データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第9回主要国首脳会議(ウィリアムズバーグ・サミット)関連文書:中曽根内閣総理大臣冒頭発言

[場所] ウィリアムズバーグ
[年月日] 1983年5月29日
[出典] 外交青書28号,451−452頁.
[備考] 
[全文]

 レーガン大統領閣下の御招待でここに集まり,特に従来例がなかった首脳だけの自由な討議でこの会議を始めることができることは喜ばしい。

 このイニシアティヴをとられた大統領閣下に感謝する。

 我々は,今次サミットを世界経済回復への転機となし,もって,世界に向けて明るい展望を示さんがために集まっている。

 失業,保護主義などに対する闘いは我々自身の力強いリーダーシップなくしては解決は覚つかない。

 今日,世界経済が直面する諸困難の解決を図るためには,われわれ最高責任を担う者は自ら代表する国家の利益のみを追求することは許されない。今日,国際社会には,深い相互依存関係が存在し,その国際社会はサミット7ヵ国の経済,社会の健全さに大きく依存している。

 したがって,我々は,かかる大局的見地から忌憚なく話合い,それぞれの問題に対する理解を深めてこそ初めて実効性あるまた信頼できる問題解決の方法を示し得るといえる。

 我々は,サミットにおいて,世界経済の先行きについて明るい,しかも信頼できる展望を世界に示さなければならない。かくしてこそ自由民主主義体制と市場経済の優位に対する信認を不動のものとなしうることになろう。また,それは南側に対して将来への希望を強めることとなろう。

 さらに今次サミットの機会の政治協議において政治,経済,安全保障分野における我々の共通の基本的立場が確認されれば,我々の世界への呼びかけはさらに有効なものとなろう。我々は西側の固い団結の下に西側の安全を図りつつ,緊張緩和への道を開かなければならない。

 これから討議を進めるに当っては私は次の諸項目を共同行動の指針として臨めば先行き不透明感を払拭し,世界の期待に積極的に応え得ると信ずる。

(1) 第1に我々西側先進諸国が連帯と協調による一枚岩の結束を世界に示すことである。

(2) 第2に世界経済インフレなき持続的成長のため,各国は,[1]内外にバランスのとれた経済運営を図り,[2]幅広い構造調整を推進し,[3]自由貿易体制を堅持し,保護貿易措置の撤廃を進め,ガットの強化を図るということである。

(3)第3に南北問題については,「南の繁栄なくして,北の繁栄なし」という認識の下に,南北間の対話を促進し,南側の自助努力に対する支援政策を推進するということである。この関連で我々は第6回UNCTAD総会についても,建設的な南北関係の構築に向けて努力しなければならない。

(4)なお東西経済関係についてはOECD,IEAでの成果を踏まえ,協調的行動をとるため今後とも各種の協議を更に進めることが適当と考える。