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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第9回主要国首脳会議における経済回復に関するウィリアムズバーグ宣言(経済宣言)

[場所] ウィリアムズバーグ
[年月日] 1983年5月30日
[出典] 外交青書28号,453−456頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々の諸国は,民主主義,個人の自由,創造性,道徳的志向,人間の尊重及び人格・文化の発展に自らをゆだねているという意味において結ばれている。我々の繁栄はこれら共通の価値を守り,持続させ,かつこれを広めていくためにこそ重要である。

 我々の社会派,景気後退という厳しい試練にさらされながらも,これに対する強靱性を示してきた。これまでのところ,インフレの抑制及び金利の低下の面で大きな成功が達成されてきている。生産性も向上してきており,我々は,今や経済回復の明瞭な兆しを目の当たりにしている。

 にも関わらず,先進民主主義諸国は,10年間にわたるインフレの昂進を逆進し,失業を低減させるために,景気回復の実現とその持続を確保するという困難な課題を引き続き担っている。我々すべては低いインフレ率を達成,維持し,かつ現在のあまりにも高い水準にある金利を低下させることに努力を集中しなければならない。我々は,特に歳出の伸びを抑えることによって,構造的財政赤字を削減していくという誓約をここに改めて確認する。

 我々は,共に行動しなければならないことを認識するとともに,先進国,開発途上国双方のすべての国々に景気回復が及ぶよう,成長,貿易及び金融の相互間の関係を勘案し,かつこれを利用した均衡のとれた一連の政策を進めていかなければならないことも認識している。

 これらの目標を追求するために,我々は,次のとおり合意した。

(1) 我々の政府は,低いインフレ率,金利の低下,生産的投資のより高い水準,及び特に若年層に対する雇用機会の増大をもたらすような適切な金融・財政政策を進めていく。

(2) ヴェルサイユで開始された協議プロセスは,我々諸国の経済情勢の調和と為替相場の一層の安定を促進するため,この宣言の付属文書に示された方向に沿って,強化される。

 我々は,為替市場に影響を与える諸政策,及び市場の状況に関し,一層緊密な協議を進めることに合意する。また,我々各国が個別に行動する自由を保持しつつ,為替市場に対する協調介入が有益であろうと合意された場合には,すすんでそのような介入を行う用意がある。

(3) 我々は,保護主義に歯止めをかけること,及び景気回復の進行に伴い,貿易障壁を撤廃していくことにより保護主義を巻き返すことを約束する。我々は,この約束を実施し,監視する方法につき適切な既存の場において協議していく意向である。

 我々は,今日の貿易上の諸問題の解決を促進していくものとする。我々は,サービス貿易及び高度技術製品の貿易を含め,GATT(関税と貿易に関する一般協定)及びOECD(経済協力開発機構)における現在の作業計画を消極的に進めていく。

 我々は,開発途上国との,また,開発途上国相互間の貿易の拡大に特に力点を置きつつ,GATTにおける一層の貿易自由化交渉を実現するため努力していくべきである。我々は,GATTにおける新しい交渉ラウンドへ向けての諸提案につき協議を続けていくことに合意した。

(4) 我々は,国際金融情勢,なかんずく多くの開発途上国の債務の重荷につき,憂慮の念を有している。我々は,債務国側における効果的な調整及び開発政策,十分な民間及び公的融資,より開放された市場,並びに世界的経済回復に基づく戦略に合意する。

 我々は,IMF(国際通貨基金)及びGAB(一般借入取極)の増資についての早期承認が得られるよう努力する。

 我々,諸国間及び特にIMF(国際通貨基金),IBRD(国際復興開発銀行)、GATT等の国際機関の間のより緊密な協力及び時宜を得た情報交換を慫慂する。(5) 我々は,各々の大蔵大臣に対し,IMF専務理事と協議しつつ,国際通貨制度改善のための条件を明らかにすると共に,この作業を進めていくに当たり、ハイレベルの国際通貨会議がいずれ果たすことのあり得る役割を検討するよう求めた。

(6) 景気後退のもたらす負担は,開発途上国に非常に重くかかってきており,我々は,これらの国々の景気回復につき憂慮している。我々の市場を開かれたものとしつつ,健全な経済成長を回復することが緊要である。

 2国間及び適当な国際機関を通ずる資金の流れ,特に政府開発援助で貧困国に対するもの,並びに食糧生産とエネルギー生産のための特別な関心が払われるであろう。我々は,IDA(国際開発協会)に対し合意されたレベルでの出資を行うとの約束を再確認する。

 我々は,最近のニューデリーにおける非同盟会議,及びブエノス・アイレスにおける77か国会議において開発途上国が対話を行っていこうとの姿勢を示したことを歓迎するとともに,来たるべきUNCTAD(国際貿易開発会議)のベオグラード会合に理解と協調をもって参加するとの決意をこれら諸国と共にするものである。

(7) 我々は,高度技術の開発を促進し,高度技術が成長,雇用,貿易の促進のために果たす役割を社会一般が受け入れていくことを慫慂することの必要性につき,意見の一致をみている。我々は,昨ヴェルサイユにおいて設置された「技術,成長及び雇用に関する作業部会」報告書に賛意をもって留意し,本報告書において取り上げられた十

18の協力プロジェクトにつき,これまでにみられた進歩を高く評価する。我々は,これらのプロジェクトに関する作業の実施及び調整を引き続き行い,我々の次回会合において,更に報告を受けることを期待する。

(8) 我々すべては,石油価格がより予測可能で,無秩序に変動しないようにしていくことが,世界経済の先行きにとって有益であろうという点で見解を共にする。我々は,石油価格の下落がエネルギーの節約,経済的な代替エネルギー源の開発,産消間接触の維持及び可能な場合におけるその改善,並びに現在不足している開発途上国の国内エネルギー生産の増大の奨励に向かっての努力の重要性及び緊急性を何ら減ずるものではないということにつき,意見を同じくするものである。

(9) 東西経済関係は,我々の安全保障上の利益に合致したものであるべきである。我々は,最近何か月にわたり,東西経済関係の主要な側面に関し,分析を行い,結論を引き出してきた諸国際機関の作業を賛意をもって留意する。我々は,これら諸機関が適宜作業を継続することを勧奨する。

(10)我々は,環境保全,天然資源のより有効な利用及び健康に関する研究についての協力を強化していくことに合意した。

 ここウィリアムズバーグにおける我々の討議は,景気回復の先行きにつき,新たな自信を与えるものである。我々は,健全にして,持続的な景気回復を促進するため,引続き存在する諸問題に協力して対処し,もって自国の国民と世界の人々に対し,新たな雇用とより良き生活をもたらしていくとの決意を一層強くした。

 我々は,明年再び会合することに合意し,英国におけるこの会合の開催についての英国首相の招待を受諾した。