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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第13回主要国首脳会議における東西関係に関する声明

[場所] ヴェネチア
[年月日] 1987年6月9日
[出典] 外交青書31号,398−399頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.われわれ主要先進7カ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,東西関係につき討議した。われわれは,共通の原則と目的及び平和の維持と強化に向けて共に献身していくことを再確認した。

2.われわれは,自由,民主主義及び人権尊重というわれわれに共通の諸価値が,われわれの社会の活力と繁栄の源泉であることを誇りをもって銘記する。われわれは,より自由で,より民主的な,そして,より人間的な世界を求めるとの誓いを新たにする。 

3.われわれはいずれも,現存の同盟関係の枠内において,いかなる国の安全も脅かすことなく,自由を守り,侵略を抑止し,平和を維持するための強力で信頼できる防衛力を維持する決意である。われわれは,共通の利益にかかわるあらゆる問題につき引き続き緊密に協議を行っていく。われわれは,われわれ全てを導く諸原則から離脱することはない。

4.われわれが前回会合して以来,東西関係の進展のための新たな機会が開けた,われわれは,これらの動向に勇気づけられている。これらは,より自由で,より安全な世界を実現するとの決意の下に,われわれがそれぞれ追求してきた諸政策の正しさを確認するものである。 

5.われわれは,ソ連の内外政策の最近の動向を,強い関心をもって見守っている。われわれは,それが東西諸国間の政治,経済及び安全保障上の関係の改善のため重要な意義を有するものになることを希望する。同時に,大きな相違が引き続き存在している。われわれはいずれも,ソ連の政策の全ての側面に対応するにあたって,依然,慎重な警戒な維持せねばならない。 

6.われわれは,平和及びより低い軍備水準での安全保障の増大の向けたわれわれの決意を再確認する。われわれは,緊張を緩和させ,検証可能な軍備削減を達成するための包括的な努力を求める。われわれは,平和を維持するにあたり核抑止力が引き続き重要であることを再確認しつつ,軍備管理に関する対話が一層活発となり,核戦力の削減に向けてより好ましい展望が生まれつつあることに,満足の意をもって留意する。われわれは,均衡がとれ,実質的かつ検証可能な核兵器の削減に向けた米国の交渉努力を評価する。われわれは,兵力のより低い水準における通常戦力の安定の強化と化学兵器の全廃に達成に向けてのわれわれの決意を強調する。われわれは,これらの目標が積極的に追求され,具体的な合意の形となるべきであると信じる。われわれは,ソ連に対し前向きかつ建設的な姿勢で交渉するよう求める。これら諸問題の効果的な解決は,世界の真の永続的な安定にとって不可欠である。

7.われわれは,われわれの共通の関心事である諸問題につき,ソ連の言葉のみならず,ソ連の行動に対しても深い注意を払っていく。特に,

ーわれわれは,東西社会間に信頼感を醸成するために不可欠な人権分野での顕著かつ永続的な進展を呼びかける。ヘルシンキ最終文書で合意し,又は約束し,それ以来確認されている諸原則及び誓約に合致するためには,なお多くのことが為されなければならない。

ーわれわれは,地域紛争の早期かつ平和的な解決,特に,アフガニスタンの国民が自らの将来を自由に決定できるようなソ連軍が迅速かつ全面的に撤退することを求める。

ーわれわれは,われわれの国民とソ連及び東欧の国民との間により広範な接触,より自由な思想の交流及び幅広い対話を奨励する。

8.従って,われわれはいずれも,東西間の軍備競争をより低い軍備水準で安定化させること,地域紛争に対し安定的な政治解決を奨励すること,人権の永続的な改善を確保すること,及びより人間的な世界において政府間及び諸国民の間に接触と信頼を築くことを求める。東西諸国間の安定した建設的な関係のために永続的な基礎を構築するには,全分野にわたる進展が必要である。