データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中國幣制改革問題に關する非公式外務當局談(中国弊制改革問題に関する非公式外務当局談)

[場所] 
[年月日] 1935年11月9日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,308-309頁.
[備考] 
[全文]

   (十一月九日)

支那今回ノ幣制改革ニ付テハ未タ前途ノ見通シ十分ツキカヌルヲ以テ、帝國トシテハ愼重ニ成行ヲ注視シテ居ル次第テアルカ

(イ)抑々本件ノ如キ重要問題ノ決行ニ當リテハ、東亞ニ於ケル日支ノ關係ニ鑑ミ、當然我方ト十分ナル協議ヲ行ヒ我方ノ協力ヲ確メタル上之ヲ行フヘキ筋合ナルニ、今回ノ如ク突如決行ヲ聲明シ、爲ニ本件實施ノ前途ニ一沫ノ不安ヲ與ヘタルハ我方トシテモ甚タ遺憾トスル所テアル。

(ロ)本件幣制改革ト關連シ英國トノ借款問題喧傳セラレ居ルモ、外國トノ借款問題ニ付テハ未タ支那側ヨリ我方ニ何等申出アリタルコトナキノミナラス、支那側及英國側雙方ヨリ英國トノ借款ト本件改革トハ何等ノ關係ナキ旨言明シ居レルハ當然ノコトト思ハル。

 蓋シ支那ノ全般的經濟改革ノ爲ニハ支那自ラ之ヲ行フノ決意ト實行トヲ必要トスル次第ニシテ、從來ノ如ク外國ヨリノ借款ニヨリ經濟的ノ安定ヲ圖ラントスルカ如キコトハ到底成功ヲ期シ得サルノミナラス、右借款ハ結局支那國民ノ將來ノ負擔トシテ殘サレ、支那ノ財政整理ヲ愈困難ナラシムルモノナルニ依リ、斯ノ種ノ借款ニ對シテハ我方トシテハ常ニ反對ノ態度ヲトリ來レル次第テアルカ、今回ノ如ク支那側カ自力更生ノ決意ヲ聲明シ居ル際、外國ヨリ借款ヲ與フル如キハ折角ノ支那側ノ決意ヲ鈍ラシムルコトトモナリ、尙更支那ノ爲ニモ面白カラサル結果トナルモノト思ハル。