データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回先進国首脳会議におけるダウニング街首脳会議宣言(経済宣言)

[場所] ロンドン
[年月日] 1977年5月8日
[出典] 外交青書22号,391−393頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 ダウニング街におけるこの2日間にわたる集中的討議を通じ,われわれは,われわれ自身の国とその他の国々の双方の福利を増進するため,いかに最善の助力をなしうるかについて合意した。

 世界経済は,全体として考えられなければならない。これは単に各国政府間の協力のみならず,適当な国際機関の強化を伴わなければならない。われわれは,われわれが直面している全ての問題の相互関連性とわれわれ自身の相互依存の事実につき認識を更に深めた。われわれは,未来の挑戦に対して,共同して対処する決意である。

 −われわれの最も緊急な任務は引き続きインフレを抑制しつつさらに雇用を拡大することである。インフレは,失業を減少せしめるものではなく,かえつて失業の主要な原因の一つである。われわれは,特に,若年層の失業問題につき懸念を有している。われわれは,若年層に雇用機会を提供することに関し,相互に経験と考え方を交換することに合意した。

 −われわれの政府は,公表されている経済成長目標の達成又は安定化政策の実施を約束する。こうした目標及び政策は,全体として見れば,われわれ自身の国及び全世界におけるインフレなき持続的成長と国際収支不均衡の軽減のための基礎をもたらすこととなろう。

 −融資制度の改善が必要である。国際通貨基金は顕著な役割を果さなければならない。われわれは,IMFの資金を増大させることを約束し,その融資活動を適当な安定化政策の採用に連繋せしめることを支持する。

 −われわれは,開放的な国際貿易制度を強化するために貿易の機会を拡大するよう強い政治的指導力を発揮する。これは雇用機会を拡大することとなろう。われわれは,保護主義を拒否する。保護主義は失業を助長し,インフレを昂進させ国民の福祉を低下させる。われわれは,多角的貿易交渉東京ラウンドに新たな活力を吹き込むであろう。われわれの目的は,重要な諸分野において1977年に実質的進展の達成をはかることである。この分野においては世界経済の構造的変化が考慮に入れられなければならない。

 −われわれは,石油への依存度を低下させるためエネルギーを一層節約し,その生産を拡大し,多様化する。われわれは,世界のエネルギー需要への対応に資するため,核エネルギーの増大の必要性につき合意した。われわれは,これを核拡散の危険を減少せしめつつ,実施することを約束する。われわれは,これら諸目的を達成する最善の方途を決定するため,緊急な研究を発足させる。

 −世界経済が持続的かつ衡平な基盤の下に成長することができるのは,開発途上国もそのような成長を分ち合う場合のみである。われわれは,CIECを成功裡に完了せしめるため全力を投入することにつき合意するとともに,開発途上国との建設的な対話を継続することを約束する。われわれは,これらの国に対する援助の流れ及びその他の実物資源の移転を増大することを目指すとともに,コメコン諸国も同様の努力を行うことを要請する。われわれは,世界銀行等多角的機関を支援する。これら機関の一般的資金は,その融資の実質額での増大を許容するに十分な程に増やされるべきである。われわれは,世界経済の成長を助長するため,安全な民間投資の重要性を強調する。

 これらの任務を遂行するため,われわれは,他国の支援と協力を必要とする。われわれは,このような協力を国際連合,世界銀行,IMF,GATT及びOECD等適当な国際機関において推進する。われわれのうちで欧州経済共同体加盟国である国は,共同体の枠組の中において努力する意図を有する。

 討議においてわれわれは,相当の合意に到達した。われわれの重要な目的は,この合意を行動に移すことである。われわれは,経済回復の勢いを維持するため,ここダウニング街において討議されたすべての施策の進展ぶりにつき見直しを行つていくであろう。

 ダウニング街首脳会議の趣旨は,

 −われわれ社会の継続的強靱性とこれら社会の活力の基盤をなしてきている民主主義の諸原則に対する自信の確保

 −われわれが諸問題を克服し未来の一層の繁栄を実現するため必要な諸政策を実施しつつあるとの自信の表明である。

  1977年5月8日