生產又ハ製造ニ係ル商品ニ付滿洲國政府カ三年間ニ其ノ代金ヲ支拂フコトニ依ツテ行ハルルテアラウ。又日滿「ソ」三國間ノ議定書ハ右協定ニ基ク商品取引ヲ確保スルコトヲ目的トスルモノテアル。更ニ又日「ソ」間ノ交換公文ハ滿洲國ノ協定履行ニ關聯スル保障ニ關スルモノテアルカ、尙右ニ關聯シ日滿間ニ公文ノ交換ヲ行フコトトナツタ。

(附)支拂保障に關する往翰

以書翰啓上致候陳者本日「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦及滿洲國ノ全權委員ニ依リ署名セラレタル北滿鐵道(東支鐵道)ニ關スル「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ權利ヲ滿洲國ニ讓渡スル爲ノ協定ノ規定ニ從ヒ滿洲國政府カ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ニ對シテ負フ一切ノ支拂義務ノ滿洲國政府ニ依ル履行ニ關シ本日日本國政府カ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ニ與ヘタル保障ノ結果トシテ本大臣ハ閣下ニ左ノ如ク通報スルノ光榮ヲ有シ候

 滿洲國政府ニ依ル支拂ノ實行ニ關聯シ何等カノ困難生スルカ如キ場合ニハ日本國政府ハ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府カ滿洲國政府ノ之ニ對シテ負ヘル一切ノ支拂ヲ全部且前記協定ニ依リ定メラレタル各期間內ニ受ケ以テ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府カ右困難ニ關聯シテ絕對ニ何等ノ損失ヲ蒙ラサル爲當該事情ノ下ニ於テ必要ナル一切ノ努力ヲ爲スヘシ

本大臣ハ茲ニ閣下ニ向テ重ネテ敬意ヲ表シ候 敬具

昭和十年(千九百三十五年)三月二十三日東京ニ於テ

廣田弘毅

日本國駐箚「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦特命全權大使

「コンスタンチン、ユーレネフ」閣下