データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 情勢の推移に伴ふ帝國國策要綱(情勢の推移に伴う帝国国策要綱)

[場所] 
[年月日] 1941年7月2日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,531-532頁.
[備考] 
[全文]

    七月二日御前會議決定

  第一 方針

一、帝國ハ世界情勢變轉ノ如何ニ拘ラス大東亞共榮圏ヲ建設シ以テ世界平和ノ確立ニ寄與セントスル方針ヲ堅持ス

二、帝國ハ依然支那事變處理ニ邁進シ且自存自衛ノ基礎ヲ確立スル爲南方進出ノ步ヲ進メ又情勢ノ推移ニ應シ北方問題ヲ解決ス

三、帝國ハ右目的達成ノ爲如何ナル障害ヲモ之ヲ排除ス

  第二 要領

一、蔣政權屈服促進ノ爲更ニ南方諸域ヨリ壓力ヲ强化ス情勢ノ推移ニ應シ適時重慶政權ニ對スル交戰權ヲ行使シ且支那ニ於ケル敵性租界ヲ接收ス

二、帝國ハ其ノ自存自衛上南方要域ニ對スル必要ナル外交交涉ヲ續行シ其ノ他各般ノ施策ヲ促進ス

 之カ爲メ對英米戰準備ヲ整へ先ツ「對佛印泰施策要綱」及「南方施策促進ニ關スル件」ニ據リ佛印及泰ニ對スル諸方策ヲ完遂シ以テ南方進出ノ態勢ヲ强化ス

 帝國ハ本號目的達成ノ爲メ對英米戰ヲ辭セス

三、獨「ソ」戰ニ對シテハ三國樞軸ノ精神ヲ基調トスルモ暫ク之ニ介入スルコトナク密カニ對「ソ」武力的準備ヲ整ヘ自主的ニ對處ス此ノ間固ヨリ周密ナル用意ヲ以テ外交交涉ヲ行フ

 獨「ソ」戰爭ノ推移帝國ノ爲メ有利ニ進展セハ武力ヲ行使シテ北方問題ヲ解決シ北邊ノ安定ヲ確保ス

四、前號遂行ニ當リ各種ノ施策就中武力行使ノ決定ニ際シテハ對英米戰爭ノ基本態勢ノ保持ニ大ナル支障ナカラシム

五、米國ノ參戰ハ旣定方針ニ從ヒ外交手段其他有ユル方法ニ依リ極力之ヲ防止スヘキモ萬一米國カ參戰シタル場合ニハ帝國ハ三國條約ニ基キ行動ス但シ武力行使ノ時機及方法ハ自主的ニ之ヲ定ム

六、速カニ國內戰時體制ノ徹底的强化ニ移行ス特ニ國土防衛ノ强化ニ勉ム

七、具體的措置ニ關シテハ別ニ之ヲ定ム