[文書名]　陸海外三省事務當局協議會に提出の日独伊提携强化案（陸海外三省事務当局協議会に提出の日独伊提携強化案）

　　　　昭和十五年七月十二日起案

一、提携强化ノ目的

現下ノ國際變局ニ處シ南洋ヲ含ム東亞新秩序建設ニ邁進スル帝國ト歐洲ニ於テ新秩序建設ニ戰ヒツツアル獨伊トノ間ニ速カニ緊密ナル協力關係ヲ具現シ帝國ノ目的達成ヲ容易ニスルト共ニ歐洲戰後ノ世界情勢ニ對處シテ帝國ノ國際的立場ヲ强固ニセントス

二、日獨提携

　　方針

日獨兩國相互ニ密接ナル聯絡ヲ保持シ且外交上及經濟上ノ支援ヲ與フルコトニ付具體的ナル政治的了解ヲ遂クルモノトス

　　要領

（一）（イ）獨逸ハ日本ニ對シ左記ヲ約ス

　一、佛印蘭印其ノ他南洋地方諸民族ノ自治又ハ獨立ニ干涉セス右地方カ日本ノ生存圈內ニアルヲ認メ右地方ニ對スル日本ノ政治的指導及協力ヲ容認シ之ヲ支持ス

　一、支那事變處理ノ爲ニ適當ナル支持ヲ與フ

　一、歐洲及「アフリカ」トノ通商其ノ他ノ經濟關係ニ關シ好意的考慮ヲ加フ

　　　（ロ）　日本ハ獨逸ニ對シ左記ヲ約ス

　一、獨逸ノ歐洲及「アフリカ」ニ於ケル政策ヲ支持シ獨逸指導下ノ歐洲新秩序ヲ容認ス

　一、英國ノ屈服ヲ容易ナラシムル爲東亞ニ於テ出來得ル限リノ牽制手段ヲ執ル

　一、獨逸ノ必要トスル支那及南洋ニ於ケル獨逸ノ經濟活動ニ好意的考量ヲ加フ

（二）　日獨兩國ハソ聯トノ平和維持ニ協力スルコト、萬一其ノ一方カ「ソ」聯ト戰爭狀態ニ入ル場合ニハ他方ハ「ソ」聯ヲ援助セサルノミナラス、右ノ場合及日獨兩國ノ一方ガソ聯ノ脅威ヲ受クル場合兩國ハ執ルヘキ措置ニ關シ協議スルコトトス

（三）　日獨兩國ハ米國ヲシテ米大陸以外ノ他方面ニ容喙セシメサル樣協力シ米國カ日獨何レカニ對シ政治的又ハ經濟的壓迫ヲ爲ス場合日獨共ニ米國ヲ牽制スルカ如キ政策ヲ執リ、支持スルカ如キ政策ヲ執ラサルコトトス

（四）　獨側ヨリ我方ノ參戰義務應諾ヲ主張スル場合現段階ニ於テハ之ヲ受諾セス

（五）　來栖大使リ外相ト交涉スルヲ可トスルモ右カ不可能ナラハ東京ニテ之ヲ行フ

三、日伊ノ提携

獨トノ交涉ト併行シテ羅馬ニ於テ伊太利トノ交涉ヲ開始ス其ノ內容ハ大體獨ニ準シ伊太利ノ歐洲及「アフリカ」ニ於ケル政策ヲ支持シ、地中海ヲ中心トスル新秩序ヲ容認スルト共ニ他ハ獨ニ對スルモノト同シ