[文書名] 日ソ漁業條約延長議定書北樺太利權移讓議定書（日ソ漁業条約延長議定書北樺太利権移譲議定書）
昭和十九年（一九四四）三月三十日モスコーニ於テ調印
同年三月三十一日情報局發表
情報局發表（昭和十九年三月三十一日午後五時）
日ソ中立條約締結ノ際ノ了解ニ基ク北樺太石油及石炭利權ノ移讓ニ關スル議定書並ニ漁業條約ノ五ケ年延長ニ關スル議定書ハ三月三十日モスコー市ニ於テ大日本帝國特命全權大使佐藤尙武トソヴィエト社會主義共和國聯邦外務人民委員代理エス・アー・ロゾフスキートノ間ニ署名調印セラレタリ
日本國「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦間漁業條約ノ五年間效力存續ニ關スル議定書
大日本帝國政府及「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ漁業問題ニ關シ兩國政府間ニ最近行ハレタル商議ノ結果トシテ左ノ通リ協定セリ
第一條 千九百二十八年一月二十三日署名セラレ、千九百三十六年ヨリ每年其ノ有效期間ノ延長セラレ、千九百四十三年十二月三十一日右期間ノ滿了セル日本國「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦間漁業條約及之ニ附屬スル一切ノ文書ハ本議定書ノ規定スル條件ノ下ニ千九百四十四年一月一日ヨリ起算シ五年間引續キ效力ヲ存續スヘシ
第二條 「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ漁業團體及人民ノ漁業ノ經營ニ關スル一切ノ問題ハ專ラ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ニ依リ處理セラルヘク漁業條約及同條約附屬文書ノ規定ニ依リ規律セラレサルモノトス
前項ノ規定ニ從ヒ漁業條約及同條約附屬文書中「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ漁業團體及人民ノ漁業ノ經營ニ關スル一切ノ規定ハ其ノ效力ヲ失ヒ今後適用セラレサルモノトス
第三條 漁業條約附屬議定書（甲）第一條中左ノ修正及追加ヲ行フ
（イ） 議定書（甲）第一條末項ノ規定ヲ修正スル爲左ノ規定ヲ以テ之ニ代フ
「右ノ外左ノ灣內ニ於テハ漁業ハ他ノ外國人ニ對スルト同樣日本國臣民ニ對シ禁止セラルヘシ
一 「アヴァチァ」灣（「クルトイ」岬ヨリ「ベチェヴィンスカ」灣（同灣ヲ含ム）ニ引キタル線ヲ以テ區切ラレタル區域）
二 「デ、カストリー」灣（「ユージヌイ」岬ヨリ「クレストヴァヤ」灣（同灣ヲ含ム）ニ引キタル線ヲ以テ區切ラレタル區域）
三 「ソヴィエト」灣（北緯四十九度二十六分、東經百四十度二十七分ノ點ヨリ北緯四十八度四十分、東經百四十度十一分ノ點ニ引キタル線ヲ以テ區切ラレタル區域）
四 「セント、オルガ」灣及「セント、ヴラヂーミル」灣（「ラフレ」河ノ河口ヨリ「ナフヴァリヌイ」岬ニ引キタル線ヲ以テ區切ラレタル區域）
五 「ピーター」大帝灣（「ポシエット」灣ヲ含ム） （「オパスヌイ」島ヨリ圖們江口ニ引キタル線ヲ以テ區切ラレタル區域）」
議定書（甲）第一條ニ第十六號、第二十七號、第三十號及第三十二號トシテ記載セラルル灣ハ前記五箇ノ區域中ニ夫々包含セラレタルモノトシテ今後右番號ニ依リ呼稱セラルルコトナカルヘシ
前記五箇ノ漁業禁止區域ノ正確ナル境界ハ本議定書ニ附屬シ、本議定書ノ署名ト同時ニ日本國及「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ全權委員間ニ交換セラルル公文第二號ニ於テ之ヲ定ム
（ロ） 議定書（甲）第一條ニ揭ケラルル漁業條約第一條ノ例外タル入江ノ表中左ノ二ヲ加フ
一、「オッソール」灣
二、「タウイスク」灣西北部
第四條 漁業條約ニ附屬シ、千九百二十八年一月二十三日交換セラレタル公文第一號ニ揭ケラルル稅金及手數料ヨリ成ル抵代稅ハ之ヲ當該漁區ノ貸付ニ對スル報償金ノ百分ノ三十迄引上ク
第五條 漁業條約附屬議定書（丙）ノ（乙）（六）ニ揭ケラルル罐詰工場ノ經營ニ對スル特別報償金（「ドリェヴォエ・オッチスリェニエ」）ハ之ヲ左ノ率マテ引上ク
一 紅鮭ニ對シテハ一函ニ付二十五「コペック」
二 鮭、銀鮭及鱒ノ助ニ對シテハ一函ニ付二十「コペック」
三 鱒ニ對シテハ一函ニ付十二「コペック」
四 蟹ニ對シテハ一函ニ付五十「コペック」
第六條 本議定書ハ署名ノ日ヨリ實施セラルヘシ
本議定書ハ日本文及露西亞文ヲ以テ作成セラレ兩本文ハ同等ノ效力ヲ有ス
右證據トシテ下名ハ各本國政府ヨリ正當ノ委任ヲ受ケ本議定書ニ署名調印セリ
昭和十九年三月三十日卽チ千九百四十四年三月三十日「モスコー」市ニ於テ本書二通ヲ作成ス
大日本帝國全權委員
「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦
駐箚大日本帝國特命全權大使
佐藤尙武（印）
「ソヴィェト」社會主義共和國聯邦全權委員
「ソヴィェト」社會主義共和國聯邦外務人民委員代理
エス、アー、ロゾフスキー（印）
交換公文往翰要旨
第一號（往翰）
以書翰啓上致候陳者本全權委員ハ貴全權委員ヨリ本日附ノ左記書翰ヲ受領スルノ光榮ヲ有シ候
以書翰啓上致候陳者千九百二十八年一月二十三日署名セラレタル「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦日本國間漁業條約及同條約附屬文書ノ五年間效力存續ニ關スル議定書本日署名セラレタルニ鑑ミ本全權委員ハ貴全權委員ニ左ノ通通報スルノ光榮ヲ有シ候
一、「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ千九百二十八年十一月三日締結セラレタル日本國臣民ニ依ル罐詰工場及右工場ニ割當テラレタル漁區ノ經營ニ關スル特別契約並ニ其ノ關係文書及其ノ後ノ追加取極ノ效力ヲ議定書及其ノ附屬文書ニ別段ノ規定ナキ限リ從前ノ條件ノ下ニ千九百四十四年一月一日ヨリ起算シ五年間更新スルコトニ同意ス
二、日本國臣民ニ貸付セラレタルモ千九百三十九年及千九百四十年ノ二年間引續キ經營セラレサリシ左ノ二十四漁區ハ其ノ貸付期間ノ滿了セルト否トニ拘ラス閉鎖セラレ將來競賣ニ付セラルルコトナカルヘシ
漁區番號
四一、四二、二六九、二七一、二七三、三六七、四九七、四九八、五四三、五五五、五五六、五六一、六三八、六四一、一〇〇二、一〇〇三、一〇〇四、一〇八二、一一〇四、一一九〇、一二六五、一二六六、一二六七及九五（蟹漁區）
前記漁區ノ貸付契約ニシテ未タ其ノ有效期間ノ滿了セサルモノハ解除セラルヘシ
三、前記一及二ニ揭ケラルル漁區ヲ除キ千九百四十三年末現在ニ於テ日本國臣民ニ貸付セラレ居リタル漁區ハ其ノ貸付期間ノ滿了後漁業條約附屬議定書（甲）第六條第一項ニ規定セラルル夫々ノ貸付期間ヲ以テ競賣ニ依リ貸付セラルヘシ
又千九百四十四年ヨリ起算シ五年間ニ於テ每年行ハルル前項ノ競賣ニ際シ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ漁業團體及人民ノ競落スヘキ漁區ノ數ハ當該年度ニ於テ右競賣ニ付セラルヘキ漁區ノ總數ノ百分ノ十ヲ超エサルヘク又「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ漁業團體及人民ハ罐詰工場ノ設置セラレアル漁區ヲ競落スル意圖ヲ有セサルモノトス
右ニ對スル回答トシテ本全權委員ハ貴全權委員ノ前記通報ヲ了承スルノ光榮ヲ有シ候
本全權委員ハ茲ニ貴全權委員ニ向テ敬意ヲ表シ候 敬具
第二號（往翰）
以書翰啓上致候陳者本全權委員ハ貴全權委員ヨリ本日附ノ左記書翰ヲ受領スルノ光榮ヲ有シ候
以書翰啓上致候陳者本全權委員ハ本日署名セラレタル千九百二十八年一月二十三日ノ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦日本國間漁業條約及同條約附屬文書ノ五年間效力存續ニ關スル議定書第三條（イ）ノ規定ニ關シ右規定ニ揭ケラルル五箇ノ漁業禁止區域ノ境界ハ左ノ通定メラレタルコトヲ貴全權委員ニ通報スルノ光榮ヲ有シ候一、「アヴァチア」灣（「クルトイ」岬ヨリ「ベチェヴィンスカ」灣（同灣ヲ含ム）ニ引キタル直線ニ至ル）
二、「デ、カストリー」灣（左記諸點ヲ直線ヲ以テ連結スル線ニ至ル）
（イ） 「ユージヌイ」岬北緯五十一度四十一分、東經百四十一度六分三秒
（ロ） 北緯五十一度二十五分六秒、東經百四十一度六分四秒
（ハ） 北緯五十一度十六分、東經百四十一度
（ニ） 「クレストヴァヤ」灣（同灣ヲ含ム）北緯五十一度八分、東經百四十度四十分
三、「ソヴィエト」灣（左記諸點ヲ直線ヲ以テ連結スル線ニ至ル）
（イ） 北緯四十九度二十六分、東經百四十度二十七分
（ロ） 北緯四十九度二十分、東經百四十度四十分
（ハ） 北緯四十九度十分、東經百四十度四十六分
（ニ） 北緯四十八度四十分、東經百四十度四十分
（ホ） 北緯四十八度四十分、東經百四十度十一分
四、「セント、オルガ」灣及「セント、ヴラヂーミル」灣（左記諸點ヲ直線ヲ以テ連結スル線ニ至ル）
（イ） 「ラフレ」河口
（ロ） 北緯四十四度、東經百三十五度四十八分
（ハ） 北緯四十三度四十二分、東經百三十五度三十八分
（ニ） 北緯四十三度三十分、東經百三十五度二十分
（ホ） 「ナフヴァリヌイ」岬
五、ピーター大帝灣（「ポシエット」灣ヲ含ム） （左記諸點ヲ直線ヲ以テ連結スル線ニ至ル）
（イ） 「オバスヌイ」島
（ロ） 北緯四十二度四十二分、東經百三十四度十一分
（ハ） 北緯四十二度二十五分、東經百三十二度二十八分
（ニ） 北緯四十二度二十四分、東經百三十二度二十一分
（ホ） 北緯四十二度二十分、東經百三十一度三十分
（ヘ） 北緯四十二度十八分、東經百三十度四十二分
前記五箇ノ漁業禁止區域ノ境界ハ現在ノ戰爭ノ終了ニ至ル迄ノ期間設定セラルルモノトス
右ニ對スル回答トシテ本全權委員ハ貴全權委員ノ前記通報ヲ了承スルノ光榮ヲ有シ候
本全權委員ハ茲ニ貴全權委員ニ向テ敬意ヲ表シ候敬具
第三號（往翰）
以書翰啓上致候陳者本全權委員ハ本國政府ノ爲ニ左ノ通通報スルノ光榮ヲ有シ候
一、日本國政府ハ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ノ要望ニ依リ「カムチァトカ」東海岸及「オリュートル」地區ニ於テ日本國臣民ノ借受ケ居ル一切ノ漁區カ太平洋ニ於ケル戰爭ノ終了スル迄右漁區ノ借受人ニ依リ經營セラレサルヘキ旨保障スルコトニ同意ス
二、尤モ前記漁區ノ日本國臣民ニ依ル經營差控ノ事實ハ前記地域ニ存在スル何レノ漁區又ハ工場ノ經營ニ關スル契約ニ付テモ解除ノ原因ヲ成スコトナカルヘキモノト了解セラル
本全權委員ハ茲ニ貴全權委員ニ向テ敬意ヲ表シ候敬具
北「サガレン」ニ於ケル日本國ノ石油及石炭利權ノ移讓ニ關スル議定書
大日本帝國政府及「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ千九百四十一年四月十三日ノ中立條約ニ關聯シ兩國政府間ニ成立セル北「サガレン」ニ於ケル日本國ノ石油及石炭利權ノ解消ニ關スル了解ヲ實現スルノ目的ヲ以テ爲サレタル商議ノ結果トシテ左ノ通協定セリ
第一條 日本國政府ハ北「サガレン」ニ於ケル日本國ノ石油及石炭利權ニ關スル一切ノ權利ヲ本議定書及之ニ附屬スル本議定書適用條件ノ定ムル所ニ從ヒ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ニ移讓スヘシ
一方「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ト他方日本國利權者トノ間ニ千九百二十五年十二月十四日締結セラレタル利權契約並ニ其ノ後締結セラレタル追加契約及取極ハ本議定書ニ依リ廢止セラルルモノトス
第二條 日本國利權者カ北「サガレン」ニ於テ所有スル一切ノ財產（施設、設備、材料、豫備品、食料品等）ハ本議定書及之ニ附屬スル本議定書適用條件ニ別段ノ規定ナキ限リ現在ノ狀態ニ於テ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ノ所有ニ移サルヘキモノトス
第三條 前二條ノ規定ニ關聯シ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ本議定書ニ附屬スル本議定書適用條件ノ規定ニ從ヒ五百萬（五、〇〇〇、〇〇〇）「ルーブル」ノ額ヲ日本國政府ニ支拂フコトヲ約ス
「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ又日本國政府ニ對シ「オハ」油田ニ於テ採取セラルル石油ヲ通常ノ商業條件ニ依リ現在ノ戰爭終了ノ時ヨリ引續キ五年間五萬（五〇、〇〇〇）メートル、トン供給スルコトヲ約ス
第四條 「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ日本國政府ニ對シ本議定書ニ附屬スル本議定書適用條件ノ規定ニ從ヒ日本國利權者ノ貯藏シ及所有スル石油及石炭ノ利權地ヨリノ支障ナキ且無稅ノ搬出ヲ保障ス
第五條 本議定書ハ署名ノ日ヨリ實施セラルヘシ
本議定書ハ日本文及露西亞文ヲ以テ作成セラレ兩本文ハ同等ノ效力ヲ有ス
右證據トシテ下名ハ各本國政府ヨリ正當ノ委任ヲ受ケ本議定書ニ署名調印セリ
（佐藤大使、「ロゾフスキー」外務人民委員代理署名）
議定書適用條件
一、議定書第一條ニ付
（一） 利權企業ニ從事スル日本國臣民タル職員及勞働者ノ日本國ヘノ引揚ケニ際シテハ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ何等ノ稅金、課金又ハ手數料ヲ徵スルコトナカルヘク、又ソノ北「サガレン」ヨリノ出國ニ必要ナル一切ノ便宜及援助ヲ供與スヘシ
前記職員及勞働者ノ北「サガレン」ヨリノ出發ハ千九百四十四年ノ航海開始後遲滯ナク行ハルヘシ出發ニ至ルマテ右職員及勞働者ハ其ノ現ニ占有スル住居及右住居使用ノタメ必要ナル附屬地區ノ無償使用ヲ許サルヘク又「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ地方官憲ハ右職員及勞働者ノ生活條件ヲ從前ノ程度ニ於テ維持スルタメ必要ナル一切ノ便宜及援助ヲ供與スヘシ
（二） 日本國ノ石油及石炭利權ニ關スル權利ノ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ヘノ移讓ニ關聯シ日本國政府ハ日本國臣民タル職員及勞働者ニ對スル退職手當ヲ支拂フヘク同樣ニ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦人民タル職員及勞働者ニ對スル退職手當ヲ支拂フヘシ
二、議定書第二條ニ付
（一） 「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ日本國利權者カ日本國領域內ニ於テ所有スル一切ノ財產ニ對シ何等ノ請求ヲ爲ササルヘシ
（二） 「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ日本國利權者ニ依ル其ノ所屬利權企業ノ經營ニ關聯シ同政府カ日本國利權者ニ對シ有スル裁判上及金錢上ノ一切ノ請求ヲ抛棄スルモノトス
（三） 日本國利權者ノ現地ニ於テ現ニ所有スル現金及銀行預金ハ右利權者ノ爲留保セラルヘシ
本條ノ規定ニ從ヒ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ニ引渡サルヘキ財產中食料品及生活必需品ハ利權企業ニ從事スル日本國臣民タル職員及勞働者ノ現在ノ生活程度ヲ維持スル爲必要ナル範圍ニ於テ右職員及勞働者ノ北「サガレン」ヨリノ出發ニ至ル迄ノ全期間中其ノ無償使用ニ提供セラルヘシ
三、議定書第三條ニ付
本條ノ規定ニ從ヒ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ニ依リ日本國政府ニ對シ「ルーブル」ニテ支拂ハルヘキ金額ハ議定書實施ノ日ヨリ一週間以內ニ「モスコー」市ニ於ケル「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦國立銀行內日本國政府ノ特別勘定ニ「ルーブル」ニテ拂込マルヘキモノトス
「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ日本國政府ノ要請アリタルトキハ右特別勘定ニ計上セラレタル「ルーブル」ヲ純金量一ゲラムニ付五・九六三九六「ルーブル」ノ價格ヲ以テ金〓ニ替之ヲ日本國政府ノ處分ノ爲滿洲里驛ニ於イテ日本國政府ノ代表者ニ引渡スコトヲ約ス
「ルーブル」ヲ金ニ替フルニ當リ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ日本國政府ニ對シ金ヲ世界市場ニ輸送シ且賣却スル費用トシテ百分ノ五ノ率ニ於テ金ヲ以テ追加的ニ支拂フモノトス
四、議定書第四條ニ付
本條ノ規定ニ從ヒ搬出セラルヘキ貯油及炭ノ量ハ兩國代表者ノ共同調査及計量ニ基キ議定書第二條ニ規定セラレタル財產ノ引渡シニ際シ確定セラルヘシ
日本國政府ノ要請アリタルトキハ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ前記貯油及貯炭ノ搬出ノ爲日本國政府ノ派遣スヘキ船舶ニ對シ北「サガレン」諸港ヘノ入港ヲ直ニ許可スヘシ但シ貯油及貯炭ノ搬出ハ千九百四十四年ノ航海開始ノ日ヨリ四月以內ニ行ハルヘキモノトス
「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ前記貯油及貯炭ノ所定期間內ニ於ケル北「サガレン」ヨリノ搬出ニ至ル迄之カ保全ノ責ニ任スヘク且右貯油及貯炭ノ船舶ヘノ積込ニ必要ナル勞働者ノ確保ヲ含ム一切ノ便宜及援助ヲ供與スヘシ 前記貯油及貯炭ノ船舶ヘノ積込ノ爲「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦側ヨリ提供セラルヘキ勞働者ニ對スル支拂ハ現在「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ當該企業ニ於テ行ハルル賃金率ニ從ヒ日本側ニ依リ行ハルルモノトス