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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「今後採るべき戰爭指導大綱」及「右に基く當面の緊急措置に關する件」(「今後採るべき戦争指導大綱」及「右に基く当面の緊急措置に関する件」)

[場所] 
[年月日] 1943年9月30日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,588-589頁.
[備考] 
[全文]

昭和十八年九月三十日御前會議決定

今後採ルヘキ戰爭指導大綱

方針

一、帝國ハ、今明年內ニ戰局ノ大勢ヲ決スルヲ目途トシ、敵米英ニ對シ、其ノ攻勢企圖ヲ破摧シツツ速カニ必勝ノ戰略態勢ヲ確立スルト共ニ、決勝戰力特ニ航空戰力ヲ急速增强シ主動的ニ對米英戰ヲ遂行ス

二、帝國ハ、彌々獨トノ提携ヲ密ニシ、共同戰爭ノ完遂ニ邁進スルト共ニ、進ンテ對ソ關係ノ好轉ヲ圖ル

三、速ニ國內決戰態勢ヲ確立スルト共ニ、大東亞ノ結束ヲ愈々强化ス

要領

一、萬難ヲ排シ槪ネ昭和十九年中期ヲ目途トシ、米英ノ進攻ニ對應スヘキ戰略態勢ヲ確立シツツ、隨時敵ノ反攻戰力ヲ捕捉破摧ス

帝國戰爭遂行上太平洋及印度洋方面ニ於テ絕對確保スヘキ要域ヲ、千島、小笠原、內南洋(中、西部)及西部ニューギニヤ、スンダ、ビルマヲ含ム圏域トス

戰爭ノ終始ヲ通シ、圏內海上交通ヲ確保ス

二、ソニ對シテハ、極力日ソ戰ノ惹起ヲ防止シ進ンテ日ソ國交ノ好轉ヲ圖ルト共ニ、機ヲ見テ獨ソ間ノ和平ヲ斡旋スルニ努ム

三、重慶ニ對シテハ、不斷ノ强壓ヲ繼續シ、特ニ支那大陸ヨリスル我本土空襲並ニ海上交通ノ妨害ヲ制扼シツツ、機ヲ見テ速カニ支那問題ノ解決ヲ圖ル

四、獨ニ對シテハ、手段ヲ盡シテ提携緊密化ヲ圖ル但シ對ソ戰ヲ惹起スルカ如キコトナカラシム

五、大東亞ノ諸國家諸民族ニ對シテハ、民心ヲ把握シ帝國ニ對スル戰爭協力ヲ確保增進スル如ク指導ス

敵側ノ政謀略ニ對シテハ、嚴ニ警戒シ機先ヲ制シテ所要ノ措置ヲ講ス

六、統帥ト國務トノ連繫ヲ益々緊密ニシ、戰爭指導ヲ愈々活潑ニス

七、速カニ國內總力ヲ結集發揮スル爲、決戰施策ヲ斷行シテ決勝戰力特ニ航空戰力ヲ增强シ、擧國赴難ノ士氣昂揚ヲ圖ル

八、對敵宣傳謀略ハ、一貫セル方針ノ下ニ强力ニ之ヲ行ヒ、其ノ重點ヲ樞軸道義ノ宣揚、我カ大東亞政策ノ徹底、主敵米ノ戰意喪失、米英ソ支ノ離間及印度獨立ニ指向ス

議題其ノ二、「今後採ルヘキ戰爭指導大綱」ニ基ク當面ノ緊急措置ニ關スル件

一、陸、海船舶ノ徵傭及補塡ニ關シ、左ノ通リ定ム

1 陸海軍ハ、十月上旬ニ於テ計二五萬總噸(九月徵傭分ヲ含ム)ヲ增徵ス

2 九月以降ニ於ケル陸、海船舶ノ喪失ニ對シテハ、計三萬五千總噸以內ニ於テ翌月初頭ニ補塡ス

二、航空戰力ヲ根幹トスル決勝戰力確保ノ爲、昭和十九年度ニ於テ左ノ重要生產目標ヲ槪定シ、之カ必成ヲ期ス

1 普通鋼鋼材 五〇〇萬噸

2 特殊鋼鋼材 一〇〇萬噸

3 アルミニユウム 二一萬噸以上

4 甲造船 一八〇萬總噸

三、前二項ノ要請ニ旣應スル爲

1 戰力增强上必要ナル凡有非常ノ方途ヲ斷行ス

2 遲クモ昭和十九年度初頭ヨリ船腹保有量ヲ增加セシムル爲

(イ) 船舶ノ喪失ヲ極限ス

(ロ) 甲乙造船ノ實行ヲ促進ス

尙陸、海、民船舶運航率ノ向上ヲ期ス