データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大東亞政略指導大綱(大東亜政略指導大綱)

[場所] 
[年月日] 1941年5月29日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,583-584頁.
[備考] 
[全文]

    (昭和十八年五月二十九日大本營政府連絡會議決定)

    (昭和十八年五月三十一日御前會議決定)

  第一 方針

一 帝國ハ大東亞戰爭完遂ノタメ帝國ヲ中核トスル大東亞ノ諸國家諸民族結集ノ政略態勢ヲ更ニ整備强化シモツテ戰爭指導ノ主動性ヲ堅持シ世界情勢ノ變轉ニ對處ス

 政略態勢ノ整備强化ハ遲クトモ本年十一月初頃マテニ達成スルヲ目途トス

二 政略態勢ノ整備ハ帝國ニ對スル諸國家諸民族ノ戰爭協力强化ヲ主眼トシ特ニ支那問題ヲ解決ス

  第二 要領

一 對滿華方策

 帝國ヲ中心トスル日滿華相互間ノ結合ヲ更ニ强化ス

コレカタメ

(イ) 對滿方策

 旣定方針ニ據ル

(ロ) 對華方策

 「大東亞戰爭完遂ノタメノ對支處理根本方針」ノ徹底具現ヲ圖ルタメ右ニ旣應スル如ク別ニ定ムル所ニ據リ日華基本條約ヲ改訂シ日華同盟條約ヲ締結ス。コレカタメ速カニ諸準備ヲ整ウ。右ニ關連シ機ヲ見テ國民政府ヲシテ對重慶政治工作ヲ實施セシムル如ク指導ス。

 前項實行ノ時機ハ大本營政府協議ノ上コレヲ決定ス。

二、對泰方針

 旣定方針ニ基キ相互協力ヲ强化ス。特ニ「マライ」ニオケル失地回復、經濟協力强化ハ速カニ實行ス。

 「シヤン」地方ノ一部ハ泰國領ニ編入スルモノトシコレカ實施ニ關シテハ「ビルマ」トノ關係ヲ考慮シテ決定ス。

三、對佛印方策

 旣定方針ヲ强化ス。

四、對緬方策

 昭和十八年三月十日大本營政府連絡會議決定緬甸獨立指導要綱ニ基キ施策ス。

五、對比方策

 ナルヘク速カニ獨立セシム。

 獨立ノ時機ハ槪ネ本年十月頃ト豫定シ極力諸準備ヲ促進ス。

六、ソノ他ノ占領地域ニ對スル方策ヲ左ノ通リ定ム。

 但シ(ロ)、(ハ)以外ハ當分發表セス。

 (イ)「マライ」「スマトラ」「ジャワ」「ボルネオ」「セレベス」ハ帝國領土ト決定シ重要資源ノ供給地トシテ極力コレカ開發並ヒニ民心把握ニ努ム。

 (ロ) 前號各地域ニオイテハ原住民ノ民度ニ應シ努メテ政治ニ參與セシム。

 (ハ) 「ニューギニア」等(イ)以外ノ地域ノ處理ニ關シテハ前二號ニ準シ追テ定ム。

 (ニ)前記各地ニオイテハ當分軍政ヲ繼續ス。

七、大東亞會議

 以上各方策ノ具現ニ伴ヒ本年十月下旬頃(比島獨立後)大東亞各國ノ指導者ヲ東京ニ參集セシメ牢固タル戰爭完遂ノ決意ト大東亞共榮圏ノ確立ヲ中外ニ宣明ス。