データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第1回主要国首脳会議におけるランブイエ宣言(経済宣言)

[場所] ランブイエ
[年月日] 1975年11月17日
[出典] 外交青書20号,120−122頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 フランス,ドイツ連邦共和国,イタリア,日本国,グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国の元首及び首相は,1975年11月15日から17日までランブイエ城に集い,次のとおり宣言することに合意した。

1.われわれは,この3日間に世界の経済情勢,われわれの国々に共通する経済の諸問題,これらの人間的,社会的及び政治的意味あい,ならびにこれらの問題を解決するための諸構想について,十分かつ実り多き意見の交換を行つた。

2.われわれがここに集うこととなつたのは,共通の信念と責任とを分かち合つているからである。われわれは,各々個人の自由と社会の進歩に奉仕する開放的かつ民主的な社会の政府に責任を有する。そして,われわれがこれに成功することは,あらゆる地域の民主主義社会を強化し,かつ,これらの社会にとり真に緊要である。われわれは,それぞれ,主要工業経済の繁栄を確保する責任を有する。われわれの経済の成長と安定は,工業世界全体及び開発途上国の繁栄を助長することとなる。

3.ますます相互依存が深まりつつある世界において,この宣言に述べられている諸目的の達成を確保するために,われわれは,われわれの十分な役割を果たすとともに,経済の発展段階,資源賦存度及び政治的,社会的制度の差異を越え,すべての国々の間の一層緊密な国際協力と建設的対話のためのわれわれの努力を強化する意図を有する。

4.先進工業民主主義諸国は,失業の増大,インフレの継続及び重大なエネルギー問題を克服する決意を有する。今回の会合の目的は,われわれの進捗状況を検討し,将来克服すべき諸問題をより明確に確認し,かつ,われわれが今後辿るべき進路を設定することであつた。

5.最も緊要な課題は,われわれの経済の回復を確保し,失業がもたらす人的資源の浪費を減少せしめることである。経済の回復を確固たるものとするにあたり,その成功を脅かすこととなる追加的インフレ圧力の発生を回避することが肝要である。目的とすべきは,着実かつ持続的な成長である。かくして,消費者及び企業家の自信が回復されることとなる。

6.われわれは,われわれの現在の政策が両立し,かつ,相補うものであり,回復が進行しつつあることを確信する。しかしながら,われわれは,政策の遂行にあたり,警戒を怠ることなく,また,時宜に応じ対処する必要性を認める。われわれは,回復の挫折を許容しない。われわれは,インフレの再燃を容認しない。

7.われわれの関心は,また,世界貿易,通貨問題及びエネルギーを含む原材料の分野における新たな努力の必要性に集中した。

8.国内的回復及び経済の拡大の進行に伴い,われわれは,世界貿易の量的増大の回復に努力しなければならない。その増大と価格安定は,開放された貿易体制の維持により促進されることとなる。保護主義再燃の圧力が強まりつつある現在,主要貿易国は,OECDプレッジの諸原則に対するコミットメントを確認することが緊要であり,また,他国の犠牲において自国の問題の解決をはかり得るような措置に訴えることは,それが経済,社会及び政治の分野において有害な結果をもたらすものであり,回避することが緊要である。すべての諸国,なかんずく国際収支において強い立場にある諸国及び経常収支上の赤字国は,互恵的世界貿易の拡大のための政策を推進する責任を有する。

9.われわれは,多角的貿易交渉が促進されるべきであると信じる。この交渉は,東京宣言にもられている諸原則に従つて,一部の分野における関税撤廃をも含む大幅な関税引下げ,農産品貿易の相当な拡大及び非関税措置の軽減を目的とすべきである。この交渉は,最大限の貿易自由化を達成することを目的とすべきである。われわれは,1977年中にこの交渉を完了するとの目標を提案する。

10.われわれは,緊張緩和の進展及び世界経済の成長の重要な一要素として,われわれと社会主義諸国との経済関係の秩序ある実り多き増進を期待する。

  われわれは,また,現在進められている輸出信用に関する交渉を早期に完結するための努力を強化する。

11.通貨問題に関し,われわれは,より一層の安定のために作業を進める意図を確認する。この作業は,世界経済の基調を成す経済・金融上の諸条件のより一層の安定を回復する努力をも含んでいる。同時に,われわれの通貨当局は,為替相場の無秩序な市場状態またはその乱高下に対処すべく行動するであろう。われわれは,国際通貨制度の改革を通じて安定をもたらす必要に関し,他の多くの国の要請により,合衆国とフランスの見解に歩み寄りがみられたことを歓迎する。この歩み寄りは,IMFを通じ,同暫定委員会のジャマイカでの次期会合における国際通貨改革の諸懸案に関する合意を助長することとなろう。

12.開発途上国と先進工業世界との間の協調的関係及び相互理解の改善は,それぞれの繁栄の基盤をなす。われわれの経済の持続的成長は,開発途上国も成長のために必要であり,また,開発途上国の成長は,われわれの経済の健全性に大きく貢献するものである。

  開発諸途上国の現在の大幅な経常収支赤字は,これらの諸国のみならず世界全体にとつて重大な問題である。この問題は,幾多の相互補完的な方途によつて対処されなければならない。いくつかの国際的会議における最近の諸提案は,既に先進国と開発途上国との間の話合いの雰囲気を改善した。しかし,開発途上諸国を助けるために,速やかな実際的行動が必要とされている。従つて,われわれは,開発途上諸国の輸出所得の安定化のための国際的諸取極及びこれら諸国の赤字補填を支援する措置を緊急に改善するにあたり,IMFその他適当な国際的市場においてわれわれの役割を果たすものである。この関連において,最貧開発途上国に重点が置かれるべきである。

13.世界経済の成長は,エネルギー源の増大する供給可能性に明らかに結びついている。われわれは,われわれの経済の成長のために必要なエネルギー源を確保する決意である。われわれの共通の利益は,節約と代替エネルギー源の開発を通じ,われわれの輸入エネルギーに対する依存度を軽減するために,引続き協力することを必要としている。これらの諸施策及び産油国と消費国との間の双方の長期的利益に応えるための国際協力を通じて,われわれは,世界エネルギー市場におけるより均衡のとれた条件と調和のとれた着実な発展を確保するために努力を惜しまない。

14.われわれは,12月16日に予定されている国際経済協力会議の開催を歓迎する。われわれは,すべての関係国の利益が擁護され,かつ増進されることを確保するとの積極的考えに立つてこの対話をとり進める。われわれは,先進工業国も開発途上国も,世界経済の将来の成功と,その基礎となる協力的政治関係に共に重大な利害を有していると確信する。

15.われわれは,既存の制度の枠組み及びすべての関係国際機関において,これらのすべての問題についての協力を強化する意図を有する。