データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 華北派兵に關する聲明(華北派兵に関する声明)

[場所] 
[年月日] 1937年7月11日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,366頁.
[備考] 
[全文]

昭和十二年(一九三七)七月十一日夕刻發表

相踵ク支那側ノ侮日行爲ニ對シ支那駐屯軍ハ隱忍靜觀中ノ處、從來我ト提携シテ北支ノ治安ニ任シアリシ第二十九軍ノ、七月七日夜半蘆溝橋附近ニ於ケル不法射擊ニ端ヲ發シ、該軍ト衝突ノ已ムナキニ至レリ。爲ニ平津方面ノ情勢逼迫シ、我在留民ハ正ニ危殆ニ瀕スルニ至リシモ、我方ハ和平解決ノ望ヲ棄テス事件不擴大ノ方針ニ基キ局地的解決ニ努力シ、一旦第二十九軍側ニ於テ和平的解決ヲ承諾シタルニ不拘、突如七月十日夜ニ至リ、彼ハ不法ニモ更ニ我ヲ攻擊シ再ヒ我軍ニ相當ノ死傷ヲ生スルニ至ラシメ、而モ頻ニ第一線ノ兵力ヲ增加シ更ニ西苑ノ部隊ヲ南進セシメ、中央軍ニ出動ヲ命スル等武力的準備ヲ進ムルト共ニ平和的交涉ニ應スルノ誠意ナク遂ニ北平ニ於ケル交涉ヲ全面的ニ拒否スルニ至レリ。

以上ノ事實ニ鑑ミ今次事件ハ全ク支那側ノ計畫的武力抗日ナルコト最早疑ノ餘地ナシ。

思フニ北支治安ノ維持カ帝國及滿洲國ニトリ緊急ノ事タルハ茲ニ贅言ヲ要セサル處ニシテ、支那側カ不法行爲ハ勿論支那側ノ排日侮日行爲ニ對スル謝罪ヲ爲シ、今後斯カル行爲ナカラシムル爲ノ適當ナル保障等ヲナスコトハ東亞ノ平和維持上極メテ緊要ナリ。仍テ政府ハ本日ノ閣議ニ於テ重大決意ヲ爲シ、北支出兵ニ關シ政府トシテ執ルヘキ所要ノ措置ヲナス事ニ決セリ。

然レトモ東亞平和ノ維持ハ帝國ノ常ニ顧念スル所ナルヲ以テ、政府ハ今後共局面不擴大ノ爲平和的折衝ノ望ヲ捨テス、支那側ノ速カナル反省ニヨリテ事態ノ圓滿ナル解決ヲ希望ス。又列國權益ノ保全ニ就テハ固ヨリ十分之ヲ考慮セントスルモノナリ。