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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回主要国首脳会議における国際テロリズムに関する声明

[場所] 東京
[年月日] 1986年5月5日
[出典] 外交青書30号,458−459頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々,主要民主主義諸国7ヶ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は、ここ東京に参集し,あらゆる形態の国際テロリズム,その共犯者,及び,政府を含めそれを主唱若しくは支援する者に対する非難を断固として再確認する。我々は,前回の会合以来かかるテロリズムが増加していること,また,とりわけそれが政府の政策の具として臆面なくかつ冷血に利用されていることを忌まわしく想う。テロリズムにはいかなる正当化の余地もない。それは人間の生命,自由及び尊厳の価値を無視し,卑劣な手段を用いることによって蔓延していくものである。それに対しては仮借なくかつ妥協することなく闘わねばならない。

2.我々は,テロリズムと戦い続けることは国際社会が一体となって遂行すべき任務であることを認識し,この害悪と闘うために最大限の努力を払うことを誓約する。テロリズムに対しては,国としてとる措置を国際強力と結びつけつつ,決然とした粘り強い,緻密な,かつ忍耐強い行動をとることによって効果的に闘わねばならない。それゆえ,我々は志を同じくする全ての国に対し,特に国際連合,国際民間航空機関及び国際海事機関などの国際的な機構において,これら機関の専門知識を結集しつつ,テロリズム及びそれを主唱若しくは支援する者に対抗する措置を改善し拡充する為,我々と協力するよう強く要請する。

3.元首及び首相は,テロ活動とそれを主唱若しくは支援する者がもたらす脅威及び潜在的脅威,並びに,これらを防止する方法について,適切な場における情報交換を強化することに合意する。

4.我々は,国際テロリストに対し彼らの目的を遂行するための機会と手段を拒否し,また,テロリズムを犯す者を確認し,抑止するため,いかなる関心ある政府もとりうる措置として次のものを特記する。我々はこれらの措置を国際法の枠内において,かつ自国の管轄権の範囲内で,国際テロリズムの主唱若しくは支援に明白に関わっているいかなる国家,特にリビア,についても,当該国がそのようなテロリズムの共謀若しくは支援を放棄するまでの間適用することを決定した。

−テロリズムを主唱若しくは支援する国に対する武器の輸出の拒否。

−かかる活動を行っている国の外交・領事使節団及びその他在外の公的機関の規模の厳格な制限,かかる使節団乃至機関の構成員の旅行の規制,並びに,適当な場合,かかる使節団乃至機関の大幅な削減若しくは閉鎖。

−国際テロリズムに関与した嫌疑で我々のいずれかの国か国外追放又は排除され,若しくはかかるテロ行為により有罪となった全ての者について,外交職員の場合も含め,入国を拒否すること。

−かかるテロ行為を犯した者を裁判に付すための適正な国内法の手続きに従った犯罪人引渡し手続きの改善。

−テロリズムを主唱若しくは支援する国の国民に対する,より厳格な入国及び査証発給の要件及び手続。

−テロリズムとの闘いに当り,警察及び治安機関並びに他の関係当局の間での可能な限り緊密な二国間及び多数国間の協力。

我々はそれぞれが,同様の措置が他の出来るだけ多くの政府により受け入れられ,実施されるよう確保するため我々が属する適切な国際機関で作業を行うことを決意している。

5.我々は,この声明の目的を推進し,また追加的措置を検討するにあたり,緊密な協力を維持する。我々は民間航空に影響を及ぼす全ての形態のテロリズムに対する上で,1978年のボン宣言をより有効なものとすることに合意する。我々は,いかなる形態のものであれ国際テロリズムと闘う上で権限を有する国際機関乃至国際場裡において更にとられるべき行動につき,二国間でも多数国間でもこれを促進していく用意がある。