[文書名] 東條首相の議會演說(大東亞戰指導の要諦)(東條首相の議会演説(大東亜戦指導の要諦))
(昭和十七年一月二十一日帝國議會ニ於テ)
(前略)
抑々帝國ノ現ニ遂行シツツアル大東亞戰爭指導ノ要諦ハ大東亞ニ於ケル戰略據點ヲ確保スルト共ニ、重要資源地域ヲ我カ管制下ニ收メ以テ我カ戰力ヲ擴充シツツ獨伊兩國ト密ニ協力シ亙ニ呼應シテ益々積極的作戰ヲ展開シ米英兩國ヲ屈伏セシムル迄戰ヒ拔クコトテアリマス。然ルニ米英兩國ハ永年ニ亙リ世界制覇ノ基礎ヲ固メ、世界最大ノ富强ヲ誇ルモノテアリマス。緒戰ノ大敗ニ拘ラス必スヤ執拗ニ我ニ抗シ、大勢ノ挽回ヲ計リ來ルヘキハ想像スルニ難クナイノテアリマス。故ニ今後各種ノ困難ナル事象カ發生シテ參リマスコトモ、或ハ又此ノ戰爭カ長期戰トナリマスコトモ、當然覺悟セネハナラナイノテアリマス。卽チ戰爭ハ正ニ今後ニアルノテアリマス(中略)。
帝國ハ今ヤ國家ノ總力ヲ擧ケテ專ラ雄大廣汎ナル大作戰ヲ遂行シツツ大東亞共榮圏建設ノ大事業ニ邁進シテ居ルノテアリマス。而シテ大東亞共榮圏建設ノ根本方針ハ、實ニ肇國ノ大精神ニ淵源スルモノテアリマシテ、大東亞ノ各國家及各民族ヲシテ、各々其ノ所ヲ得シメ、帝國ヲ核心トスル道義ニ基ク共存共榮ノ秩序ヲ確立セントスルニ在ルノテアリマス。而シテ其ノ建設ハ廣大ナル地域ニ亙リ、各種ノ民族ト相倚リ相携ヘテ行ハレルノテアリマス。而モ今回新ニ建設ニ參加セントスル地域タルヤ、資源極メテ豐富ナルニモ拘ラス、最近百年ノ間米英兩國等ノ極メテ苛烈ナル搾取ヲ受ケ、爲ニ文化ノ發達甚シク阻害セラレタル地域テアリマス。
帝國カ此ノ地域ヲ加ヘテ人類史上ニ一新紀元ヲ劃スヘキ新ナル構想ノ下ニ、大東亞永遠ノ平和ヲ確立シ、進ンテ盟邦ト共ニ世界新秩序ノ建設ヲ爲サントスルコトハ、正ニ曠古ノ大事業テアリマス。而シテ此ノ大事業ノ成功ハ又我カ武力戰ノ成功ヲ窮極ノ勝利ニ導ク必須ノ要件ナノテアリマス。
此ノ建設ニ當リマシテハ、大東亞防衛ノ爲絕對必要ナル地域ハ、帝國自ラ之ヲ把握措置シ、其ノ他ノ地域ニ關シマシテハ各民族ノ傅統文化等ニ應シ、戰局ノ進展ニ伴ヒ、夫レ夫レ適當ナル處置ニ出ツル考テアリマス。
今ヤ帝國陸海軍ハ旣ニ香港ヲ占領シ、比島ノ大部分ヲ確保シ、又馬來半島ノ大半ヲ制壓シ、更ニ最近ニ至リマシテハ、蘭印ノ要衝ヲ占領スルニ至ツタノテアリマス。此等諸地域ノ內、香港及馬來半島ハ多年英國ノ領土テアリ且東亞禍亂ノ基地タリシ事實ニ鑑ミマシテ帝國ハ徹底的ニ禍根ヲ艾除スルノミナラス甯ロ此等ヲシテ大東亞防衛ノ據點タラシメントスルモノテアリマス。
比島ニ關シマシテハ、將來同島ノ民衆ニシテ、帝國ノ眞意ヲ了解シ、大東亞共榮圏建設ノ一翼トシテ協力シ來ル場合ニ於キマシテハ帝國ハ欣然トシテ彼等ニ獨立ノ榮譽ヲ與ヘントスルモノテアリマス。
「ビルマ」等ニ就キマシテモ亦帝國ノ企圖スル所ハ比島ト異ナル所カナイノテアリマス。
蘭印及濠洲ニ就キマシテハ、是等カ現在ノ如ク帝國ニ對シ、抗戰ノ態度ヲ繼續スルニ於テハ、帝國ハ容赦ナク之ヲ擊碎セントスルモノテアリマス。然シナカラ其ノ住民カ、帝國ノ眞意ヲ了解シテ協力シテ參リマシタナラハ、其ノ福祉ト發展トノ爲ニハ帝國ハ十分ノ理解ヲ以テ之ニ力ヲ添フルニ吝テアリマセン。
今日尙重慶政權カ、無意義ノ抗戰ヲ繼續シツツアリマスコトハ洵ニ遺憾テアリマス。帝國ハ之ヲ徹底的ニ破碎セントスルモノテアリマス。私ハ今コソ彼等カ此ノ世界情勢ノ大變換ヲ正視シ飜然米英依存ノ舊套ヲ一擲シテ大東亞共榮圏建設ノ大事業ニ馳セ參スヘキ時期テアルコトヲ確信スルモノテアリマス。
滿、華、泰ノ諸國民カ帝國ト一丸ト爲ツテ大東亞共榮圈建設ノ爲ニ不斷ノ努力ヲ爲シツツアリ、佛印亦是ニ協力シツツアリマスルコトハ誠ニ慶祝ノ至リテアリマス(中略)
帝國ノ企圖スル建設ハ緒戰當初ニ於テハ先ツ軍政下ニ於テ戰爭遂行上緊要ナルモノヨリ着手シ、且將來ノ大建設ヲ準備シ、防衛及治安ノ確立ニ伴ヒ、逐次民間參與ノ範圍ヲ擴張セントスルモノテアリマス。而シテ帝國ノ企圖シツツアル大東亞建設ノ方策ハ國家百年ノ長計タルニ鑑ミマシテ、十分ノ準備ヲ整ヘテ萬全ノ策ヲ講スルノ要カアルノテアリマス。政府ハ廣ク官民各方面ノ智能ヲ動員シテ、之カ協力ニ依テ其ノ樹立ト其ノ遂行トニ萬遺憾ナキヲ期セントスル所存テアリマス(下略)