データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] バタヴィアにて芳澤代表提出の我方第二次要求及蘭側回答

[場所] 
[年月日] 1941年5月14日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,506-521頁.
[備考] 
[全文]

   (昭和十六年五月十四日)

(入國、企業、交通通信問題ニ關スル要求邦譯文)

  覺書

日本代表部ハ、一九四一年一月十六日和蘭代表部ニ對シテ其ノ提出セル覺書ヲ再考慮シ、次ノ新提案ヲ和蘭代表部ニ對シテ茲ニ提出ス。但シ日本代表部ハ、前記覺書ノ前文ニ表明セラレタル日本側見解ハ日本政府ノ依然堅持スル所ナル旨明確ナラシメ置キ度シ。

(一)、入國關係

 (イ)、蘭印政府ハ日本人從業員ノ入國ニ付關係者ヨリ許可ノ申請アル場合現行法令ノ範圍內ニ於テ事情ノ許ス限リ多數且迅速ニ許可方好意的考慮ヲ加へ少クトモ年千六百名迄ハ許可ヲ與フヘシ。

 (ロ)、從業員交替許可申請者及許可延長申請者竝入國ノ目的カ一時的ナル者ハ(イ)ノ項ニ包含セラレス。

 (ハ)、日本人ノミノ治療ニ從事スル目的ヲ以テ渡來スル日本人醫師(齒科醫ヲ含ム)ノ入國開業ハ各地方ニ於ケル必要ヲ考慮シ全體トシテ一定數ヲ限リ之ヲ許可スヘシ尤モ外領ニ於ケル日本人ノ企業ニ關係スル日本人從業員ノ治療ニ從事スルコトヲ許可セラレタル日本人醫師(齒科醫ヲ含ム)ハ要スレハ當該外領ニ於ケル日本人企業ニ關係スル日本人以外ノ從業員又ハ使用人ヲモ治療スルコトヲ得。

(二)、企業及營業關係

 蘭印政府ハ日本人單獨又ハ合辨ノ各種企業及營業ノ新設又ハ擴張等ニ關シ關係者ヨリ承認又ハ許可ノ具體的申請アル場合其ノ都度之ヲ好意的ニ審議シ國防上ノ理由ニ依リ又ハ蘭印人ノ爲保留スルノ必要上特別ノ支障ナキ限リ計晝遂行上必要ト認メラルル事前調査ヲ許容シ且右新設又ハ擴張等ヲ承認又ハ許可スルト共ニ右承認又ハ許可ノ上ハ從業員ノ雇傭及運搬施設其ノ他必要ナル設備ヲ施スコト等ニ付出來得ル限リ好意的ニ取計ヒ必要ナル便宜ヲ供與スヘシ殊ニ蘭印政府ハ

 (イ)、鑛業ニ關シ日本人企業家ヨリ探鑛又ハ採鑛ノ許可申請アル場合之ヲ好意的ニ審議シ特別ノ支障ナキ限リ許可スヘシ尙政府保留地域內ニ於ケル鑛業ニ付日本人企業家ヨリ鑛業法第五條Aニ基キ探鑛又ハ採鑛ノ許可申請アリタル場合ニ付テモ亦同シ

 (ロ)、水產業ニ關シ日本人關係者ヨリ具體的ニ許可申請アル場合國防上ノ理由ニ依リ又ハ蘭印人特ニ土人ノ爲保留スルノ必要上特別ノ支障ナキ限リ之ヲ許可スヘク又日本人水產業ニ關係スル從業員ノ雇傭及其ノ經營ノ爲必要ナル附帶施設ヲ設クルコト等ニ付テモ好意的ニ取計ヒ必要ナル便宜ヲ供與スヘシ

 (ハ)、商業及各種營業ニ關シ日本人ヨリ許可申請ヲ爲ス場合特別ノ支障ナキ限リ之ヲ許可スヘク倉庫業其他旣ニ營業制限令ノ適用ヲ受ケ居ルモノニ付テモ具體的ニ申請アラハ個々ノ場合ニ付好意的考慮ヲ加へ特別ノ支障ナキ限リ之ヲ許可スヘシ

(三)、交通通信關係

 (イ)、蘭印政府ハ日蘭印間ノ航空發達ハ兩國經濟關係ノ緊密化ニ寄與スル所大ナルヘキヲ以テ將來適當ノ機會ニ日蘭印間直通航空事業ノ開設方ニ付日本政府ト協力スヘク尙差當リ盤谷及西貢其他ニ於ケル日蘭機連絡ノ改善方ニ付日本政府ト協力スヘシ

 (ロ)、日蘭印間ノ電信連絡ニ關シテハ蘭印政府ハ安全且能率的ナル通信ヲ建設スル爲將來適當ノ機會ニ技術的ニ最新式ナル海底電線ヲ日本ノ管理下ニ建設スルコトニ付日本政府ト協力スヘク尙差當リ「マラバル」無電對日連絡改善方竝「ヤップ」「メナド」間海底電線利用方ニ付日本政府ト協力スヘシ

 (ハ)、沿岸航海ニ關シテハ旣存ノ日本人企業ニシテ事業ノ進行ニ伴ヒ沿岸航海自營ノ必要痛感セラルルモノニ付テハ前項ニ申請アル場合竝新規ノ日本人企業ニシテ事業ノ進行ニ伴ヒ沿岸航海自營ノ必要豫想セラルルモノニ付テハ最切ヨリ事業計晝ノ一部トシテ申請アル場合蘭印政府ハ國防上ノ理由ニ依リ特別ノ支障ナキ限リ之ヲ許可スヘシ

  尙蘭印政府ハ旣ニ日本人ニ許可シ居ル沿岸航海ニ關シ日本人關係者ヨリ日本人船舶ノ隻數又ハ噸數增加ノ必要アリトシテ許可申請アル場合ニハ特別ノ支障ナキ限リ之ヲ許可スヘキコト及右旣存船舶ノ運行經營及沿岸貿易ヲ困難ナラシムルノ意圖ナキコトヲ言明ス

 (ニ)、日本人企業ノ經營又ハ生產ノ增大若クハ日蘭印間貿易ノ增進ニ伴ヒ不開港場ヲ特定產物ノ爲ノ開港場若クハ一般的開港場ト爲スノ必要生スルニ至リ關係業者ヨリ要請アル場合ニハ蘭印政府ハ特別ノ支障ナキ限リ右要請ニ應スヘシ

 (ホ)、日本向物資積出ノ爲日本船舶ノ不開港場寄港ヲ必要トスル場合關係者ヨリ申請アラハ蘭印政府ハ特別ノ支障ナキ限リ之ヲ許可スヘク又其ノ手續ヲ迅速且容易ナラシムルヘシ


(五月十四日蘭側ニ提出セル日本品ニ對スル蘭印輸入割當要求邦譯文)

第一表

統計番號品 名(A)蘭印輸入許可數量ニ對スル日本品ノ輸入割當要求百分比率(B)日本品ニ割當テラルヘキ最低數量
二五一    セメント             一〇〇・〇一三〇、〇〇〇千B瓩
一三二麥酒(スタウト以外ノ瓶詰)
晒綿布
八〇・〇二、〇〇〇千立
一五四三‐一五五一キヤムブリツクス一〇〇・〇一〇四、四〇〇千米
一五五二‐一五五六キヤムブリツクス、シャーティングス、エレフアント及マダホラムス一〇〇・〇
一〇〇・〇
一、二〇〇千米
二五、三〇〇千米
一五六六ドリル、ジンス及トウイル一〇〇・〇二〇、五〇〇千米
一五六七‐一五六九サテン、フランネル及其他ノ晒綿布 未晒綿布一〇〇・〇一二、五〇〇粁
一五二三及一五二四キヤリコツト九七・〇七、〇〇〇千米
一五二五シャーティングス(スーパー)及其他特記セサル平織物、幅二九吋以下、(糸數三五本以下)九七・〇二、〇〇〇千米
一五二六同 幅三〇‐三三吋、(糸數三五本以下)九七・〇一〇、三〇〇千米
一五二七及一五二八同 幅三四‐三六吋、(糸數三七本以下)九八・〇三四、六〇〇千米
一五二九同 幅三七‐四一吋、(糸數三二本以下)一〇〇・〇二、四〇〇千米
一五三〇同 幅四二吋以上、(糸數三六本以下)一〇〇・〇二九、一〇〇千米
一五三一及一五三二ジャパンシャティングス幅三六吋以下九二・〇六、四〇〇千米
一五三三同 幅三七吋以上一〇〇・〇三、五〇〇千米
一五三四ドリル及ジンス、幅二二吋以下、糸數三二本以下一〇〇・〇‐‐
一五三五同 幅二三吋以上、糸數三二本以下一〇〇・〇七、六〇〇千米
一五三六同 幅三〇吋以下、糸數三三‐三七本一〇〇・〇四〇〇千米
一五三七同 幅三一吋以上、糸數三三‐三七本一〇〇・〇一七〇千米
一五三八同 幅二八吋以下、糸數三八本以上一〇〇・〇三六〇千米
一五三九同 幅二九吋以上、糸數三八本以上一〇〇・〇九、二〇〇千米
一五四〇其ノ他ノ未晒綿布八五・〇‐‐
七四〇鑄鐵製フライ鍋八五・〇二〇〇千B瓩
四六六及一四六六窓硝子(無色透明)八七・〇七〇〇千方米
四七四及四七五硝子水呑コップ、無色(非切子)一〇〇・〇八〇〇千打
四七八及四七九硝子封度瓶。普通品一〇〇・〇一六〇千打
四八二及四八三硝子ランプホヤ(非雲母製)一〇〇・〇一、四〇〇千打
七四二‐七四五エナメル製鍋、辨當箱、洗面器及湯沸九三・〇五〇〇千打
七四六エナメル製皿、指洗、コップ匙及特記セサル臺所竝食卓用品九三・〇三、四〇〇千B瓩
八三三自轉車(自動自轉車ヲ除ク)一〇〇・〇二六、〇〇〇臺
八三四同 部分品及附屬品、特記セサルモノ一〇〇・〇六、三〇〇千B瓩
四八〇自轉車及懷中電燈用電球七一・〇七、五〇〇千個
一四八〇自動車用電球八八・〇二三〇千個
二四八〇家庭用電球九八・〇四、四〇〇千個
九〇八齒刷子八〇・〇三六〇千打
九一三ペンナイフ一〇〇・〇九〇千打
九一四各種鋏(バリカンヲ含ム)一〇〇・〇一〇〇千B瓩
九一五家庭用ナイフ五五・〇七〇千打
九一六剃刀及同刃九六・〇四〇千B瓩
九一七其ノ他ノ刃物八四・〇二六千B瓩
九三六石油ランプ及同部分品錻力笠付提ランプ一〇〇・〇二〇千打
九三七同 硝子笠付提ランプ一〇〇・〇‐‐
九三八同 壁掛ランプ一〇〇・〇三〇〇千打
九三九同 特記セサルモノ 浴用タオル一〇〇・〇一八〇千B瓩
一六二八
綿製浴用タオル(打一、三二〇瓦以下)
同(同以下)            }
九〇・〇三六〇千打
一六二二綿毛布一〇〇・〇九〇〇千枚
一六二四兵隊毛布 衞生陶器一〇〇・〇一一〇千枚
四四八移動式衞生陶器及同部分品八〇・〇‐‐
四四九固着式衞生陶器九八・〇三四〇千B瓩
一四四九同 部分品及附屬品 陶器九八・〇一三〇千B瓩
四二三‐四三五
四三七‐四四三
四四五
粗製陶器特記セサルモノ
              }
上質陶磁器特記セサルモノ
一〇〇・〇三、九〇〇千打
四三六粗製陶器其ノ他ノモノ五〇・〇六六〇千B瓩
四四四、四四六及四四七支那製飯碗及匙、其他ノ特記セサル上質陶磁器竝ニ組物及同部分品アスパラカス皿、パイ皿、盤、スープ入、菓子入及其他ノ特記セサル高級陶磁器製食器、飯器用器、卓用道具(金屬製口金ノ有無ヲ問ハス)竝ニ化粧卓子用具及其他ノ特記セサル陶磁器製各種奢侈品
石鹼
九〇・〇三、六〇〇千B瓩
四一八化粧石鹼五〇・〇七〇〇千B瓩
四一九‐四二一洗濯石鹼及其ノ他ノ石鹼
綿縫糸
六六・〇五六〇千B瓩
一五一一‐一五一二綿縫糸、ボビン卷一〇〇・〇六、五〇〇、〇〇〇千米
一五一三‐一五一四同 球卷一〇〇・〇五〇〇千B瓩
一五一七同 其他一〇〇・〇一一〇千B瓩
六二〇包裝紙、統計番號六一九ニ該當セサル其ノ他ノモノ
織物
九七・〇一二、〇〇〇千B瓩
一五七〇色染綿布、キャンブリックス一〇〇・〇三四、〇〇〇千米
一五七一同 ジンス、ドリル、トウイル、幅二六吋以下一〇〇・〇五〇〇千米
一五七二同 同 黑染物、幅二七‐二八吋、糸數三二本以下一〇〇・〇四六、〇〇〇千米
二五七二同 同 黑染以外、幅二七‐二八吋糸數三二本以下一〇〇・〇二一、二〇〇千米
三五七二同 同 幅二七吋以上糸數三三本以上九三・〇一二、三〇〇千米
四五七二同 同 幅二九吋以上糸數三二本以上八五・〇‐‐
一五七三色染綿布朱子、イタリアン、ラスチユブ及ヴエネシアン竝ニ上記ノブロツシエ物一〇〇・〇一、二〇〇千米
一五七四同 綿ネル一〇〇・〇一、〇〇〇千米
一五七五同 上記以外ノモノ及其他ノブロツシエ物幅二四吋以下、糸數三二本以下九六・〇二三、四〇〇千米
二五七五同 同 幅二四吋以上、糸數三三本以上八四・〇‐‐千米
一五七六同 同 幅二五吋以上一〇〇・〇三〇、九〇〇千米
一五七七捺染綿布、ドリル、ジンス、トウイル、立縞捺染物、幅二八吋以下糸數三三本以下一〇〇・〇二四、二〇〇千米
二五七七同 同 右以外ノモノ一〇〇・〇‐‐千米
一五七八同 朱子一〇〇・〇‐‐千米
一五七九同 綿ネル一〇〇・〇‐‐千米
一五八二同 上記以外ノ捺染物幅二四吋以下、糸數三二本以下一〇〇・〇八六、四〇〇千米
二五八二同 同 幅二四吋以下糸數三三本以上九六・〇‐‐千米
一五八三同 同 幅二五吋以上一〇〇・〇三三、三〇〇千米
一五八四糸染綿布ドリル、ジンス及トウイル幅二四以下糸數三三本以上白地物(ルーリツクヲ除ク)一〇〇・〇六九、四〇〇千米
二五八四同 同 其ノ他ノモノ一〇〇・〇九〇〇千米
一五八九糸染綿布綿ネル九八・〇‐‐千米
一五九〇同 柳條布(ベツトクロス)一〇〇・〇六、七〇〇千米
一五九一同 上記以外ノモノ幅二四吋以下 糸數二六本以下(サロン制限令ニ含マレルモノヲ除ク)九八・〇八、九〇〇千米
二五九一糸染上記以外ノモノ幅二四吋以下糸數二七本以上九六・〇‐‐千米
一五九二同 同 幅二五吋以上九八・〇一八、二〇〇千米
一五九四蚊帳地用織物(「テユール」ヲ含ム)一〇〇・〇五、八〇〇千米
一五九六綿ボイル及半ボイル一〇〇・〇三、七〇〇千米
二五九六綿アジユール物、金銀箔捺染物、マーセライズ物、絹交織物及其他特殊物一〇〇・〇二、五〇〇千米
一五九七‐一六〇八綿サロン、カインバンジヤン、スレンダン、カインカパラ等九五・〇二〇〇千コルゼ
一六一〇及一六一三毛織物及毛交織物一〇〇・〇三一〇千B瓩
一六一六絹織物八九・〇八〇千瓩
一六一七絹交織物一〇〇・〇三一〇千瓩
一六一八人絹及人絹交織物一〇〇・〇三、二〇〇千N瓩
一六一九及一六二〇麻織物及麻交織物一〇〇・〇二六〇千B瓩
二六二一其他ノ織物(ジユートヲ混織セル綿製品)一〇〇・〇三六〇千瓩
一六二三及一六二五被覆物及上掛物竝ニ毛布(純毛ノモノ、羊毛ノモノ、起毛サレサルモノ、製品タルト否トヲ問ハス)九五・〇四〇千瓩
一六二六及一六二七卓子掛、ナプキン類(綿製、麻製、竝ニ半麻製)及其他ノ類似品竝ニ「シーツ」(綿麻及半麻製)八二・〇九〇千瓩
一六三〇白手巾、綿麻及半麻製、表面積四〇〇平方吋以下九八・〇一一〇千打
二六三〇白以外ノ手巾 同一〇〇・〇‐‐
二六三一糸染(縞)手巾、綿製及半麻製、表面積四〇〇平方吋以下九八・〇二二〇千打
三六三一其他ノ糸染(縞)手巾、同一〇〇・〇‐‐
一六三一
其他特揭ナキ手巾(人絹及半人絹製以外ノモノ)
同(人絹及半人絹製ノモノ)         }
一〇〇・〇九五〇千打
一六三二天鳶絨(カオツシヲ含ム)衣服用、綿製ノモノ一〇〇・〇二七〇千B瓩
一六三三同 同 其他ノモノ一〇〇・〇一四〇千瓩
二六三七窓掛、家具用布、壁掛布一〇〇・〇四五〇千瓩
五八八及五八九特記セサル莫大小製品及絹製品 自動車タイヤ九一・〇四、一〇〇千B瓩
九五九及九六一タイヤ、自動車及自動自轉車用七八・〇六九〇千瓩
九六〇及九六二チユーブ、同
旣製衣服類
七五・〇八〇千瓩
五八六男子及少年用上衣洋服、外套、半ズボン、旣製品、ピヂヤマ、浴衣和服及其他上衣ト見ラルルモノ五九・〇一二〇千B瓩
五八七婦人及少女竝小兒用上衣、少女服、小兒服旣製品、和服、浴衣、ピジヤマ、ハツピイコート、ベビー服、カバヤ等九五・〇一三〇千瓩
五九〇綿製ベロース、ポロシヤツ一〇〇・〇‐‐
五九一其他ノ下着類、ワイシャツ、シャツ、猿又、ズボン下、肌着、乳カクシ、寢卷及其他下着ト見ラルル各種旣製品(但シ莫大小製品ヲ含マス)九〇・〇八八〇千B瓩
五九六別揭以外ノ衣服類、ショール、頸卷、ヴェール、面綱、ゲートル、前掛、エプロン、足袋、脚半、腹卷等(但シ莫大小製品ヲ含マス)九七・〇五五千B瓩
六〇〇各種帽子(但シ婦人帽、男子用中折帽、竹帽子等ヲ含マス)九八・〇二、一七〇千個


第二表
統計番號         品 名(A)別表第一號ノ通(B)別表第一號ノ通
一〇〇鰯罐詰八四・〇九、九〇〇千B瓩
一四二二セロフアン紙一〇〇・〇五〇〇千B瓩
四七七硝子瓶九〇・〇一、三〇〇千B打
四八六硝子器(皿、コップ等)九六・〇二、九〇〇千B瓩
五〇六ベニア板九八・〇三、〇〇〇千組
二五〇六同 附屬品一〇〇・〇二、七〇〇千B瓩
五四九綿糸八七・〇一〇、〇〇〇千B瓩
五五〇生糸七〇・〇二〇〇千B瓩
二五五〇人絹糸一〇〇・〇二、〇〇〇千B瓩
三五〇九スフ糸一〇〇・〇二、〇〇〇千B瓩
五五六―五五九刺繡糸一〇〇・〇九二〇千B瓩
五七九刺繡製品及レース及同製品九八・〇五〇〇千B瓩
五九二及五九三綿製靴下七〇・〇二〇〇千打
二六二五煙草用紙九八・〇七〇〇千B瓩
八七五織物工場用機械器具一〇〇・〇二、五〇〇千B瓩
一八九四懷中及自轉車用乾電池五〇・〇六、〇〇〇千個
九八六帽子、靴、布帛製裝身具九五・〇三〇〇千B瓩
九九五玩具九二・〇二、〇〇〇千B瓩



我方第二次要求附屬ノ蘭印物資買付案(昭和十六年五月二十日)

(邦譯文)

第三表  (單位 瓲)

  品目    蘭印物資買付量

1、 珈琲    四八〇

2、 木材    六五、〇〇〇

3、 縞黑檀    三四〇

4、 ダマル及コパル    一、四五〇

5、 カポツク(種付ヲ含ム)    一、〇〇〇

6、 カボツク種子 棉種子    五、五〇〇

7、 玉蜀黍    八〇、〇〇〇

8、 コプラ    二五、〇〇〇

9、 カツサバ、ルート    八、〇〇〇

10、籐    一、〇〇〇

11、パーム油    一二、〇〇〇

12、屑鐵(錻力屑ヲ含ム)    六〇、〇〇〇

13、棉花    一、六〇〇

14、タンニング材料    四、〇〇〇

15、砂糖    一〇〇、〇〇〇

16、生護謨    二〇、〇〇〇

17、錫 18、錫鑛(七三%以上錫ヲ含ムモノ)}    三、〇〇〇

19、ボーキサイト    四〇〇、〇〇〇

20、ニツケル鑛    一八〇、〇〇〇

21、滿俺鑛    二〇、〇〇〇

22、工業鹽    一〇〇、〇〇〇

23、ヒマシ    六、〇〇〇

24、規那皮    六〇〇

25、キニーネ    八〇

26、鑛油    一、八〇〇、〇〇〇

 差當リ一百八十萬屯ト記入シタル上「蘭印政府ニ於テ增產其他ノ方法ニ依リ三百八十萬屯ニ達スル迄對日輸出方盡力スヘキ旨竝ニ日本政府ハ少クモ五ケ年間每年三百八十萬屯迄買付クル用意アリ」ト附記セリ

27、ピッチ・コーグス    二五、〇〇〇

28、黃麻    一、三〇〇

29、糖蜜    六〇、〇〇〇

30、蜜蠟 31、豆類 32、ココア 33、貝殼 34、蒟翡芋}    八〇〇、(千圓)

35、モリプデン鑛、クローム鐵鑛、タングステン鑛、雲母(高級品)ニ付テハ對日輸出上蘭印政府カ積極的努力ヲ爲スコトヲ確約セラレ度

36、サイザル    四〇、〇〇〇(瓲)

本表末尾ニ於テ左ノ通附言セリ

 日本代表ハ五月十四日附日本側覺書ニ對スル蘭側回答カ「フエボラブル」ナルニ於テハ二月三日附蘭側覺書ニ於ケル蘭側希望ニ顧ミ蘭印物資ノ日本ヘノ輸入特ニ砂糖及珈琲ニ付本表ニ揭記セル數量以上ニ增量買付方日本政府ニ進言スヘシ



  蘭側回答

   (昭和十六年六月六日)

(假譯)

 覺書

前文

一九四一年五月十四日及二十一日日本經濟代表部ヨリ提示セラレタル覺書類ヲ檢討セル處和蘭代表部ハ日本側提案カ會商ヲ通シ問題トナリタル各種ノ點ニ付徹底的ニ論議セラレタル結果ニ基キ數個ノ點ニ於テ修正セラレ居ルコトニ滿足ス 是等修正ハ日本側原案ヲ現在ニ於ケル非常事態ノ緊急ノ必要ニ適應セシメ且和蘭代表部カ日本側原案中蘭印經濟政策ノ諸原則ニ背馳スルモノ多々アリトノ理由ニ基キ提起セル種々ノ反對ヲモ或程度迄容認セントスル日本代表部ノ努力ノ結果ナリト認メラル

然レ共和蘭代表部ハ日本政府ノ見解カ依然トシテ是等原則ニ著シク背馳スルモノアルヲ遺憾トセサルヲ得ス

卽チ一九四一年五月十四日ノ日本側覺書ニ依レハ日本政府ハ依然一九四一年一月十六日ノ覺書ノ前文ニ開陳セラレタル種々ノ見解ヲ固執ス是等見解ハ蘭印ノ天然資源ノ開發不充分ナリトノ想像及蘭印ト日本帝國トハ相互依存ノ關係ニ在リトノ臆斷ニ基クモノナルヲ以テ之ヲ實践ニ移ス場合蘭印ニ於テ日本ノ經濟的特殊地位ヲ造成スルニ至ルヘキハ明カナリ

故ニ茲ニ再ヒ一九四一年二月三日ノ和蘭側覺書中ニ開陳シタル蘭印ニ關スル和蘭政府ノ基本的經濟政策ニ言及スルコト適當ナルヘシ卽チ和蘭ノ政策ハ住民ノ福祉進步解放ノ助長及友好國ニ對スル無差別待遇竝ニ如何ナル特種ノ活動分野ニ於テモ優越的ナル外國利益ノ設定セラルルヲ防止スルコトニアリ

蘭印ハ其本國ノ援助ヲ得テ大體充分ニ其ノ經濟生活ノ發達及資源ノ開發ヲナシ得ヘキ經濟發達ノ段階ニ到達セリト言フヲ得ヘク此ノ方法ニ依ルコトカ住民ノ願望ニモ合致スルモノナリ故ニ外國利益ヲ餘リ寛大ニ許容スルコトニ依リ其ノ進展ヲ阻害セサル樣注意ヲ拂フノ要アリ和蘭本國ハ素ヨリ爪哇及蘭印ノ其ノ地域ニ於ケル人口ハ稠密ナルニ依リ出來得ル限リ王國臣民ノ利益ノ爲ニ蘭印ノ經濟資源ヲ開發シ其ノ勞働市場ヲ保留スルノ必要益々緊切トナル他面ニ於テ右政策ハ外國人ノ企業ト雖モ一旦蘭印ニ設定セラレタル上ハ同種ノ內國人企業ト同一ノ規則ニ服シ且同種ノ便宜ヲ供與セラルルモノナルコトヲ意味ス但シ當該外國人ノ本國カ在留和蘭臣民ノ利益ヲ右ト同一ノ精神ヲ以テ待遇スルコトヲ條件トス

是等一般經濟政策上ノ諸々ノ考慮ハ別トシ蘭印ト諸外國トノ關係ハ戰爭繼續中貿易其ノ他ノ經濟活動ニ對スル種々不可避ナル制限ニ依リテ影響ヲ蒙ラサルヲ得ス是等制限ハ直接間接ノ利敵行爲ヲ防止シ蘭印國防ノ安全ヲ確保シ竝ニ王國及其ノ同盟國ノ戰爭遂行ノ努力ヲ促進センカ爲ニシテ其ノ性質上臨時的ノモノナリ

日蘭兩國政府間ニ蟠ルカ如ク見ユル一般的槪念ノ相違ニ拘ラス和蘭代表部ハ最近ノ日本側覺書ニ提起セラレタル個々ノ問題ニ付其ノ執リタル態度ノ合理性ノミナラス種々ノ點ニ於テ日本ノ利益ニ對シテ開カレアル實際上ノ可能性ニ關シテモ再ヒ日本代表部ヲ納得セシムルノ努力ヲナスコトヲ望マシト思考ス

依テ是等個々ノ問題ニ關スル和蘭政府ノ見解ヲ左ニ開陳ス

I、日本人ノ入國

(a)、「外國人勤勞條例」ノ目的ハ蘭印ノ住民ノ爲出來得ル限リ同領ニ於ケル職業ヲ保留セントスルニ在リ從テ外國人ニ對シテハ唯特殊ノ地位ニ其ノ勞働カ必要ト認メラレ且之ニ和蘭臣民ヲ得ルコト能ハサル場合ニノミ勞働許可ヲ與フ加之關係雇傭者ハ將來ニ於ケル缺員ヲ充タス爲出來得ル限リ和蘭臣民ニ對シ充分ナル實際的訓練ヲ施スヘキモノナリトノ了解アリ外國人雇傭ノ要求ハ常ニ寛大ニ審査セラレ居リ此ノ方針ハ今後モ之ヲ持續スヘシ和蘭政府ハ勞働許可申請ノ取扱ニ付各關係當局ヨリ意見ヲ徵スルノ必要及時ニ地方的調査ヲ爲スノ必要アル場合ニモ出來得ル限リ之ヲ迅速ナラシメンコトヲ期ス本件ハ極メテ重大ナル利害關係アルヲ以テ和蘭政府カ右條例ノ根本原則ヲ考慮ニ入ルルコトナク多數ノ外國人ニ對シ勞働許可ヲ下付スヘシトノ保障ヲ與フルコトハ如何ニスルモ不可能ナリ故ニ日本側覺書ニ要求セラレタカ如ク割當ノ最大限度迄日本人ノ入國ヲ許可スヘシトノ無條件的保障ハ之ヲ與フルコトヲ得サルノミナラス斯クノ如キコトハ他ノ諸外國ニ對スル許スヘカラサル差別待遇トナルヘシ

(b)、此ノ點ニ關連シ或ル勞働許可ノ下付カ前顯割當ニ包含セラルヘキヤ否ヤノ問題ニ付テハ更ニ討議スルコトヲ必要トセサルカ如シ

(c)、和蘭政府ハ專ラ在留日本人ヲ診療スヘキ日本人醫師ノ蘭印入國方ニ付テハ在留日本人ノ數ヨリ見テ之ヲ妥當トスルカ如キ場所ニ於テ開業スルノ目的ヲ以テ其ノ嚴格ニ限ラレタル數カ入國スルヲ許可センカ爲現行規則ノ改正方ニ付好意的考慮ヲ拂フノ用意アリ右醫師ノ診療ヲ日本人企業ニ働ク凡テノ從業員又ハ使用人ニ及ホスコトハ適當ナラス蓋シ其ノ大多數ハ日本人ニアラサレハナリ

II、企業及營業

外國人ノ單獨又ハ和蘭人トノ合辦ノ企業ノ新設ニ付テハ斯カル企業カ前文ニ述ヘラレタル方針ノ範圍內ニ於テ蘭印ノ經濟開發ニ相當ノ貢獻ヲ爲スヘシト關係當局ノ認ムル限リ之ヲ許可スヘシ

(a)、以上述ヘタル所ハ蘭印ニ於ケル鑛業ニ對スル外國人ノ參加ニ付テモ亦該當ス蘭印ニ於ケル鑛油ノ試掘、採掘ニ對スル日本人ノ參加方ニ關シ日本經濟代表部ノ爲サレタル要求ニ對スル回答ハ本覺書ノ第一附屬書ニ見出サルヘシ

(b)、漁業及漁業關係產業ノ發展ハ土人ノ爲ニ保留セラルヘキモノナルニ依リ和蘭政府ハ外國人ニ對シ水產業ニ關スル許可ヲ與ヘ又ハ便宜ヲ供與シ得ルノ地位ニ非ス尤モ特殊ノ事情ノ下ニ於テ或ル外國人申請者ニ對シ斯クノ如キ便宜ヲ供與シ得ル可能性アリヤ否ヤハ各個ノ申請ヲ其レ自身ノ價値ニ依リテ審査シ以テ各場合ニ付別々ニ考慮セラルヘキモノナリ國防上明ラカナル理由ニ依リ和蘭政府ハ當分斯クノ如キ便宜ヲ供與スルコトヲ得サルヘシ

(c)、以上蘭印ニ於ケル企業ニ對スル外國人ノ參加ニ付テ述ヘタル所ハ日本側覺書ノ第二節(ハ)ニ指示セラレタル商業竝ニ倉庫業及其ノ他各種營業ニ付テモ該當ス經濟活動ノ是等部門ハ和蘭臣民ノ爲ニ大ナル程度迄保留スルコト必要ナリ蓋シ和蘭政府ニトリテ經濟政策上ノ主要問題ノ一タル地方民ノ商業及產業敎育ニ付殊ニ商店、小倉庫、小工場ノ如キ小商業其ノ他ノ企業ハ其ノ機會ヲ與フルモノナレハナリ

III、交通通信

(a)、和蘭政府ハ盤谷、西貢及其ノ他ノ地點ニ於ケル日蘭航空路ノ連絡改善方ニ付日本政府ト協力スルノ用意アリ然レトモ和蘭政府ハ蘭印內及諸外國トノ間ノ航空運輸ノ將來ニ於ケル發展ハ幾多不確定ナル要素ニ依存シ從テ現在ノ事情ノ下ニ於テハ本件ニ付何等約束ヲ爲スコトヲ得ストノ見解ヲ有ス

(b)、無線電信連絡ノ現在ニ於ケル進步ヲ考慮スレハ和蘭政府ノ見ル所ニテハ日蘭印間ニ高價ナル海底電線ニ依リ電信連絡ノ重複ヲ行フヘキ何等ノ理由無シ「マラバル」日本間ノ無線通信ノ改善カ必要ナル場合ニハ和蘭政府ハ必要ナル協力ヲ爲スノ用意アリ右無線通信ニ加ヘ「ヤップ」「メナド」間海底無線利用ノ措置ヲ講スルコトヲ必要トスル理由ハ何等之ヲ認メサルノミナラス右海底電線ノ修理狀態ハ甚タ不良ニシテ之ヲ使用スルカ爲ニハ費用ノ嵩ム大々的ナル修繕及改良ヲ必要トス

(c)、蘭印ニ於ケル沿岸航行ハ自國海運ノ助長保護ノ爲外國船ニ對シテハ原則トシテ之ヲ禁止シ居レリ或ル日本船ヲ含ム特定ノ例外ハ現行海運法施行ノ際旣ニ存在シ居タル海運業者ニ許與セラレタル最大限度ノ讓步ト認メラルヘキモノナリ然レトモ和蘭政府ハ外國船沿岸航行權保有者ニ對シ船型、隻數、噸數、ニ關スル現行制限內ニ於テ其事業ノ維持ニ必要ナル便宜ヲ引續キ供與スヘシ

(d)、特定產物ノ輸出又ハ一般通商目的ノ爲ニスル不開港場ノ開放ハ利用シ得ヘキ船便トノ關係ニ於テ當該地方ノ現實ノ必要如何ニ依ルモノニシテ個々ノ場合ニ付其レ自身ノ價値ヲ檢討シ且各外國船ニ對スル無差別主義ニ則リテ決定セラルヘキモノナリ

(e)、前項ハ外國船ノ不開港場寄港ニ關スル許可ニ付テモ亦適用アリ

IV、貿易及商業

蘭印ノ繁榮ハ多數國トノ貿易ニ依存スル所大ナルカ故和蘭政府トシテハ其ノ輸入ヲ輸出ニ關スル緊急狀態ニ適應セシムルコトニ付キ出來得ル限リ其ノ行動ノ自由ヲ保持スルコト極メテ重要ナリ

加之戰爭ノ繼續中ハ外貨ノ浪費ヲ避クル爲輸入ニ對シ嚴重ナル管理ヲ實行スルト共ニ蘭印ヨリノ輸出カ軍事的價値アル資材ノ敵國ヘノ供給ニ何等役立ツカ如キコトヲ防止スル爲輸出ニ對シテモ同樣嚴重ナル管理ヲ實行スルノ必要アリ國家存立ノ爲現在戰ヒツツアル和蘭トシテハ是レ以外ニ途ナキコトハ必スヤ日本政府ニ於テモ之ヲ諒解セラルヘシ

是等ノ考慮ハ別トスルモ急變シツツアル國際情勢ハ長期ニ亙ル各種物資ノ確定數量ノ輸出入ニ關スル正式ニシテ且拘束力アル協定ヲ締結スルコトヲ不得策ナラシメ居レリ尤モ他方ニ於テ諸々ノ事情及國家ノ死活的利益ノ許ス限リ急激ナル變更ハ之ヲ避クルコトカ和蘭政府ノ通商政策ニ合致スル所以ナリ而シテ此ノ政策カ日、蘭印間ノ相互的ニ重要ナル貿易ニ關シ遵守セラルルモノナルコトニ付テハ日本政府ニ於テモ安心セラレ度シ

1、(a)、蘭印ノ輸入貿易上ニ於ケル日本ノ利益ニ關シテハ充分考慮ノ上合意成立シ右ハ所謂「ハルト」・石澤協定及「ファン・モーク」・小谷協定トシテ具體化セラレタリ和蘭政府ハ是等協定ヲ改訂スルノ要ヲ認メス右協定ハ依然其ノ效力ヲ有ス現在ノ不安定ナル事情ノ下ニ於テハ向フ十二ケ月ト雖モ如何ナル特定國ヨリ輸入セラルヘキ或ル特定商品ノ數量ニ付テモ何等ノ約束ヲ爲スコト不可能ナルカ如ク見ユ然レトモ和蘭政府ハ若シ日本政府カ日本ニ於ケル生產ノ調整ヲ圖ランカ爲希望セラルルニ於テハ和蘭政府カ向フ六ケ月間ニ於テ其ノ選擇ニ從ヒ諸國ヨリノ輸入ニ對シテ許可ヲ與フヘキ物資ノ數量ヲ明示スルノ用意アリ日本ヨリノ輸入ニ對スル許可ハ右選擇ニ基キ且價格及引渡條件ノ點ニ於テ他國品ト競爭シ得ルモノナル限リ之ヲ與フヘシ而シテ是等ノ數量ハ蘭印ノ實需ニヨリテ決定セラルヘキモノナリ

(b)、和蘭政府ハ蘭印ニ於ケル日本人輸入業者ノ地位ハ旣ニ前記協定ノ基礎ノ上ニ滿足ニ解決セラレタル次第ニシテ又此ノ割當ハ他ノ利害關係者ニ不當ニ不利ヲ蒙ラシムルコトナクシテハ增大シ得ラレサルモノナリトノ見解ヲ保有ス

2、戰爭ノ必要上和蘭政府トシテハ向フ十二ケ月間ノ如キ長期ニ亙リ各種物資ノ輸出ニ對シ無條件ニ許可ヲ與フル如何ナル義務ヲモ負フコト不可能ナリ尙之ヨリモ遙カニ短期間ニ對スルモノト雖モ右ノ點ニ關スル政策ニ付テノ如何ナル言明モ和蘭政府ニ於テ其ノ完全ナル實施カ直接又ハ間接敵國ノ利益トナリ或ハ和蘭王國及其ノ同盟國ノ利益ヲ害スト認ムル場合ニハ其ノ拘束力ヲ失フヘシトノ條件ニ從フヘキモノナリ

然レトモ和蘭政府ハ日本政府トシテ見レハ蘭印ヨリノ輸入カ全然不確定ナルニ於テハ之ニ應シテ其國內經濟政策ヲ調整スルコト困難ナルヲ了解スルカ故ニ和蘭政府ハ現在ノ事態ニ關スル其ノ見解ニ基キテ決定セラレタル一九四一年度ノ輸出制限ニ關スル其ノ意嚮ヲ旣ニ述ヘタル明確ナル條件付ニテ言明スルコトニ何等ノ異議ヲ有セス右言明ハ本覺書ノ第二附屬書ニ之ヲ揭ケタリ和蘭政府ハ其ノ輸出品ニ關スル戰爭上ノ緊急ノ必要ニ付唯一ノ判定者タルノ權利ヲ有スルモノナルコトヲ指摘セサルヘカラスト雖モ國際交通ノ通常ノ經路ハ依然開キ殘サレ之ヲ通シテ事實ト苦情トニ對スル考慮カ拂ハルル次第ナルコトハ特ニ言フヲ俟タサルヘシ

3、輸入稅、輸出稅、附加稅及公定價格ニ付テハ日本ヨリノ輸入物資及日本ヘノ輸出物資ニ對シ無差別ノ原則ニ從ヒ凡テノ他國ヨリノ輸入物資及凡テノ他國ヘノ輸出物資ニ對スルト同一ノ待遇ヲ與フヘシ

V、協定ノ期限

期限條項ハ現在行ハレ居ル意見交換ノ結果協定ノ締結トナル場合ニ文書ノ起草ト同時ニ之ヲ考慮スルコトヲ得ヘシ

VI、蘭側提議

和蘭代表部ハ日本政府ニ於テ經濟關係ノ增進ニ對スル其ノ寄與トシテ左記各項ヲ採用セラレンコトヲ提議ス

1、周知ノ如ク日本帝國及其ノ近接地域ニ於テ砂糖不足シ居ル事實アルカ故ニ日本政府ハ一九四一年ノ殘期間中年十五萬噸ノ割合ニ於テ爪哇糖ヲ輸入スルノ措置ヲ執ルヘキコトヲ約セラレタシ

2、右期間中ニ蘭印ヨリ日本ヘ輸入セラルヘキ黑檀ノ數量ハ之ヲ年二千噸ノ割合トセラレ度シ右數量ハ猶正常輸入量ノ約五割ニ過キス

3、日本政府ハ一九四一年ノ殘期間中年一千噸ノ割合ニ於テ蘭印ヨリ珈琲ヲ輸入スル措置ヲ執ラレ度シ

4、日本政府ハ日本ニ在ル和蘭人又ハ和蘭會社ニ歸屬スル圓殘高全部ヲ日蘭印間ノ經濟交通ニ關係アル如何ナル合法的取引ニモ之ヲ使用シ得ル樣措置セラレ度シ

5、日本政府ハ日本ニ在ル和蘭人及和蘭會社ニ對シ其ノ貿易カ支障無ク行ハルル樣蘭印ニ在ル日本人及日本會社ニ與ヘラルト同樣ニ必要ナル自由ヲ與フヘシ

第一附屬書

和蘭政府ハ「マンカリアット」半島ヲ將來B・O・Mノ石油利權ノ延長セラルルコトアルヘキ利益範圍ト認メツツB・O・Mノ一九四一年二月十七日附申請ノ對象タル「サンクリラン」地方ニ於ケル二七八、〇〇〇「ヘクタール」ノ石油鑛區試掘權ヲB・O・Mニ許與スルコトニ何等ノ異議ヲ有セス

「バンガイ・ブロック」及東北「ニューギニア」ニ於ケル試掘ニ對スル同日附申請ニ付テハB・O・Mノ活動カ其ノ利權ノ擴張ヲ正當トスルニ充分ナル程發展ヲ遂ケタルカ如キ時期ニ考慮スヘク之ヲ保留シ置クヘシ和蘭政府ハ是等地域ニ於ケル利權ニ關シ今後現ハルルコトアルヘキ申請者ニ對シ之ヲ許與スルニ先タチB・O・Mノ旣ニ提出セル申請ヲ愼重審査スヘシ

第二附屬書

五月十四日附日本代表部ノ覺書添附ノ第三表ニ列記セラレタル蘭印產各種物資及其ノ數量ノ日本向輸出ニ付テハ左ノ如ク開陳スルコトヲ得(左記陳述ハ第三表ニ列記セラレサル物資ニ對シ毫モ輸出制限及割當ノ適用ヲ除外スルモノニ非サルコトヲ何等誤解ヲ避クル爲特ニ附記ス)

和蘭政府ハ現在ノ事情ノ續ク限リ且左ニ記載セラルル措置ノ完全ナル實施カ直接ニモ間接ニモ敵國ノ利益トナラス又和蘭王國及其ノ同盟國ニ有害ナラスト其ノ判斷ニ依リテ認ムル限リ一九四一年ニ於テ左ノ措置ヲ執ルノ意嚮ナリ

(a)、第三表ニ記載セラレタルモノノ內左記各物資ニ付一九四一年中ニ輸出セラルヘキ總量カ左記各數量(單位「メトリツク、トン」)ニ達シ得ルカ如ク一九四一年中ニ於ケル日本帝國向輸出割當ヲ維持シ又ハ設定スルコト

16 生護謨 一五、〇〇〇

17-18 錫及錫鑛(錫含有量) 三、〇〇〇

20 「ニツケル」鑛 一五〇、〇〇〇

22 「ヒマシ」 六、〇〇〇

24 規那皮 六〇〇

(b)、第三表ニ記載セラレタルモノノ內左記各物資ニ付一九四一年ノ殘期中ニ於ケル日本帝國向輸出ノ各月割當ヲ左ニ列記(單位「メトリツク、トン」)セル數量ニ定ムルコト

4 樹脂「ダルマ」「コパル」 一二五

5 「カポツク」纎維(種付ヲ含ム) 一〇〇

6 「カポツク」種子及棉子 五〇〇

8 「コプラ」(椰子油中ノ相當量ヲ含ム) 一、六五〇

10 籐 一〇〇

11 「パーム」油 一、〇〇〇

14 「タンニン」材 一二五

19 「ボーキサイト」 二〇、〇〇〇

21 滿俺鑛 五〇〇

25 「キニーネ」(純量) 五

28 黃麻(精製セルモノ) 一二五

(c)、日本側覺書第三表ニ記載セラレタル物資中本附屬書ノ(a)及(b)ニ記載セラレ居ラサルモノノ日本帝國向輸出ニ付テハ左ノ留保ヲ附シ其ノ割當ヲ定ムルコトハ之ヲ避クルコト

屑鐵ニ付定メラレアル輸出割當ハ無制限輸出ノ場合起ルヘキ價格昂騰ノ結果トシテ鐵類ノ大規模盜難ノ行ハルルヲ防止スル爲ノ措置ト見ラルヘキモノナリ右以外ノ點ニ付テハ國內消費用又ハ和蘭ノ同盟國向トシテ必要ナラサル限リ屑鐵ノ對日輸出ニハ別ニ反對ナシ

玉蜀黍ノ對日輸出ニ付テハ前記末段ノ留保ハ附スルモ之ニ何等ノ反對ナシ

鑛油及同製品ノ對日輸出ノ增量ハ日本輸入業者ト石油生產會社トノ交涉ニ俟ツヘキ事項ナリ和蘭政府ハ石油資源ノ現狀ハ生產ノ增加ヲ許サストノ意見ナリ「ピツチコークス」ノ輸出ニ付テモ右ト同樣ナリ

糖蜜ニ付テハ日本側覺書第三表ニ記載セラレタル數字ニ依レハ日本政府ハ蘭印ヨリ正常量ノ三十倍以上ノ輸入ヲ計書セラレ居ル處本件ニ付テハ未タ確定的ナル意見ヲ開陳シ難シ「サイザル」ニ付テハ日本側ノ輸入希望量ハ正常量ノ二十五倍ナル處之ニ付テモ右ト同樣ナリ

「モリブデン」鑛、「クローム」鑛、「タングステン」鑛、雲母(高級品)ノ採掘ニ關スル資料ニ依レハ大ナル輸出ノ可能性無キカ如シ